Videos
動画コンテンツ

Thumbnail

2023/4/3  全銀協会長会見 ゼロゼロ融資と銀行界の人材確保について

この動画はプレミアム会員限定です。登録すると動画をご覧いただけます。

2023.04.04 18:52

Q.ゼロゼロ融資いわゆる中小企業の資金繰り支援については。また、銀行界の人材確保について。


 


ご案内の通り、銀行界はコロナ禍における資金繰り支援を最優先に取り組んでおります。2022年度12月の全国銀行の貸出残高は約565兆円ということでありますが、コロナ前の2020年と比較すると57兆円増加しているんですね。そういう意味ではまだ依然として増加傾向にもあります。非常にしっかりと対応しているということでありますし、足元、コロナの感染法上の位置付けの見直しが予定されておりまして、ウィズコロナへの移行が段階的に進んでおりこの部分は明るい見通しだというふうに思っております。


ただ一方で、原材料やエネルギー価格が高止まりして、いわゆるゼロゼロ融資の返済が本格化するということでございます。コロナ禍で大きな影響を受けた飲食や宿泊業、こういったサービス業は、今かなり改善の方向にありますが、やはり資源高の影響を受けやすい運輸業であるとか、建設業をはじめとする幅広い業種でお客様の資金繰り負担に注意が必要であると認識しております。実際に東京商工リサーチの調査によると、23年2月の企業の倒産件数は577件ということでありまして、22年の4月から11ヶ月連続で、同年同月を上回っており増加傾向になっております。このような環境にあって銀行界としては資金繰り支援というのは最優先に行っていく方針に変わりはございません。


本年1月に民間ゼロゼロ融資等の返済負担軽減のための保証制度、いわゆるコロナ借換保証、こういった公的な整備も準備されております。また全銀協においても、本年2月に資金需要に柔軟かつ積極的に対応し、金融仲介機能の発揮に全力を挙げて取り組むことを各会員行で申し合わせたところであります。同時に、お客様の持続的成長を支えるためには、お客様と金融機関が一体となった早期の事業再構築の検討であるとか、収益性改善のためのビジネスマッチングの提案、事業承継に関するコンサルティングといった非財務面での支援も欠かせないというところであります。なお、今申し上げた事業再構築に関しましては2022年4月に中小企業の事業再生等に関するガイドライン、いわゆる事業再生ガイドラインの提供が開始されております。これは事業再生における中小企業者、金融機関のそれぞれの役割を明確にするとともに、迅速かつ柔軟な事業再生等の手続きを定めたものであります。適用開始後、各会員行においても本ガイドラインの活用事例が徐々に積み上がってきております。今後、事業再建に取り組む選択肢として一層活用されるべく、銀行間で事例や課題の共有を図っていく予定であります。今後も、引き続き資金繰り支援に万全を期すとともに、お客様の事業環境を丁寧に把握し、その経営課題に一つ一つ向き合っていくことで、金融面から我が国経済、地域をしっかり支えていきたいというふうに思っております。


2点目は人手不足について銀行としてどういう対策があるかということです。銀行のみならずやはり人手不足、働き手不足に悩まれている経営者の方が多いと思います。銀行界にとっては、そういう意味で言うと課題として二つあると思っていまして、銀行自身の人手不足、あるいはお客様、お取引先の人手不足ということだと思っていす。これらの課題に対して全銀協で取り組んでおりまして、デジタル技術を活用した省力化について2点ほど事例をご説明させていただきます。


一つ目は地方税のQRコード納付です。この4月から自動車税や固定資産税など一部税目について、納付書にQRコードが記載されます。これによりまして、お客様はスマートフォン等を使っていつでもどこでも納付ができるようになる。加えまして、銀行サイドも銀行の事務処理が減ります。さらに地方公共団体においても消し込み作業が自動化できる、いわゆるその三方良しの取り組みであります。もう一つは手形小切手の電子化です。手形小切手も税金と同様に複数の関係者間で紙が流通して、それぞれにおいてその処理が行われておりますので、これを電子化することによって企業、地方公共団体、銀行の人手というのが省力化することは期待できるものです。なかには現状の業務フローを変えることに抵抗感を持つケースもありますけれども、銀行界としては、サービスの利便性向上や周知活動、手数料の見直し等の取り組みを通じて、しっかりと電子化を推進していきたいというふうに思っています。


この他にも、各個別行においてもそれぞれテクノロジーの活用による効率化であるとか、成長分野の効果的なリソースアロケーション、こういったことをビジネス戦略を踏まえて人手不足の中でも最大限のパフォーマンスの発揮に取り組んでいるという状況かと思います。この施策を進める上で重要なことは人への投資であるというふうに考えております。デジタル競争の激化やサステナ対応など急速な事業環境の変化に対応し、付加価値を創造できる人材を育てるというのはやはり継続的な研修教育が必要だということであります。加えまして個々に置かれた事情により、働きたいのに働けない人がいることは社会全体の損失でもあります。企業には多種多様な人が柔軟に働ける職場環境作りが求められるということであります。また、そうした経済面も含めて企業が社員を支援することで社員のエンゲージメントを高めて、企業の持続的な成長に繋がっていくとも重要であると考えております。

Thumbnail

2023/4/3  全銀協会長会見 銀行界がCDBCを発行する意義について

この動画はプレミアム会員限定です。登録すると動画をご覧いただけます。

2023.04.04 18:50

Q.銀行界がCDBCを発行する意義について


 


