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2023.11.13 19:30
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2023.10.20 11:45
<全銀ネットで起きた障害について>全国銀行データ通信システム、いわゆる全銀ネットの障害について一言申し上げます。まず、今回の全銀システムの障害により、お客様を初め関係者の皆様に多大なるご迷惑とご心配をおかけしてしまいました。先日の会見でも全銀ネットの辻理事長からお詫びを申し上げましたが、銀行界の代表といたしまして、改めてお客様、関係者の皆様にお詫び申し上げます。全銀ネットでは、復旧までの対応が長期化したことも含めて、今回の障害の原因究明、真因分析と再発防止策の検討に鋭意取り組んでおります。全銀協としても、今回の事象の重大さを踏まえ、全銀ネットと一体となって、お客様と社会の皆様からの信頼回復に全力で取り組んでまいります。昨日、全銀ネットの加盟金融機関は障害によりお客様に生じた損失の補償に係る申し合わせを行いました。各金融機関において、この申し合わせの内容に基づいて対応してまいります。 Q.全銀ネットで起きた障害についての受け止めや初動対応について。今回の障害をどう受け止めるか、概要、顧客影響、原因、真因、その辺りをご説明させていただきたいと思います。全銀ネットが運営する全銀システムの運用によりまして、皆様に大変なご迷惑、ご心配をおかけしました。決済サービスを提供する銀行から代表して深くお詫び申し上げます。企業、個人、幅広いお客様に、またゴトウ日(5・10日)を含む2日間ということもあり、多大なご迷惑をかけてしまい痛恨の思いであります。本当に申し訳ございません。日本の銀行界のトップとして、全銀ネットの理事の一人ということもありまして、今回の事象を非常に重く受け止めています。今回の事象は、全ての預金取扱等金融機関およびそのお客様に影響がおよびました。したがいまして、信金、信組、労金なども参加する全銀ネットで検証していくことになりますが、全銀協も一体となって再発防止と信頼回復に取り組んでまいりたいと思っております。また、今回の事象の概要でございます。簡単に申し上げさせていただきたいと思いますが、10月10日、11日の2日間、一部の金融機関との通信に不具合が生じました。その結果、仕向け・被仕向け合わせて約500万件の振込処理が遅延し、うち約87万件の取引の処理が当日中に完了いたしませんでした。復旧につきましては、12日から暫定復旧しており、現在、完全復旧に向けて検討を進めております。真因分析も含めて時間がかかっている点、ご心配をおかけしております。システムベンダーからは一部のプログラムに不具合があったとの速報を受けておりますが、拙速に結論を出すことはなく、なぜ不具合が発生したのか、なぜそれに気づくことができなかったのか、深遠なる検証を徹底的に行う必要があると私は思っております。お客様に安心して決済サービスをご利用いただけるよう、銀行界も全面的にこの検証に参加いたします。また私個人といたしましては、この原因・真因の検証の着眼点につきましては、一つは東阪(東京・大阪)両系のRCを同時に公開する、これが本当に正しかったのかどうか、あるいは事前テストの実施時期、システム更改に関わるいわゆる設計からリリースまでの各プロセスが正しかったかどうか。こんなところが着眼点だと思っています。加えまして、BCPやSCPの有効性、具体的にはベンダー、預金取扱等金融機関との連携がどうであったか、代替手段、あるいはお客様に対する告知、障害発生後の対応の適切性、こういったところもしっかり振り返る必要があると思ってます。加えまして、その背景といたしましてこの50年間、トラブルがなかったということでここに過信があったのではないか。あるいは全銀ネットのガバナンス、これがしっかり機能していたのか、さらに申し上げると、過信から作業中の体制であるとか、BCP、各種訓練が形骸化していなかったのか。こういったところもしっかりと踏み込んで確認していく必要があると考えております。また、体制といたしまして全銀ネットの理事会の直下にタスクフォースを設置する。そしてそれには専門家の目線をしっかり取り込みながら、検証や再発防止策の検討を進めていきたいと思っております。1点目は私から以上でございます。2点目につきましては、今回の復旧までの銀行界の対応、こういったところだろうと認識しております。まず今回のRCの更改につきましては対象行も参加する形で各種試験や移行リハーサルが行われております。