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2023.04.10 17:10
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Q.総仕上げについて、5年間で仕上げられる状態に今の日本の経済はあるのか、目標達成に向けた緩和継続に関する見極めや判断への自信について。
<植田総裁>
2点関連してるとは思いますけれども、前半マイナスの外的ショックがなければ、今の状態が続いていて物価安定の目標は5年以内に達成されると思ってるのか、あるいは可能性が高いと思ってるというご質問だと思いますけれども、国会の審議で申し上げましたように、物価に関して良い動き良い芽が出てきてるっていうことは確かかなと思います。別の表現で言えば、基調的なインフレ率が少し上がってきているという動きが出ている。さらにそれについて、先ほどのご質問にもありましたように、賃金周りでさらに少し良い動きが出ているということですので、これが持続して、より高い基調的インフレ率2%の安定的持続的なインフレの達成ということに繋がる可能性は十分あるというふうに思っております。
後半のそういうことに関する判断を、お前はきちんとできるという自信があるのかどうかというご質問だと思いますが、こういうことに長年、研究者あるいは日本銀行の政策審議委員として携わってきたという経験があって、それは力になるとは思いますが、いろんな中央銀行が将来の物価見通しでは、過去にあるいは近い過去でも失敗していることもありますし、とんでもない人たちがやってきたわけではなくて、かなりの場合に非常に優秀な人が経済を見た結果、そうであるという面もあると思いますので難しいことであるということは十分認識しております。全力を挙げて頑張りたいと思います。
2023.04.10 17:09
Q.総裁打診の経緯と先進国の経済成長力鈍化を踏まえた国内金融政策の出口戦略について。
前半のご質問ですけれども、この総裁人事の経緯について詳しいことは残念ながらお話できないということで申し訳ありません。ただ私自身、よく考えてお引き受けすることを決めたということは申し上げられると思います。
それから、2番目でございます。世界各国について、まだ私見ておりませんけれども、IMFの近い将来出てくる見通しが下方修正であるということだったかと思います。それがその通りになるかどうかは別としまして、世界経済がややスローダウンの方向に入っている、さらに下振れのリスクもあるということは十分に認識しておりますので、日本経済の今後の情勢の判断においてその点は十分考慮して毎回の政策決定に当たってまいりたいと考えております。
2023.04.10 17:08
Q.現状の物価や春闘の動きについての見方とフォワードガイダンスについて。
1番目の春闘でございますけれども、先ほど来申し上げてますように、基調的なインフレ率がまだもう少し上がってほしいという中では、今年の春闘の、結果はまだ完全には出ておりませんが、ここまでは喜ばしい動きになってるというふうに判断しております。ただ、これが今後も続いて定着するかどうかというのを見極める必要があるのではないかと持続的、安定的な2%の達成という目標からは考えてございます。
それからフォワードガイダンスについて色々ありますが、もう少し整理する余地はないのか、あると考えているのかどうかというご質問だったと思いますが、そういうことを含めて、全てのオプションについて毎回の決定会合で今後議論していくということになると思いますので、その点については毎回の決定会合の結果をお待ちいただきたい。また、変えた場合はきちんと説明させていただくということになるかと思います。
2023.04.10 17:07
Q.欧米の信用不安が残るなかでの金融政策の判断の考え方と長期化するマイナス金利政策について。
前半は、金融システムの様々な問題、金利その他の操作の金融政策を考える際に、どの程度考慮すべきかというご質問でしょうか?これは非常に昔からある難しい問題であると思っております。とりあえず現状では、現在の日本ではということになりますが、金利を大幅に上げるというような状況ではありませんので、一方で金融システムは、一応先ほどもお話しましたように落ち着いているということですので、ここから多少、金融政策の修正とかを考えていく際にも、それほどの大きなイシューではとりあえずはないかなというふうに私は思っています。
<氷見野副総裁>