CDBCを導入する意義ということですが、CDBCというのは様々な国で今進められていると思っておりまして、例えば他国の事例としましては、カンボジアやバハマのようにスマートフォンは普及していますけれども銀行口座が普及していない、いわゆるその一部の新興国、こちらが金融包摂のような目的で安心・安全な金融サービスを広く国民に提供するという目的でCDBCが導入されたりなどで普及しているという事実もあると思います。また、米国の中央銀行によるパイロット実験の動きも加速化しておりますし、中国では2019年からデジタル人民元のパイロット実験を始めております。実施地域を順次拡大していく方針だというふうにも聞いております。こうした一連の後進国のみならず先進国でも取り組みを始めている実情を踏まえると、我が国においても検討が今後進められているものだと認識・理解しています。


ただ、日本の場合はATMをはじめ現金流通網というのが全国規模で整備されております。また国民の口座保有率も非常に高く、さらに最近特にキャッシュレスの決済手段が着実に普及してきておりまして通貨や決済の信頼性、利便性が高いという、他国と異なる状況であります。こういう日本において、どのような利用のケースがあるのか。しっかりとそのCDBCを導入する場合のその意義、目的については、官民でコンセンサスを得て議論が進められていくというようなことを我々としては期待をしております。実際に日銀によると、この4月から民間事業者も参加するようなパイロット実験を実施するというふうに聞いておりますし、制度設計からCDBCフォーラムというのを設置し、幅広いテーマについて議論検討を行っていくとも聞いております。引き続き、銀行界も検討に主体的に参加をして、安心・安全かつ便利な社会の実現のために必要な意見発信を行っていきたいと思います。

Thumbnail

2023/4/3  全銀協会長会見 会長にとって「明るい未来」とはどのような未来か

この動画はプレミアム会員限定です。登録すると動画をご覧いただけます。

2023.04.04 18:49

Q.会長にとって「明るい未来」とはどのような未来か。


 


基本方針で「社会経済の持続的な発展を支え、明るい未来につなげる1年」と申し上げました。確かに足元、コロナの規制というのはかなり進んでいるというふうに思っています。これは明るいニュースだと思っています。ただ一方で、少子高齢化の進展の人手不足も深刻であるとか、気候変動リスク、地政学リスクの高まり、こういったところは確かに不透明な先行きが続いております。その中で我々、銀行としてやれることは、我々が持つ仲介機能であるとかコンサルティング機能を発揮して、我が国の優れた技術をさらに伸ばしていく、それをお支えするであるとか、日本企業の海外進出、あるいはスタートアップに代表されるその意欲ある企業をサポートして、いわゆる企業活動の活性化を促していくことが大きな我々の役割だと思っています。その企業活動が活性化することで、家計への還元も充実が期待されることであります。合わせて銀行が若手に対して金融経済教育であるとか、資産形成支援を通じて、いわゆる長生きリスクであるとか将来の不安を払拭するに貢献することを合わせてやることによって、日々の生活における経済的な安心感を醸成して、前向きな挑戦意欲を高めて、起業を含むさらなる企業活動の活性化、家計の還元の充実、こういうのがどんどんつながっていくことが正の回転だと思っています。


こういう好循環や連鎖によって日本の社会経済が活気づいていくことを明るい未来とイメージしておりまして、これに繋がるものをしっかりと銀行界として取り組んでいくと、このような位置づけにしたいという思いで「明るい未来につながる1年」とさせていただきました。

Thumbnail

2023/4/3  全銀協会長会見 進むデジタル化での店舗の役割、ファイアーウォール規制の2023年度の見通しについて

この動画はプレミアム会員限定です。登録すると動画をご覧いただけます。

2023.04.04 18:46

Q.デジタル化が進む中で店舗の役割・あり方をどう考えているか。また、ファイアーウォール規制の2023年度の見通しについて。


 


1点目はデジタルと店舗の役割ということだと思っておりますが、デジタル化の進展というのは、お客様との接点が大きく変化するものですが銀行店舗の役割はやはり引き続き残っていくものだと思っています。デジタル化を進めるとやはり銀行の窓口に来店するお客様は減少するということだと思っていますし、お客様が銀行に期待するサービスというのが変化します。スマートフォン等のデジタルデバイスを通じての顧客接点がその代表でございまして、ご来店いただかなくても銀行のサービスができるように、各行が試行しながら新たなサービスの開発に取り組んでいると思っています。


また一部の地方銀行においては新たな顧客接点の提供による顧客基盤の拡大を目指して、デジタルバンクのビジネス展開もできているというのはご承知の通りだと思っております。ただ繰り返しになりますけど、そういった状況の中でお客様との接点のポイント、こういった関係性は大きく変化してきていますが、銀行の店舗の役割がなくなったということではないと思います。例えば、資産運用とか資産形成の事例というふうになりますが、やはり将来に漠然と不安があるけれども何から始めていいかわからない、なかなかアクションを起こせない、というお客様も実際おられると思います。この場合はやはり資産形成運用に関するお客様の人生設計をお伺いして、その実現への適切な支援について一緒に考えさせていただくというのは、店舗にご来店いただいてフェ-ス・ツー・フェ-スで様々なご相談にお答えすることが、やはりお客様の満足度を高めることではないかと思っています。
また同様に、住宅ローンの借り入れの検討もそうだと思います。やはりお客様にご来店いただきまして、現状をお伺いしながらライフプランに合わせた返済プランとか、あるいはその病気とか怪我に備えた保険の付保、様々な条件を加味した上でお客様に最適な提案を行うのは、やはりデジタルよりも来店してお話する方がお客様にとってはフィットするのではないかと思います。お客様に対面と非対面、あるいは来店とスマホ、こういう選択肢をお渡しさせていただくっていうことが大事ではないかなと思っておりまして、そのニーズに合わせたコンサルティングサービスを提供する。両方の特徴を生かしたサービスを提供しながら新しい金融体験の場を提供していきたいと思っております。1点目は以上です。