また、今回のRCとは別にですね、金融機関と全銀システム通信が不動になった場合の有事のバックアップ、BCPも用意してございます。具体的には振り込みデータを媒体などで受け渡しする方法で、毎年、全行参加して訓練を行っております。しかしながら、今回結果として、当日中に処理が完了しない取引が多数出てしまったところからも、こうした試験やリハーサル、BCPや訓練が有効に機能したとは言えないと私は考えています。BCPの部分では、金融機関側にも改善の余地がなかったのか。ここは当然にして検証していく必要があります。障害が起きないように最善を尽くすということは大前提ではありますが、システムに絶対大丈夫というのはございません。起きてしまった場合に、影響をなるべく小さく、なるべく短期間で復旧する対策、これが大変重要だと思っております。今回上手くいかなかった部分がどこで、その理由は何か。全銀ネット、加盟金融機関双方の対応についてしっかりと検証していきたいと思っております。 Q.長期金利が上昇する中で市場環境をどう見ているか。まず為替でございます。足元のドル円相場は直近149円/ドルぐらいですかね。150円/ドルに近い水準で推移するなど、いわゆる円安が進展しております。プラス・マイナス両方あると思っておりまして、まずプラス面でございますが、製造業などの輸出企業の採算性の改善、インバウンド需要のアップ、これが挙げられております。一方マイナス面でございまして、物価上昇を通じた家計負担の増加、これが懸念されるところではあります。特に家計の負担が増加することで節約志向が高まり、個人消費が下押しされる可能性には十分注意が必要であるというふうに考えております。続きまして金利でございます。日本銀行がYCCにおける長期金利の上限を0.5%から柔軟化したことで、足元、長期金利が0.89%程度にまで上昇しております。現状、金利上昇による日本経済への影響は大きくないというふうには考えておりますが、仮に、長期金利がこれ以上大きく上昇すれば、借入の利払い費増加や、円高に伴う輸出採算の悪化を通じて、経済活動に下押し圧力が生じる可能性があります。引き続き金融政策等も含めて注視してまいりたいと思います。債権運用の運営方針、こちらにつきましては個別行の戦略になりますので、私の方からは運用環境について申し上げさせていただきたいと思います。日本においては当面、金融緩和は継続されるとみております。運用利回りと調達コストが逆ザヤとなる可能性は低いと考えています。長期金利の上昇による保有債券の評価損には注意が必要ですが、運用利回りの改善を通じて銀行収益にはプラスに寄与すると理解しております。各行のリスク許容度を踏まえ、適切に運営されるべきと考えます。 Q.システム障害を巡る各金融機関の対応状況は。色々とご心配をおかけしまして申し訳ございません。原因あるいは真因の検証はまだ継続中でありますが、まずは何よりお客様対応を優先に取り組むということで、昨日、全銀ネットの加盟金融機関で、今般のシステム障害による損失の補償について、誠心誠意対応するということで申し合わせを行いました。ご存知の部分があるかもしれませんが、具体的には取引先の金融機関の振り込みができずに、他の金融機関で振り込みしたことによる手数料の差額や、着金が遅れたことで借入金の返済ができず、発生してしまった延滞金や延滞損害金、着金が遅れたために一時的に借入して支払いをした場合の金利負担など、今般のシステム障害で発生した費用もその対象となります。一般的には、このような対応というのは個々のお客様によって事情が異なるものですので、各金融機関がそれぞれ判断して取り組むものなんですけれども、今回は広範な金融機関のお客様に影響が及ぶ事象ということでありますので、今申し上げたような形で業界をかけて迅速に対応すべく、申し合わせを行ったという次第でございます。ちなみにみずほ銀行を始め一部の金融機関では、障害発生直後から、手数料の減免であるとか、仮払いによって対応しております。また最終的な負担者が誰になるか。これ法的な責任などにもよりますので、現時点ではちょっと申し訳ないんですが決まっておりません。また昨日の全銀ネットの会見では、ご質問として、金融機関ごとに対応にばらつきが出るんじゃないといったご指摘もございました。こちらにおきましても、各金融機関において円滑なお客様対応をしていくためにも、引き続き各金融機関から検討を進めていき、できるだけ円滑に対応していきたいというふうに思っています。なお全銀協では、こうした対応を会員銀行や一般に周知していくほかには、例えば今回の障害による入金遅延が原因で手形小切手の不渡りが発生しないよう、不渡り猶予の特別、これを行うなどしております。 