仮に出口を迎えられる状態になったときに、金融システムへの影響をどう考えるかというご趣旨かと思いますが、そのときの状況も様々、考えられますので、一概には言えないわけでありますけれども、基本的には低金利がずっと続いていくということは、金融機関にとっては、その利ざやを守ることが難しくなるという面があります。
他方金利が上がっていく局面では、債券ポートフォリオにその含み損が出るといったようなことも考えられるわけですけれども、ではその両方でプラスとマイナスがあった上で最終的には出口を迎えられるっていうことは、経済にとっても国民にとっても金融機関にとっても、相対的にはプラスだというふうに思いますけれども、移行過程をどうマネージするかということになると思います。
そこにつきましては、金融機関、地銀含め一定の頑健性を有しておりますし、また日銀の側でも、例えば金融政策決定会合では、金融機構局が金融システムの状態をきちんと報告することにしておりますし、また金融庁とも連携してリスク管理の向上については促してきておるわけでありますので、十分金融システムの健全性と両立する形で適切な出口をたどっていくということは可能だというふうに考えております。
<内田副総裁>
金融政策の枠組みのことから申し上げると2006年だったと思いますが、二つの柱による点検というのを行う。これは今の展望レポートの一番最後の章にそのように書いてあるわけで、その中身というのは、メインシナリオと、それからリスクシナリオ両方見ていく、そのリスクシナリオの中で、金融面の不均衡も含めて判断していくという枠組みになってます。ちょっと2006年正しいかどうか自分で調べていただければと思いますけれども、そういう中で氷見野副総裁からもありましたように今では年4回展望レポートを議論するときには、MPM(金融政策決定会合)に金融機構局から報告をさせるということも始めたわけです。その点も含めて、金融政策は判断していくという枠組みになっております。
その上でYCCについて先ほど申し上げた通りで、これは金融仲介機能にも配慮しながら、持続的に緩和をやっていくために導入した仕組みですので、そういう意味ではここで議論されているということですし、毎回議論されてることですし、金融仲介機能はしっかりと発揮されていて、この間の貸し出しは2、3%でずっと伸びてきているわけです。そういったことも考えながら政策は行われているということですし、今後もですね、こういうことを考えながら、先ほども一番冒頭で申し上げましたが金融市場で不連続なことが起きないように、政策は考えていく必要があるというふうに感じています。
マイナス金利についてのご質問だったと思います。マイナス金利政策ですけれども一つには現在の金融緩和のベースになっている政策であるかと思います。一方で副作用もあるわけですが、金融機関への影響というところが大きいと思います。ただ、金融機関が総体としては充実した資本基盤を備えているということで金融仲介機能は十分に発揮されているかなと思いますし、収益のマイナスの影響も小さくするような工夫がこの政策の中ではなされているというふうに思います。従いまして現在の基調的なインフレ率がまだ2%に達していないという判断のもとでは継続するのが適当というふうに考えてございます。
2023.04.10 17:06
Q.日本経済の成長に関する展望と、長期金利操作やETFの借入が適切だったかについて。
金融政策だけで経済の中長期的な成長を持続的に上げていくというのはなかなか難しいかと思います。教科書的な話になりますが、金融政策は経済の需要サイドに働きかけるものですから、需要サイドが落ち込んでいるときに、それを下支えしたり、供給にあったところまで引き上げていくところに力を発揮するわけですが、そこまでいってしましますと経済の成長率は、供給サイドの方の要因によって主に規定されるということですので、ここに働きかける手段、金融政策は通常あまり持っていないという答えにならざるを得ないかと思います。そこまでの期間で需要サイドを中心に働きかけて、その間の成長率を高めるという効果はもちろん持つかと思います。
それから後半ですけれども、金利操作、ETFの購入ですか。これについておっしゃるように、副作用があると考えております。その上で、そういう作用もあるような政策をそもそも導入したことは良かったのかどうか、というご質問だったと思います。その点については恐らく、それぞれ導入した時点で私はボードメンバーなかったのですけれども、効果と副作用について十分考慮し、議論された上で導入されたのだと思います。