2点目です。ファイアーウォールの規制緩和についてご説明をお話させていただきたいと思います。ファイアーウォールにつきましては1993年に金融制度改革法に伴う導入以降、大きな緩和がなかったのですが、2020年10月以降の金融審議会「市場制度ワーキンググループ」の議論に基づきまして2021年6月にはファイアーウォール規制の適用対象から外国法人顧客を除外すること、2022年6月には新オプトアウト制度の創設、オプトインの簡素化、ホームベースルールの撤廃などが設置されております。これにより現状、上場企業グループの一部のお客様には銀証連携した提案ができるようになり利便性が高まる可能性が出てきております。ただ、ファイアーウォール規制の残課題としては依然としてありまして、それが我が国の資本市場の活性化や貯蓄から投資への好循環に向けた銀証間の円滑な連携の妨げにはなっております。例えば、外務員の二重登録禁止規制であるとか、上場企業グループ以外の非上場大企業、中堅・中小企業、個人の情報授受規制の見直しというのは私は不可欠であるという考えは変わっておりません。いずれにしましてもお客様の利便性、便益の観点から緩和を進めていくべきものというふうに思っております。例えば、お客様に対して銀行、証券の両方の商品を提案することがあるが、そういった事例の場合、お客様に1人の営業担当者が責任を持って各種の提案を行って欲しいというニーズがあります。


ただ、今は外務員二重登録禁止規制があるということで、外務員登録を銀行側で行った担当者は、銀行の商品、証券側で登録を行った担当者は、証券の商品しか提案できずにお客様がやはり煩わしいということを感じてしまうことがあるということでございます。また現場の声として、もっとシンプルな言い方をすると情報共有の同意が入り口にあることによって、お客様の投資検討のきっかけや機会が奪われているということも聞いております。具体的には例えば投資に踏み出せない理由として、知識がないとか損をするのが不安であるとか、手続きが面倒、時間がないと、様々な心理的なハードルがある。その中で様々なご提案の前に、まず情報共有の同意をというふうな話をするとですね、そこで止まってしまうケースは結構多い。例えば昼休みに銀行の窓口に来られたときに、「時間があるから証券会社の話聞いてもいいよ」と言ってくださるお客様に、今の制度だと「ご印鑑を持ちですか」とか「まずは同意書がないと」と。このようなところが今の現場の実態であります。


結果として、ここで離脱されているお客様が多いのが現場であります。今後、我が国が重要な社会課題である、事業承継とか、相続などのサービスにおいて同様なことが起こっておりまして、やはりお客様のご負担をかけずに銀行や証券がスムーズに情報共有をすることで、利便性、付加価値の高いサポートが可能になると考えております。銀行界として、顧客満足度の向上を通じた貯蓄から投資への好循環や資本市場の発展につなげていきたいというふうに思っております。

Thumbnail

2023/4/3  全銀協会長会見 地銀の今後の経営環境と金融システムに対する不安について

この動画はプレミアム会員限定です。登録すると動画をご覧いただけます。

2023.04.04 18:42

Q.世界的な金融システム不安に関連して、今回の米銀行の破たんを踏まえた地銀の今後の経営環境についてどう考えているか。また、米銀行の経営破綻やクレディスイスの救済合併など信用不安が相次いでいるが、金融システムに対する市場の不安心理についてどう考えているか。


 


一つ目は米銀の破綻を受けた日本の地銀の経営環境の変化と認識した上で、今後詳細が判明すると思いますが、現時点で報道ベースの情報ということでございますので個人の見解になると思います。先ほども申し上げたように、シリコンバレーバンクの破綻の原因というのは、ALM管理の甘さにあったと思っております。スタートアップ企業関連中心のお客様であったりとか、預金構造が粘着性の低い法人預金である、あるいは米国債、ABSのようなポートフォリオ運営だったと。こんなところが顧客預金の流出になり、評価損を抱え有価証券の売却に迫られ、信用不安、取り付け騒ぎが起こり破綻に至ったと。このようなことでございますので、繰り返しになりますけどやはりこれは、銀行の資産サイド、負債サイド共に分散が効いておらず、流動性リスクの管理、あるいは金利リスクの管理などのALMの管理が不十分であったということですので個別行特有の問題でございます。


一方で見方を変えると、余資運用先として米国債等を保有したものの、中央銀行による利上げにより有価証券の評価損を抱えていると。こういう観点で言うと、先ほどのご質問の主旨のですね、邦銀においても似通ったケースがあると思います。ただ、米国と異なるのは、邦銀においては日銀による長期の量的・質的緩和によって潤沢な資金を保有しているということもある、あるいは企業や個人などに預金が分散されており、預金の粘着性が高いものだと思っていますので、預金流出等による資金不足を理由に有価証券の売却が起こる可能性は低いと考えております。