Q.テスト環境に参加していた金融機関に責任は。テスト環境での銀行側の責任ということでございまして、今回のRCの公開につきましては、先ほどもちょっと一部お話をしたんですけれども、システムベンダーの単独のテスト、全員ネットが参加するテスト、さらに参加行も参加するテスト、複数のテストを重ねて本番に向かったということであります。実際この水準というのは過去の全銀システム関連の案件と比較した際に、決して不十分な水準というわけではありませんでした。ただ、今回、結果として大変これだけの大きな障害、お客様への影響が発生したということは、大変重く受け止める事実だと思っております。今後ですね、今回のテストの内容であるとか、システムベンダー、全銀ネット、対象行の連携が適切だったかどうか。この辺りをしっかりと検証していく必要があるというふうに思っております。 Q.みずほ銀行で過去に起きた障害の経験は生かせるか。本日は全銀協会長としての会見ではございますが、ご質問ということでみずほ銀行としての対応、これを簡潔にお話させていただきたい思います。決して誇れることではないんですけれども、みずほ銀行はですね、過去に大規模なシステム障害を経験しておりまして、今回の全銀システム障害に際してもその経験に基づいた支援を既に行っております。例えば、障害初日の夜間のプログラム改修がうまくいかなかったということはご報告済みだというふうに思いますけれども、それを踏まえまして、2日目からみずほからシステム人材のサポートを派遣しております。そして結果としまして、3日目の朝の復旧には貢献をさせていただいたということでございます。また先ほどご説明をさせていただいたその補償の申し合わせにつきましては、みずほ銀行の過去のシステム障害時にどのような補償対応を行ったか、これを参考情報として提供させていただいておいております。今回の原因、あるいは真因分析、再発防止策の策定、こういうことにつきましては会長行という立場のみならず、みずほ個別行としての経験、ノウハウを惜しまずに提供いたしまして、業界全体としてのお客様からの信頼回復に努めていきたいと思っております。 Q.資産運用立国に向けた国内資産運用会社の課題と、海外投資家を呼び込む効果は。国内大手の資産運用会社の課題、あるいは海外投資を呼び込むことのメリットということでございまして、本件については個人的な見解ということでお話させていただきたいと思います。まず国内大手資産運用会社の課題、こちらにつきましては、やはり一番大きなところは運用資産規模が大きな課題だと思っておりまして、米国最大手の資産運用会社の運用資産規模が約10兆ドルに対しまして、国内では最大手でも10分の1程度ということであります。その要因の一つといたしましては、やはり海外プロダクトの運用力があると思っております。国内運用会社というのは、海外運用につきましては外部委託をしているケースが多いと認識しておりまして、やっぱり海外プロダクトの運用強化、すなわち専門運用人材の育成・確保など、時間はかかるかもしれませんが、国内運用会社にとってはですね、まだまだ成長・発展の余地がある領域だというふうに思っております。また、大手金融グループの系列会社が中心であるということで、販売会社の意向や利益を優先した商品組成が行われている指摘もしばしば出されております。グループ系列会社との利益相反管理の徹底であるとか、経営の独立性確保などは当然の前提といたしまして、資産運用会社と販売会社、それぞれが専門性や役割を発揮し、顧客にとって魅力的な商品を供給していくことが重要だと思っております。最後、海外投資家を呼び込むメリットについて申し上げます。多様なリスクアペタイトを持つ海外投資家のマネーが市場に流入するということで、市場に厚みが増しまして市場の活性化に繋がります。これを通じまして、企業への成長資金の供給や株価時価総額の上昇など様々な面で恩恵が期待できるんじゃないかなというふうに考えております。 Q.システム障害による補償の規模について。補償の規模ということだと思いますが、各金融機関によりまして、今回のシステム障害の影響規模はかなり異なるということでありまして、例えば障害発生直後から手数料の減免であるとか、仮払いによる立て替えなどの対応でお客様の損失を防いでいる金融機関もあったりですとかですね、その補償の全体規模っていうのがちょっと一概には申し上げられないかなというふうには思っております。そういう意味で今手元に件数というのは持ち合わせていないということでございます。本件についてやはり重要なことは、これも繰り返しになりますけれども、被害にあわれましたお客様に、金融機関が誠心誠意向き合うことではないかなというふうに思っております。