ですので、たまたま副作用が目立っているからというだけで導入がまずかったという結論にはならないのかなと思います。やはりネットで経済にどういう効果があったのか。それから副作用のコストが仮に測れたとして引き算しておつりが残るかどうかというのが評価の基準になるかなと思います。インフレ率という面で言えば、時間はかかったけれども、デフレの状態から若干プラスのインフレ率、足元、ヘッドラインは非常に高いわけですが、できたという、そういうプラスはやはりあったかなというふうに考えております。
その上で副作用をどう考えるのかというのは重い問題でありますが、繰り返しですが、だから直ちにまずい判断だったということにはならないかなと思っています。
2023.04.10 17:05
Q.2%の物価目標を10年で達成できなかった要因について、達成する上での最大のハードルについて。
10年で達成できなかった理由でございますけれども、それについては一つ前のご質問に対する答えで、二つくらい申し上げたかと思いますけれども、達成を難しくするような外的なショックの存在というのが大きかったというのが一つでございます。詳しく申し上げれば、90年代の不良債権問題から始まって、それは10年の話より、前の話になってしまいますが、足を引っ張るような外的ショックで大きなものがいくつかあったということが一つでございます。それから通常であれば金利の引き下げ余地がかなりあるというはずなのにゼロに近いところから始めたっていうことで、引き下げがあまりない中での金融緩和政策であった。この二つが大きかったと思います。
それから、これは黒田前総裁もよく言われていたことですが、デフレあるいはゼロインフレに近い状況が長く続く中で、物価や賃金が上がらないということを前提にした物価や賃金の設定行動、あるいは企業行動が広まってしまって、それ自体が物価や賃金を上がりにくくするという結果に残念ながらなってしまったということも大きかったかなと思っております。ただ、金融政策は全然効かないというわけではないわけでして、実際に過去10年でデフレではない状況にたどり着いているということもあるかと思います。
その上でもう少し金融緩和が効くような、外の要因として何か指摘できることがあるかというのが後半のご質問だったと思います。私ども学者の世界では自然利子率とかよく言ったりしておりますが、例えば政府からの政策で生産性を引き上げるような、何かインセンティブが付与されるというような中で設備投資等が活発になり、生産性も上がっていくというようなことがございますと、均衡利子率が上昇する。単純には設備投資意欲が向上する、そういう中では金融緩和の効果が強まるというような話はいくつかあるかなと思っております。
2023.04.10 17:04
Q.大規模緩和路線を維持について、2%目標の達成への取り組みについて。
<植田総裁>前半のところについては、前体制からの大規模緩和を現状では継続するというお答えになるかと思います。それから2%の目標についてどういうふうに対応するのかということですが、現状は共同声明にもありますように、できるだけ早く持続的安定的な2%の達成を目指すということですので、これはそういうふうに考えております。
ただし、どんな状況でもすぐに短い時間で2%を達成されるかというと、過去の経験を見ても、そうではない。それに対してアゲインストの外的ショックがあった場合にはなかなか難しくなると思いますし、そもそも金融緩和の効果というのが大まかには金利のゼロ制約というのでかなり制限されているという中では、そう簡単な目標ではないということは認識しております。
したがって何らかの有限の時間内にこれを達成するという強い見通しは現時点で申し上げられないかなと思っております。
2023.04.10 17:03
Q.異次元緩和を支えている長短金利操作、YCCについて。
それではまず私から。長短金利操作についてということだと思いますが、市場機能への影響という意味では、日本銀行は昨年来、国債の補完供給の制度を柔軟に運用しているということ。あるいは、昨年12月に長期金利の変動幅を拡大したような措置、さらに、ここ1ヶ月ぐらいですかね、先ほどお話に出ましたような金融システムに対するストレスの問題の結果もあって海外金利が低下したという中で、イールドカーブの形状は総じて前よりもスムーズになってきているという認識でおります。これまでの措置の効果とか市場の動向については今後も見極めていく必要があるというふうに考えています。ただその上で、YCCは市場機能に配慮しつつ、現状では経済にとって最も適切と考えられるYCCの形成を実現するための仕組みでございます。現状の経済・物価・金融情勢を鑑みると、現状のYCCを継続するということが適当であるというふうに考えております。