ただ、米国で今回のような地銀破綻が予見できなかったように、やはりその先行きを見通すのは大変厳しいと。そういう意味で言うと、大事なことというのは各行がビジネス戦略、リスクの許容度を踏まえて適切なALM管理をしっかり行うということが大事だと思っております。また、長きにわたる低金利の環境下で銀行の伝統的な収益源である、いわゆるその資金利益が圧迫されて、銀行にとって厳しいビジネス環境が続いていますが、やはり大事なことは変化するお客様ニーズにしっかり対応すること。各行がエクイティ投資であるとかシステム販売、広告人材派遣など伝統的なビジネスにとらわれないような新しいビジネスを進めていくことが大事ではないかなと思っております。各行が各地域が持つ資源や強みを生かしながら収益源の多様化を図ることも大事だなというふうに思っております。


二つ目の質問は、リーマンショックのような金融危機に発展するかというご質問だと思っております。これも個人的な見解ということでご認識いただければと思います。繰り返しになりますがシステム不安ということが起きましたけれども、実際には各国金融当局による潤沢な資金供給であるとか、米国での預金全額保護、あるいはスイスの買収支援ということで各国の迅速な措置が行われております。そういう意味では金融環境の悪化に歯止めがかかっておりますので、システミックリスクの顕在化の恐れというのは低下していると考えております。やはり市場の不安心理の払拭には、金融当局による迅速な柔軟な対応と各国の金融当局による緊密な連携が欠かせないということでありまして、今般の海外金融当局による一連の市場安定化策というのは、金融環境の一段の悪化に歯止めをかけて一定の成果を上げていると認識しております。
リーマンショックにおいては、大手金融機関がサブプライムローンの貸し倒れという共通のリスクを保有していたことに加えて、サブプライムローン債権を組み入れた複雑な金融商品が信用不安の連鎖を呼んだと認識しております。一方で、今回の一連の破綻や信用懸念というのは、個別行のALM管理の失敗であるとか、業績不振、不祥事など特有の要因に起因しており状況が異なっております。またリーマンショックを教訓に自己資本の拡充など、金融システムの頑強性も強化されておりまして、リーマンショックのような金融危機には陥らないというふうに私は見ております。ただ、繰り返しになりますが市場の先行きについては当面の間、予断を持たずに緊張感を持って注意していくべきだと思っています。各国金融当局の政策対応の積み重ねというのが、市場の不安心理の払拭に繋がると考えております。

Thumbnail

2023/4/3  全銀協会長会見 国内景気の現状と給与のデジタル払いについて

この動画はプレミアム会員限定です。登録すると動画をご覧いただけます。

2023.04.04 18:34

Q. 国内景気の現状や先行きについてのお考えは。また、4月から給与のデジタル払いが解禁された。銀行業界としての受け止めは。


 


一つ目の質問については、日銀短観が今日発表されておりますので、速報ベースで恐縮でございますが経営環境につきましては製造業中心に悪化をしたものの、企業の設備投資計画には底堅さというのが見られるなど、私は今年度の日本経済に明るい材料があったと評価をしています。


具体的には、大企業製造業の業況判断DIはプラス1%ポイントということで、前回の12月調査から6ポイント悪化をしたということです。これは海外の投資需要が利上げの影響などで減退していることや、半導体市場が調整局面に入っていることなどが製造業にとっては向かい風になっていると理解をしております。一方で大企業非製造業の業況判断DIはプラス20%ポイントということで、12月の調査から1ポイント改善しております。燃料費や人件費など各種コストの上昇が業績改善の妨げになっている面というのは依然としてありますが、やはりインバウンドの旅行客の回復であるとか、新型コロナの感染対策、緩和に伴うサービス消費の持ち直しを背景に、依然としてDIの水準が高いと思っています。


従いまして2022年度の設備投資の見込みというのは、前年対比プラスの11.4%ということで12月時点の評価からは下方に修正されておりますが、依然として非常に高い伸びで着地をする見込みであります。コロナ禍で先送りされた投資が再開され、正常化されつつあり、下方修正については、供給制約などの影響で年度内に実行しきれなかった面が強く、あまり心配する必要はないのではないかと思っています。実際に今回の調査で新たに公表された2023年度の設備投資計画は前年比プラス3.9%、昨年度はプラス0.8%でしたからそれを上回っておりまして、3月調査としては非常に高い伸びになっております。グリーンデジタル関連の投資、人材不足に対応するための省力化投資など、企業が将来の課題に向けた投資を活発化し始めている可能性があると、こういうふうに読んでおります。最近の金融不安を見ても分かります通り、2023年の海外経済を巡る不確実性は高まっていますけれども、国内の設備投資が増勢を維持しそうなことというのは、今年度の日本経済にとって心強い材料の一つであるというふうに考えております。1点目は以上でございます。


2点目につきましてはデジタル給与払いがどういった影響があるかの受け止め方と認識しております。こちらにつきましてはデジタル技術、先ほどのメガトレンドでお話ししましたけども、その進展であるとか、価値観の多様性を踏まえて、労働者の利便性の向上であるとか、キャッシュレスの推進、これに取り組んでいくことというのは重要なことだと思っております。その意味でデジタル給与というのも、給与をデジタルマネーで受け取ることができるようにするということで、労働者の利便性向上の目的で解禁されたと理解をしています。これまでもこのような形の会見で申し上げましたように、給与は労働者の生活の糧であります。従いまして、安全かつ確実に支払わなければいけないものであります。給与振込を取り扱う我々銀行界では、長い年月をかけて銀行口座、あるいは決済に関わる安心・安全なサービスの供給に努めてまいりました。例えば、金融犯罪防止対応、サイバーセキュリティー、反社データベース、災害対応や各種規制に基づく財務の健全性確保等、お客様の資産を守るための取り組みを多面的に講じていると。こういうことで安心を提供することで多くの事業者、労働者にご利用いただいているものと承知しております。