一般的にお客様によって事情が異なりますので、各金融機関がそれぞれ判断して取り組むということで、今回は広範囲ということなので申し合わせを行った次第でございます。また同様にみずほの件数につきましても、手元に数字というのを具体的に持っていないということでお許しください。 Q.2021年の銀行法改正による銀行業高度化について、ここまで2年間の振り返りは。繰り返しになりますが2021年度の銀行法改正によりまして、銀行業高度化等、社会において地方再生や持続可能な社会の構築に資する多様な業務が可能になっていると認識しております。これを受けまして、地域産物を取り扱う商社事業であるとか、地域の魅力を高める観光業、あるいはその再エネ電力の販売を手がける電力事業など、各行が多様な取り組みを行っているということで承知をしております。中には特定の地域におきまして、太陽光発電事業と電力小売り事業を合わせて運用することで地域再生エネルギーを地域内で消費し、地域の脱炭素と経済活性化を同時に実現することに取り組んでおられる方もおられます。今後もですね、こうした銀行法改正の趣旨を踏まえて、各行がグループのリソースを総動員し、お客様や社会の課題解決に取り組み、また同時に銀行グループ自身もともに成長を図っていくということが大事だと思います。ただ一方で、先般の規制緩和を活用したこの取り組みはですね、まだ始まったばかりでございまして、正直各行が試行錯誤している状況かなとも思っております。こうした取り組みを持続可能なビジネスモデルとして確立していくためには、更なるノウハウの蓄積であるとか人材育成など、まだまだ時間を要するものかなと思っておりまして、今後も各行が創意工夫を凝らし不断の取り組みを図っていくことを期待しております。 Q.資産運用の高度化とはそもそも何を目指すものなのか。会長としてというか、やっぱり私も資産運用の高度化っていうのをしっかり理解をしたいので私なりの見解ということで申し上げさせていただきたいと思います。やっぱり一つは、金融庁さんの資産運用業高度化プログレスレポート、こちらを参考にさせていただきますと、資産運用業、単に資産運用会社のみを指すことではなくて、販売会社や信託銀行、生保会社などを含むと捉えておりまして、それらの資産運用業に加えて、投資家およびアセットオーナーがインベストメントチェーンを構成すると、こういったところが絵としてはあるのかなと。その上で、インベストメントチェーンに関わる今申し上げた事業者の方々それぞれが、専門性や役割を適切に発揮し、運用力や価値提供力を高めて、大事なこというのは顧客利益の最大化を図っていくと。これが資産運用業の高度化という意味だと、私なりに解釈をしております。そのアプローチは様々あると思います。ただそれはですね、やはりそれぞれの主体が画一的ではない、創意工夫をしながら、機能強化を図っていくということが大事だと思っております。例えば、運用会社というのは運用資産の多様化や運用対象地域の拡充によりリターンを向上させる。例えば、アセットオーナーは専門性を高めて運用ガバナンスを強化する。我々販売会社は、顧客の最善の利益にかなう商品選定や提案力強化を図ると。そういったような形で各主体が一歩踏み出すことで、全体としての運用業の高度化が図られるのではないかなというふうに思っております。そしてご質問の英語ということなんですけれども、私も決して得意ではないんですけれども、例えば岸田総理はニューヨークの演説では、ソフィスティケイテッド・アセット・マネジメント(Sophisticated Asset Management)と表現されておりますので、それが適切な英語なんじゃないかなというふうに私は思います。私から以上です。ありがとうございました。 Q.個人向け外貨預金で金利を引き上げる動きも出ているがその目的は。個人の外貨預金を集める目的ということと注意点、留意点ということなんですけれども、外貨預金を集める目的っていうのはやっぱり各行の調達構造や戦略が異なっておりますので個人的見解ということでお答えさせていただくということでお許しいただきたいと思うんですけれども、一般的に銀行の外貨調達に占める個人のお客様の外貨預金の割合っていうのは決して大きくないんですね。そういう意味で言うと、外貨預金の金利の引き上げの目的っていうのは、お客様をその銀行に繋ぎとめる、あるいはお客様を呼び込む点を目的にされてることが多いんじゃないかなというふうに考えております。実際ですね、ご承知おきの通り円貨預金の金利っていうのは、足元の物価上昇率を大きく下回っています。