私からは特に付け加える点はございません。
2016年にYCCを導入したのですがそのときの議論を思い出していただくと、YCC というのは金融緩和によって経済・物価を刺激する効果と、一方で金融仲介機能への影響、この両者のバランスを取って最も適切な金利水準にしていく。そこにコントロールしていくという趣旨で導入したものです。このことが良好な金融環境を通じて経済・物価を押し上げる効果があったというふうに思っています。一方でデメリットとしては当然ですが、コントロールをしているわけですから、そのことに伴って市場機能が低下をするということがあるわけであり、これが特に目立ったのが昨年後半からであったということだろうと思います。特に副作用につきましては、SLF(国債補完供給)等々これまで何度か対応してきましたし、12月に対応したところですので、今はその状況を見極めていくというフェーズにあるというふうに思っておりますし、YCCという仕組みはですね、今申し上げたような趣旨で導入したものですので、総裁からも申し上げた通り現状においてはこの枠組みの中で緩和を続けていくことが適切なのではないかと思っています。
2023.04.10 05:02
Q.物価安定・達成のミッションの総仕上げに一番大事なこと、大規模金融緩和の包括的な点検・検証について、リーマンショック以降に強化されてきた国際金融規制や監督などの評価について。
物価安定実現のための総仕上げを行うために大事なことは何かというご質問ですが、現在の金融緩和が非常に強力なものであるということは間違いないと思いますので、経済・物価・金融情勢を丹念にそして的確に把握し、これまでもそうだったように今後も一段と努力して把握し、基調的なインフレ率が本当に安定的・持続的に2%に達する情勢かどうかというのを見極めて適切なタイミングで正常化に行くのであれば行かないといけないですし、それはなかなか難しいということであれば、副作用に配慮しつつ、より持続的な金融緩和の枠組みが何かということを探っていく。その辺の判断をきちんと行うということだと考えております。
それも含めまして、点検のような作業についてどのように考えているのかというのが後半のご質問だったと思いますけれども、点検はある意味では毎回の決定会合と決定会合の間で行った上で、決定会合での判断が下されるということでありますけれども、もう少し力の入った、あるいは長い目で見た点検を行うべきかどうかという論点はあるかと思います。そういうことが必要という場合には、あるいは行うという場合には、少し長い目で見て、私も先ほど申し上げましたように、強力な緩和はある意味では27年続いておりますので、それ全体を総合的に評価して今後どういうふうに歩むべきかというような観点からの点検や検証があってもいいのかなと思っておりますが、この点は政策委員会と議論して決めていきたいというふうに考えております。
最近、アメリカやヨーロッパで起きていることに鑑み、リーマン以降の規制改革が十分だったかというご質問だったと思います。最近起きたことについてはいろいろ報道されてはおるわけですが、現在それぞれの国の当局において、内部情報も含めた検証、何が起きて、何が課題だったかということを今やっておられるところだと思います。
米国については、5月1日までにその結果を出すということですので、あまり現時点でその結論に飛びつくというよりは、まず起きたこと、何が問題だったかをよく見ていくことが大事ではないかと思っております。その上で、今まだ予断を持っているわけではありませんけれども、基準実施部会議長としては、国際的に大変な規制改革を合意したわけですけれども、それがそもそもちゃんと実施されていたのかどうかといった点も見てみないと、改革の問題なのか実施の問題なのかが分からないんじゃないかということと、日本当局がずっと言ってまいりましたのは、規制は監督の代わりにはならないということでありまして、規制さえどんどん厳しくしていけばそれで問題は全部起こらなくなるということではない、ということをずっと主張してまいりました。そのことと今回起きていることがどう関係するかということについても、予断を持つわけではありませんけれども、そうした視点も大事にして議論に参加していきたいと、そういうふうに考えております。