今回の資金移動業者による給料払いの解禁というのも、利便性はもとより、給与の取り扱いに必要な安全・安心が確保されていることを前提に決定されたものと理解しており、今後はそうした観点でのモニタリングも必要だというふうに考えております。例えば、資金移動業者のアカウントが生活資金の受け皿として使われている場合、為替取引と直結しない資金が滞留する可能性が高い。取り扱いの運営実態というのを丁寧にモニタリングしていく必要があると考えております。今回の規制によって、実際にデジタルマネーでの給料払いや受け取りをお考えになる企業や労働者もいると思います。銀行口座での給与の受け取りは、銀行にとって個人のお客様のお取引の規定の一つでありまして、それが減少するということは、例えばその資産運用や住宅ローンのご提案機会が減ると。デジタル給料払いが進むということは、銀行ビジネスにも一定の影響が出る可能性があるというふうにも思っています。従いまして銀行界としても、いつでも現金化できるATMネットワーク、あるいは業態間で資金移動可能な振込ネットワーク等、利便性の確保にも努めてまいりますが、今後もスマホアプリを利用した個人間送金ネットワークの拡充と、さらなる利便性の追求を通じて預金口座の付加価値を高めて、お客様に引き続きお選びいただけるように不断の努力を続けていきたいと思っております。

Thumbnail

2023/4/3  全銀協会長会見 預金の粘着性について

この動画はプレミアム会員限定です。登録すると動画をご覧いただけます。

2023.04.04 18:31

Q.預金の粘着性について、ネット経由などデジタルが進むなかで、粘着性は低下していくのでは。


 


おっしゃるとおり、デジタル化が進み利便性が高まると言うことは、他行に預金を移しやすくなるということですので、預金の粘着性というのは従来よりも低下するというふうに思っております。


ただ、本件のご質問の背景は、繰り返しになりますけれども、破綻したシリコンバレーバンクの話だと思ってますので、これは先ほど申し上げましたように、ちょっと特異な固有の例だということもありますし、先ほどご説明の部分でなかった部分でいうとスタートアップ企業ということで、企業預金が中心ということと、やはり預金保護の対象の割合というのが極端に低かったっていうの一つあったのではないかなというふうに思ってます。


またもう一つですね、破綻のところがですね、粘着性が低いということに関わらず、いわゆる運用の方ですね、償還期限の満期が長くて、価格変動リスクが相応にある米国債であったりとか、MBSに過剰に投資してたという、いわゆる脆弱なALM管理というのもあったと。これは一つ大きく異なる部分かというふうに思っております。


翻って日本でございます。邦銀、ご案内の通り当座預金などの決済用預金は全額保護ということでアメリカとは制度が異なっております。また決済用預金以外の一般預金においても、1金融機関ごとに預金者1人当たりの元本1000万円まで保護されてるということでございますので、全体に占める預金保護対象の割合が高くて、信用懸念に伴う与信流出リスクに対する耐性が高いというのが基本的なファンダメンタルだと思っています。


ただやはりデジタルが進む中でそのビジネス環境の変化あるいはその預金者の行動様式の変化ということで、徐々に預金者の構造であるとか粘着性ってのは、今後も変遷していく可能性があるというふうに考えております。


こういった粘着性か下がるというリスクは、やはり各行においてしっかりと変化を留意をしながらっていうことが、まず一つあって、そのためにこそ厳格なALM管理っていうのを会員各行にはお願いしていきたいというふうに立場として考えております。

Thumbnail

2023/4/3  全銀協会長会見 規制制度とシリコンバレーバンク問題の関連について

この動画はプレミアム会員限定です。登録すると動画をご覧いただけます。

2023.04.04 18:30

Q.規制制度が不十分ではないか。また、シリコンバレーバンクの件のようなことが日本でも起こり得るのか。


 


ご認識の通りですね、グローバルのシステム上重要な銀行であるG-SIBsというのは、その規模であるとか、クロスボーダー取引等の複雑性等の客観的な評価基準をもとに選定されております。加えまして金融システムにおける重要性に鑑み、破綻の可能性やその影響を極小化すべく追加の資本負荷であるとか、TLAC規制などの各種規制の遵守が求められております。


ただ今回のクレディスイスの案件、あるいは米国での地銀破綻による金融機関の経営リスクへの警戒が高まった中で各銀行の業績不振や内部統制の問題が市場で指摘されたことがきっかけであると認識をしております。


従いまして、クレディスイスに対する信用懸念というのは個別性が高く、必ずしも規制制度の十分性や適切性が直接問われるものではないと、認識をしております。もちろん、金融システムの安定は極めて重要であります。


一方、過度な規制というのは銀行の与信活動の消極化であるとか、保有資産の圧縮を招く懸念というのもある。規制強化による金融システムの安定化等、円滑な信用供与のバランス、これが重要であるというふうに考えております。


続きまして2点目の方に移らせていただきます。今度はシリコンバレーの件でございますがSNSが発端であると、日本で同様なことが起きるか、この点についてございますが、あくまで報道ベースでございますので個人の見解ということでお許しいただければというふうに思います。


ご指摘の通り、シリコンバレーバンクに対する取り付け騒ぎというのは預金の層の割合がスタートアップ企業の預金であったことで、その間、非常にコミュニケーションが良いということで同一コミュニティーの中でSNSを含めたコミュニケーションを通じて、信用懸念が加速度的に広がった面というのはあったと認識しております。


金融不安が広がる状況というのはSNSを含め、噂や誤った情報が、かなり速いスピードで広がるリスクというのは高いと認識しております。そういう意味でいうと、安心して継続的に使っていただけるように、やはりこういう環境の中においては、日頃からのお客様を含めたステークホルダーにしっかりと正しい情報を発信してコミュニケーションを取ることが重要だと、認識をしております。


ただ、今回の件についてのご質問ということでいうと、邦銀というのはシリコンバレーバンクと異なって、日本銀行による長期の量的質的緩和によりまして潤沢な資金を保有しておりますし、預金もその企業や個人などに分散されております。そういう意味でいうと預金の粘着性が高く、従いまして同様の事象が起こる可能性は低いと考えております。

Thumbnail

2023/4/3  全銀協会長会見 政府や他団体への要望と運営上の心構え

この動画はプレミアム会員限定です。登録すると動画をご覧いただけます。

2023.04.04 18:28

Q.政府や他の業界団体に対する要望と、2021年のみずほ銀行のシステム障害を経て協会を運営する上での心構えなど。


 


冒頭、本年度の方針活動につきまして、繰り返しになりますが、「社会経済の持続的な発展を支え、明るい未来につなげる1年」と申し上げました。そして三つの柱と重要課題のご説明をさせていただきました。第1の柱、こちらはですね、企業や家計の支援等に関する課題であります。


これらの課題への対応が企業や社会の持続的な成長に繋がるものと考えておりまして、まさに銀行の本業として課題を設定させていただいております。一方で、第2、第3の柱、これは社会的課題の解決に向けて、ただいまご指摘をいただいたように政府や他業態、あるいはその国民の皆様との共通理解のもとに進めていくべき課題が多く含まれておりまして、そういう意味でいうとご質問については第2、第3の柱を改めてご説明させていただければというふうに思います。第2の柱、こちらは金融インフラのデジタル化、電子化に関する課題であります。


ご承知の通り、我が国では人手不足が深刻化しております。こちらは会計企業、財政、共通の課題でございます。例えば手形小切手あるいはその税・公金、こちらはその金融機関のみならず、個人、企業、地方公共団体等の幅広い関係者の間で紙が流通しており、現物がありますので現物がある以上、その物流に応じて人手が必要になります。電子化はフィジカルなリソースを一気に削減してくれる人手不足経済には不可欠なツールであります。また、同時に輸送にかかる時間を削減する、いわゆる利便性ももたらしてくれます。デジタル化に関しては、現状からの変化を牽引される方もあるというふうに承知しておりますが、我が国の人手不足解消や社会全体のコスト削減に繋がる非常に意義のある取り組みです。


ぜひともステークホルダーの皆様とゴールを共有しながら、社会全体で進めてまいりたいと思います。産業界、地方公共団体、関係省庁におかれては、ぜひ一層のご協力をお願いしたいというふうに思っています。


次に第3の柱ですが、金融システムの健全性、強靭性向上に関わる課題です。例えば、犯罪、マネロン、テロ資金供与の防止、既に国際的なコンセンサスであります。我が国はFATFの第4次総合審査で重点フォローアップ国に指定をされ、国を挙げて改善に取り組んでいるところです。体制整備ができなければ、我が国の外国送金決済業務に支障が出ないとも限りません。こうした対応の一つとして、一定の頻度でお客様に情報のご提出をお願いする、継続的顧客管理にご協力をお願いしていく必要があります。その他の各規制対応等においてもお客様にご負担をおかけするケースもありますが、これらは国際社会の信頼を得て、健全な経済活動を維持する観点からも必要な対応であることをご理解いただくとともに、引き続きご協力をお願いしたいというふうに考えております。


続きまして2点目の方に移らせていただきたいと思います。2点目のご質問は今回、会長行をさせていただくというところの心構えということと認識をさせていただいてます。


まさに個別行のことになりますけども、システム障害においては、お客様をはじめ、社会全体、そして銀行界にも大変ご迷惑、ご心配をおかけしたということであります。その思い、そういったご迷惑をかけた分ですね、しっかりと業界のために貢献してまいりたいと私自身も思っておりますし、今回、みずほの中で本活動に関係する者たち全員の思いであります。


またご質問というのがですね、システム障害というようなことに対応ということでございますので、システム障害自身はですね、個別行の問題であり、全銀協活動とは切り離しておりますが、その経験がですね、協会活動に生かせる教訓、学びという点で2点申し上げます。


1点目は平時の準備の重要性です。全銀協では2021年3月、銀行システムの安定稼働と障害発生時のお客様対応に関わる申し合わせを実施しています。例えば、システムへの負荷、関連システムの波及への点検や障害発生時の復旧対応、顧客対応に全力を尽くす等の内容を申し合わせています。いずれも基本的なことであり、会員行においては、申し合わせ等も踏まえながらそれぞれ対応されているものと理解しています。ただ、私の経験や学びという観点で一言申し上げるとすれば、これらのことが本当に有事に実効的に機能するのか。


そのために平時からいかに緊張感を持って準備、点検、確認できているか、これが重要ではないかと思います。全銀協としても会員行と行うBCP訓練等でしっかりと体制整備を進めていきます。