2023.04.10 05:01
Q.就任にあたっての抱負と欧米での金融不安の日本経済への影響、とるべき対応について。
国会での所信でも申し上げましたが、日本銀行にとって、また私自身にとっても1998年の新日本銀行法の施行以来、25年間、物価の安定の達成は積年の課題です。これまで日本銀行は、私が過去に審議員として在籍した時期を含めて、ゼロ金利政策、時間軸政策、量的緩和政策、そして現在の量的・質的金融緩和政策に至るまで、世界に先駆けて様々な非伝統的金融政策を実施してきました。
私自身、長年金融政策を研究対象にしてきましたし、各審議委員として政策運営や地方銀行実務にも携わりました。こうした経験を生かして、物価の安定の達成というミッションの総仕上げに向けて、理論・実務の両面で尽力してまいりたいと思っております。
また、金融システムの安定についても、日本銀行の重要な責務です。人口や企業数の減少など、金融機関および金融システムを巡る状況は厳しさを増している中にあって、金融仲介機能が円滑に発揮されることは我が国経済にとって極めて重要です。
さらに日本銀行は銀行券の発行と流通、日銀ネットという基幹的な決済システムの運営、国庫金に関する業務など、我が国の重要な社会インフラを運営しています。このような国民経済にとって必要不可欠な重要な役割を果たしていくために、日本銀行の役職員それぞれが、それぞれの能力を発揮して、しっかりと貢献できるようにすることも、総裁としても重要な役割です。組織の先頭に立って、仕事に当たってまいりたいと考えています。
副総裁を拝命いたしました氷見野です。私はこれまで金融行政や国際関係の仕事が長かったので、そうした経験を生かしていければというふうに思っております。
金融政策につきましては、賃金上昇を伴う形で物価安定の目標を持続的・安定的に実現すること。金融緩和が政府や経済界の取り組みとも相まって、経済の好循環に繋がっていくこと。そうしたことを目指したいと考えております。
金融市場や金融システムは、金融政策の波及経路でもありますので、金融行政の経験も生かして政策運営に貢献していければと考えております。また、金融システムの安定につきましては、現在の我が国の金融システムは全体として安定しておりますし、ショックに対する一定の頑健性も有していると思いますが、海外では隠れていた脆弱性が思いがけない形で表に出る事例が続きました。
金融機関との対話・モニタリングに努めるとともに、海外当局との連携にも努めていきたいと思っております。また先日、金融安定理事会の常設委員会(基準の実施)の議長にも就任いたしましたので、国際的な議論にも貢献していければと思っております。さらに、国民経済に不可欠な発券業務、銀行の銀行としての業務、国庫業務につきましても職員とともに的確な遂行に努めてまいりたいと思います。今後5年間、内田副総裁とともに全力で植田総裁をお支えし、日銀の使命の達成に努めてまいりたいと思います。よろしくお願いいたします。
内田でございます。氷見野副総裁とともに植田総裁をお支えし、日本銀行の使命の達成に全力を尽くしてまいります。どうぞよろしくお願いします。私はこれまで様々な立場で金融政策の立案に携わってまいりましたが、今、日本銀行が直面している課題は、いかに工夫を凝らして効果的に金融緩和を継続していくかということだと思います。
この点でよく、金融緩和の枠組みが複雑化していると言われることがありますが、技術的な部分については、これまで日本銀行が蓄積してきた経験と知識によって、十分対応できると考えています。より大事なことは正確な情勢判断を行い、それに応じて慎重にタイミングを選びながら、的確な政策を行っていくことだと思っています。
今後、経済・物価・金融面の状況変化に応じて、最もふさわしい政策を考え、実施できるよう、スタッフの力を結集し、他のボードメンバーの方々と議論を尽くしてまいりたいというふうに思います。そして、5年間の任期の中で、2%の物価安定の目標を実現したいと思います。
また、それに至る過程において、金融市場で不連続な変化が生じることがないよう、常に市場の安定ということを意識していきたいと考えています。併せて、金融システムの安定維持、銀行券の発行や各種の業務など、日本銀行の役割を1日も欠かすことなく全うできるよう運営していくことも私の重要な任務であると思っています。
日本銀行の役割を一言で言えば、国民の皆様に安心して日本銀行券というお金を使っていただけるようにすることだと、様々な場面で説明してきました。この点でも将来を見据えますと、経済・社会のデジタル化に合わせて中央銀行サービスは変化していかなければならないと思っております。5000人の職員と力を合わせて、日本銀行に付託された役割をしっかりと果たしていきたいと思います。これから5年間、どうぞよろしくお願いします。
続きまして、私から2番目のご質問にお答えしたいと思いますが、欧米の金融不安の日本経済への影響についてのご質問だったと思います。これについては3月中旬以降ですか、アメリカ、ヨーロッパで一部の金融機関の経営問題を背景に不安感が広がる動きが見られたわけですけれども、各国当局が迅速な対応をしたこと、それもあって個別先の問題であるという認識が広がったということで、市場は落ち着きを取り戻しつつあるというふうに見ております。
日本の経済、日本の金融システムへの影響ですけれども、日本の金融環境は依然として非常に緩和的な状態が続いているということ。それから、日本の金融機関が充実した資本、十分な流動性を備えているということを考えますと、金融仲介機能は今後も円滑に発揮されていくというふうに評価しております。
従って現時点でこの問題が、我が国経済に大きな影響を与えるというふうには見ておりません。この間、日本銀行と米欧の中銀が協調して米ドルの資金供給オペの実施頻度を引き上げるような対応も行っております。ただ、市場における不透明感、不安感が完全に払拭されたという状態ではないと考えておりますので、今後の状況についてしっかりと注意してまいりたいというふうに思っております。
大手行
2023.04.04 18:52
Q.ゼロゼロ融資いわゆる中小企業の資金繰り支援については。また、銀行界の人材確保について。
ご案内の通り、銀行界はコロナ禍における資金繰り支援を最優先に取り組んでおります。2022年度12月の全国銀行の貸出残高は約565兆円ということでありますが、コロナ前の2020年と比較すると57兆円増加しているんですね。そういう意味ではまだ依然として増加傾向にもあります。非常にしっかりと対応しているということでありますし、足元、コロナの感染法上の位置付けの見直しが予定されておりまして、ウィズコロナへの移行が段階的に進んでおりこの部分は明るい見通しだというふうに思っております。
ただ一方で、原材料やエネルギー価格が高止まりして、いわゆるゼロゼロ融資の返済が本格化するということでございます。コロナ禍で大きな影響を受けた飲食や宿泊業、こういったサービス業は、今かなり改善の方向にありますが、やはり資源高の影響を受けやすい運輸業であるとか、建設業をはじめとする幅広い業種でお客様の資金繰り負担に注意が必要であると認識しております。実際に東京商工リサーチの調査によると、23年2月の企業の倒産件数は577件ということでありまして、22年の4月から11ヶ月連続で、同年同月を上回っており増加傾向になっております。このような環境にあって銀行界としては資金繰り支援というのは最優先に行っていく方針に変わりはございません。
本年1月に民間ゼロゼロ融資等の返済負担軽減のための保証制度、いわゆるコロナ借換保証、こういった公的な整備も準備されております。また全銀協においても、本年2月に資金需要に柔軟かつ積極的に対応し、金融仲介機能の発揮に全力を挙げて取り組むことを各会員行で申し合わせたところであります。同時に、お客様の持続的成長を支えるためには、お客様と金融機関が一体となった早期の事業再構築の検討であるとか、収益性改善のためのビジネスマッチングの提案、事業承継に関するコンサルティングといった非財務面での支援も欠かせないというところであります。なお、今申し上げた事業再構築に関しましては2022年4月に中小企業の事業再生等に関するガイドライン、いわゆる事業再生ガイドラインの提供が開始されております。これは事業再生における中小企業者、金融機関のそれぞれの役割を明確にするとともに、迅速かつ柔軟な事業再生等の手続きを定めたものであります。適用開始後、各会員行においても本ガイドラインの活用事例が徐々に積み上がってきております。今後、事業再建に取り組む選択肢として一層活用されるべく、銀行間で事例や課題の共有を図っていく予定であります。今後も、引き続き資金繰り支援に万全を期すとともに、お客様の事業環境を丁寧に把握し、その経営課題に一つ一つ向き合っていくことで、金融面から我が国経済、地域をしっかり支えていきたいというふうに思っております。