次に、現場の実態把握についてです。みずほでは、システム障害を通じて企業風土の変革という課題に取り組んでいます。会員行の多くも様々な経営課題に取り組む面があると承知しております。これも私の教訓や学びという観点で申し上げるとすれば、経営レベルで理屈やロジックを判断するのみならず、経営自らが現場との対話を通じて現場の声や実態を把握した上で判断することが何より重要だということを実感しています。


今年度、全銀協会長を務めるにあたっても会員行の声、銀行界のお客様の声をしっかりと聞いた上で、銀行、全銀協の活動に生かしてまいりたいと思います。

地方創生の支援

Thumbnail

2023/4/4  財務大臣記者会見 こども家庭庁の財源について

この動画はプレミアム会員限定です。登録すると動画をご覧いただけます。

Q.こども家庭庁の財源について。


 


私の考えですけれども、今までのこども政策というのは各省庁にいろいろ縦割りといいますか、またがっていた訳で、そうなりますとやっぱり予算編成上ですね。各省庁の年度予算を要求すると、それで査定をすると、そういうルールの中で決められてきておりましたので、こども政策についても財源と施策が一体となって出てきた、ということだと思います。今後はそうした縦割りを廃止して、横割りで考えていこうというのがこども家庭庁の出発の一つの趣旨であると思いますので、そういう中において今回はまずは何をやるのかということをしっかり内容を決めていく。それに必要な予算はどれぐらいなのかというのを決めていくことになるのだと思います。いずれ6月に、全体のこれから先の予算の大枠というものが示されて、来年度からはそれに基づいて、年度年度の施策と予算というものが一体的に予算編成されていくことになるのだと思います。

地方創生の支援

Thumbnail

2023/4/4  財務大臣記者会見 少子化対策の財源確保について

この動画はプレミアム会員限定です。登録すると動画をご覧いただけます。

Q.少子化対策の財源確保について


 


こども・子育て政策につきましては3月31日、小倉担当大臣からたたき台が示されました。今後このたたき台を踏まえまして、必要な政策強化の内容、予算、財源について総理のもとでさらに具体的な検討を深めて、6月の骨太の方針までに将来的なこども・子育て予算の倍増に向けた大枠を提示していくものと理解をしております。その上で申し上げますと、恒久的な施策には恒久的な財源が必要であると。そういうのが基本的な考えでありまして、先週の記者会見でも償還財源がない中での国債発行は子供世代への負担の先送りであって慎重でなければならないとの旨を申し上げたところであります。こども政策を強力に進めていくために必要な安定財源につきましては、国民各層の理解を得ながら、社会全体での負担のあり方を含めて、幅広く検討を進めていくことが重要であると考えます。


一例として、お話にございました社会保険料の上乗せ案といったことも報道ベースではあるようですが、具体的な財源につきましてはまさに6月に向けて検討を深めていくべきものであると理解をしております。いずれにいたしましても財源を検討する際には、政策強化の内容に応じまして、様々な社会保険との関係や、国と地方との役割分担なども踏まえて、丁寧に検討を進めていくことが重要であると思っております。

Thumbnail

2023/4/3  全国銀行協会、新会長就任会見

この動画はプレミアム会員限定です。登録すると動画をご覧いただけます。

2023.04.03 19:20

皆様、お忙しい中お集まりいただきましてありがとうございます。みずほ銀行の加藤でございます。この度、半沢前会長から引き継ぎ、全国銀行協会の会長を務めることになりました。皆様のご支援を賜りながらこの大役を全うすべく進めてまいりますので、よろしくお願いいたします。就任にあたっての抱負を申し上げる前にこの場をお借りして、半沢前会長に一言御礼を申し上げたいと思います。


振り返ると昨年度は、ロシアによるウクライナ侵攻に起因する供給制限、エネルギー、食料等の価格の高騰、労働需給の逼迫等を背景に、世界的にインフレ圧力が高まりました。こうした背景から各国で大幅な金融引き締めが実施され、これを受けた日米金利差拡大を背景として歴史的な円安も記録しました。こうした中、半沢前会長は持ち前のリーダーシップを発揮して銀行界をけん引いただき、多岐にわたる課題の解決に取り組んでこられました。そのご功労に心から敬意を表するとともに、厚く御礼を申し上げます。


さて、改めて我が国銀行界を取り巻く環境を概括します。まずは三つのメガトレンドについて申し上げます。1点目は、人口構造の変化です。昨年、世界人口が80億人を超えた一方で、日本は出生数が初めて80万人を割るなど、少子高齢化が一層進行しており、労働人口の減少、人手不足が深刻化しております。2点目に、サステナ意識の加速です。気候変動リスクの高まりやコロナ禍が環境・社会課題をより身近なものにし、人々の価値観を変容させ、競争意識の醸成も加速しております。3点目に、デジタル技術の進展です。デジタルの利便性は新たな価値観、ニーズを生み、コロナ禍の新しい働き方や行動様式への変化も下支えした一方で、社会全体としてデジタルへの依存度は高まっております。


こうした中で、ロシア・ウクライナ問題、米中対立をはじめとする地政学リスクの高まり、対立構造の先鋭化は、サプライヤーチェーンの分断やフレンドシェアリング等の動きを生んでおります。他方で、ビジネス、デジタルの世界では、国境を越えて情報や価値の流通、人的な交流が加速する等、グローバル社会は複雑化しています。そして、これらメガトレンドの進行とグローバル社会の変容は、経済社会にエネルギー供給懸念や原材料価格、そして賃金高騰など、世界的なインフレ圧力をもたらし、各国に金融緩和からの政策の転換を突きつけました。主要地域の足元状況を見渡しますと、米国では政策金利引き上げに伴い、金利感応度の高い住宅投資が減少しているほか、IT投資を中心に設備投資が弱含む等、金融引き締めの影響は徐々に顕在化し始めております。欧州でもエネルギー問題は想定内に収まったものの、依然、高水準のインフレにより消費は低迷、賃金インフレの懸念から金融引き締めが維持されています。