2点目は人手不足について銀行としてどういう対策があるかということです。銀行のみならずやはり人手不足、働き手不足に悩まれている経営者の方が多いと思います。銀行界にとっては、そういう意味で言うと課題として二つあると思っていまして、銀行自身の人手不足、あるいはお客様、お取引先の人手不足ということだと思っていす。これらの課題に対して全銀協で取り組んでおりまして、デジタル技術を活用した省力化について2点ほど事例をご説明させていただきます。
一つ目は地方税のQRコード納付です。この4月から自動車税や固定資産税など一部税目について、納付書にQRコードが記載されます。これによりまして、お客様はスマートフォン等を使っていつでもどこでも納付ができるようになる。加えまして、銀行サイドも銀行の事務処理が減ります。さらに地方公共団体においても消し込み作業が自動化できる、いわゆるその三方良しの取り組みであります。もう一つは手形小切手の電子化です。手形小切手も税金と同様に複数の関係者間で紙が流通して、それぞれにおいてその処理が行われておりますので、これを電子化することによって企業、地方公共団体、銀行の人手というのが省力化することは期待できるものです。なかには現状の業務フローを変えることに抵抗感を持つケースもありますけれども、銀行界としては、サービスの利便性向上や周知活動、手数料の見直し等の取り組みを通じて、しっかりと電子化を推進していきたいというふうに思っています。
この他にも、各個別行においてもそれぞれテクノロジーの活用による効率化であるとか、成長分野の効果的なリソースアロケーション、こういったことをビジネス戦略を踏まえて人手不足の中でも最大限のパフォーマンスの発揮に取り組んでいるという状況かと思います。この施策を進める上で重要なことは人への投資であるというふうに考えております。デジタル競争の激化やサステナ対応など急速な事業環境の変化に対応し、付加価値を創造できる人材を育てるというのはやはり継続的な研修教育が必要だということであります。加えまして個々に置かれた事情により、働きたいのに働けない人がいることは社会全体の損失でもあります。企業には多種多様な人が柔軟に働ける職場環境作りが求められるということであります。また、そうした経済面も含めて企業が社員を支援することで社員のエンゲージメントを高めて、企業の持続的な成長に繋がっていくとも重要であると考えております。
地銀・第二地銀
2023.04.04 18:50
Q.銀行界がCDBCを発行する意義について
CDBCを導入する意義ということですが、CDBCというのは様々な国で今進められていると思っておりまして、例えば他国の事例としましては、カンボジアやバハマのようにスマートフォンは普及していますけれども銀行口座が普及していない、いわゆるその一部の新興国、こちらが金融包摂のような目的で安心・安全な金融サービスを広く国民に提供するという目的でCDBCが導入されたりなどで普及しているという事実もあると思います。また、米国の中央銀行によるパイロット実験の動きも加速化しておりますし、中国では2019年からデジタル人民元のパイロット実験を始めております。実施地域を順次拡大していく方針だというふうにも聞いております。こうした一連の後進国のみならず先進国でも取り組みを始めている実情を踏まえると、我が国においても検討が今後進められているものだと認識・理解しています。
ただ、日本の場合はATMをはじめ現金流通網というのが全国規模で整備されております。また国民の口座保有率も非常に高く、さらに最近特にキャッシュレスの決済手段が着実に普及してきておりまして通貨や決済の信頼性、利便性が高いという、他国と異なる状況であります。こういう日本において、どのような利用のケースがあるのか。しっかりとそのCDBCを導入する場合のその意義、目的については、官民でコンセンサスを得て議論が進められていくというようなことを我々としては期待をしております。実際に日銀によると、この4月から民間事業者も参加するようなパイロット実験を実施するというふうに聞いておりますし、制度設計からCDBCフォーラムというのを設置し、幅広いテーマについて議論検討を行っていくとも聞いております。引き続き、銀行界も検討に主体的に参加をして、安心・安全かつ便利な社会の実現のために必要な意見発信を行っていきたいと思います。
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