そして足元、ご案内の通り、米地銀の破綻やクレディスイスに対する経営不安など、一層金融引き締めの影響とも見える事象も発生しています。中国はゼロコロナ政策の解除により、サービス消費中心の回復が期待されていますが、不動産市場の低迷は依然続いています。翻って我が国の状況ですが、日本は経済・災害のタイミングや半導体不足等の影響で、欧米に比べ、コロナ禍からの回復が遅れていた分、回復余地があり、穏やかな成長が見込まれます。その反面、先ほど述べた欧米の政策金利引き上げによる景気減速や中国不動産市況低迷等は日本経済にとっても懸念事項であり、今後の賃上げの動向や金融政策の効果・影響等も含め、先行きが不透明な状態は続いています。


こうした人口構造の変化、気候変動や地政学リスクの高まり、それから派生する諸問題等により先行きが不透明な状態において、将来不安を払拭すべく、政府も新しい資本主義を抱え、総合経済対策をはじめ、様々な施策を打ち出しています。こうした動きにアラインし、我が国が抱える諸問題の解決に向けて金融面、非金融面からしっかり支えていくことが我々銀行界の責務と考えています。今述べたような環境を踏まえ、私は本年度、「社会・経済の持続的な発展を支え、明るい未来につなげる1年」と位置付け、活動していきたいと考えております。
具体的には、次に掲げる三つの柱に基づき取り組んでまいります。第1の柱は、経済の持続的成長と社会的課題解決への貢献です。具体的には、まずアフターコロナや物価高騰等を踏まえた中小企業支援に引き続き全力で取り組みます。政策金融機関とも連携した資金繰り支援や事業承継、事業再生支援、地域活性化等に金融仲介機能、金融コンサルティング機能を発揮し貢献してまいります。また、日本経済のダイナミズムと成長を促す鍵となる、スタートアップ企業等へのリスクマネーの供給や、事業力や将来性を踏まえた支援のあり方の検討、経営者保証に依存しない融資慣行の一層の推進に取り組んでまいります。加えて、家計の安定的な資産形成を図るための資金の好循環の実現に向け、若年層等への金融経済教育、NISA制度の恒久化・拡充を踏まえた推進強化、フィデューシャリー・デューティーの徹底等にも注目してまいります。最後に、サステナブルな社会の構築のため、サステナブル・ファイナンス等の取り組みを通じ、お客様の脱炭素、カーボンニュートラルに向けた構造転換を支援してまいります。


続いて第2の柱はデジタル技術進展を踏まえた安心・安全で利便性の高い金融インフラの構築です。人手不足問題の深刻化や、コロナ禍で加速した価値観、行動様式の変化に対応すべく、デジタル技術を積極的に活用し、より安心・安全で利便性の高い金融インフラの構築を目指してまいります。具体的には、手形・小切手機能の全面的な電子化による企業等の業務効率化、税、公金の収納の効率化を通じた納付者の利便性向上、地方公共団体等の事務負担軽減の他、Web3.0の推進、中央銀行デジタル通貨等に関する議論にも積極的に参画してまいります。また一方で、社会全体のデジタル技術への依存度の高まりを踏まえ、各種リスクへの備えも重要です。不正送金や暗号資産等の新たな技術を利用した金融犯罪被害の防止や、近年、脅威・被害が拡大しているサイバー攻撃への対策等の取り組みを通じ、利用者の安心・安全の確保に努めてまいります。


最後に第3の柱は、金融システムの健全性、強靭性向上です。地政学リスクの高まりやそれに伴う新しい経済圏・供給網構築の加速とグローバル社会の変容等を踏まえ、金融システムのさらなる健全性、強靭性向上を目指してまいります。具体的には、昨年度設立したマネロン対策共同機構の活用等、業界全体としてのマネロン対策の対応力強化、経済安全保障推進法に関わる対応を通じた基幹インフラ役務の安定的な供給の確保等の取り組みを進めてまいります。その他、国際金融規制に関わる諸課題への対応や、金利指標改革への対応を通じ、今後再び訪れるかもしれない金融危機への備えにも予断を許さず取り組んでまいります。また、人的資本等の非財務情報の開示強化への対応を通じて会員各行の企業価値向上を図ってまいります。


以上が今年度の取り組み課題ですが、最後に改めて今年度の基本方針に込めた思いをお伝えさせていただきます。基本方針は、「社会・経済の持続的な発展を支え、明るい未来につなげる1年」と申し上げました。今年は我が国最初の銀行である第一国立銀行の開業から150年の節目の年です。これまで銀行は、長年にわたり日本の成長に貢献してまいりました。足元を見ると、人口構造の変化、気候変動や地政学リスクの高まり、それらから派生する諸問題等により先行きが不透明な状態が続いています。


今後も銀行が社会、経済の持続的な発展を支える存在であり続けるために、諸問題に向き合い、一つでも多くの解決の道筋をつけ、将来不安を払拭して、明るい未来につなげたい。そういった思いを込めた基本方針です。私自身、全銀協会長として、銀行界の先頭に立ち、この責務を全うして参りますので、ご支援とご協力のほど何卒よろしくお願いいたします。