このような状況におきまして、外貨預金というのは比較的金利が高く、相場感に見合う顧客の運用ニーズにマッチした商品といえると思います。お客様にとって、そういう意味での留意点、注意点ということにつきましては、外貨を購入する際には売買コストが生じるということであるとか、あるいは一定期間は換金できない、あるいはやはり為替リスクがある、あるいは預金保険制度の対象外、こういったところは留意点になってくるんじゃないかなというふうに思っておりまして、やっぱりお客様に商品性をしっかりと説明し、ご理解いただくことっていうのが重要であるということは、改めて申し上げるまでもないということでありますが、そんなところではないかなと思っています。 Q.円安でマイナス影響を受ける輸入企業への各行の支援策について。円安についての為替リスクのヘッジ、あるいはどのように支援していくかというご質問だと承りました。まず輸入企業のお客様、特に価格転嫁がしづらい業種、例えば中堅のお客様であるとか小売りの方々、こういった方々においてはですね、足元の日米金利差であるとか底堅いボラティリティを利用して為替ヘッジに注力をされている動きが結構見られます。例えば、為替予約を長期間化することでレートの改善を図るお客さまや、通貨オプションを利用されるお客様など様々でございます。具体的に言うと、例えば大企業になるんですけれども、大企業の石油の元売りなどのお客様というのは、大体1カ月か2カ月先の為替先物予約でヘッジされる方が多いです。一方、大企業の小売りなどのお客様っていうのは、期間が1年から3年先の長期の為替予約をされる傾向もあります。先ほど申し上げた中堅の方々、私の感覚なんですけれども、やっぱりその商流が不確実ということもありまして、全体の為替リスクの大体3割から5割程度のヘッジに抑えている方が多いんではないかなと思います。また、円安水準の長期化を受けまして、想定為替レートを見直す動きも見られます。輸出企業のお客様は大企業中心に円安メリットを享受しておりまして、円安水準での収益を確保するために淡々とですね。為替先物予約によりヘッジをするお客様が多いと感じております。一方で、日米金利差によりまして、為替先物予約のコストが大きくなっております。通貨オプションを利用したコストを抑えた上で一定の円安メリットを享受されるお客様も一部見られます。最後にどのような支援をされてるかということなんですけれども、各行それぞれお客様の商流構造であるとか、事業継続などをヒアリングし、潜在する為替リスクやニーズを丁寧に確認をした上で、その時々のマーケット環境に応じてお客様のニーズとリスク許容度に沿うプロダクツやヘッジ手法などを提案させていただいていると、こんな取り組みをしていると認識しております。 Q.システム障害に関してガバナンスのあり方についての検証は。全銀ネットのガバナンスということだというふうに思っておりまして、まず全銀ネットと全銀協の関係を改めてお話をさせていただきますと、全銀ネットというのは2010年までは内国為替運営機構ということで、全銀協の前身である東京銀行協会がその業務を担っていました。その後、2010年4月に施行されました資金決済法におきまして、同業務が免許制・兼業禁止となったことから、2010年10月に、一般社団法人全国銀行資金決済ネットワークとして独立したという経緯がございます。また、現在の全銀協と全銀ネットの関係、これはお話しいただいたように全銀協が一般社団法人である全銀ネットの社員、株式会社で言えば全銀協が100%株主になると、いわゆる持ち株会社という形になってきます。先ほどお話されたようにですね、全銀ネットの理事ということなんですけれども、理事長はこちらに座っておられる全銀協の副会長兼専務理事が就任してると。これも先ほど申し上げた資金決済法制定に関わる金融審議会の議論でですね、継続的・戦略的な意思決定を行う体制構築が全銀ネットで求められたことを受けまして、前身組織のトップが1年交代であったところを、複数年の就任が可能な人材が理事長を務めるということになってるということでございます。先ほどお話いただいたように、株主、いわゆる株式会社の取締役にあたるのが理事会でありますので、そこが重要事項の意思決定でございますし、理事長の業務執行を監督しております。理事会というのは各行の頭取級がやっているということでございます。適切かどうかということにつきましてはですね、まずは今申し上げましたように、全銀ネットの理事会というものは、理事長の適切なその業務執行の環境をしっかりと整える役割でございます。そういう意味で言うと、今申し上げた形で、理事会のメンバーが今回の全銀ネットのシステム障害において果たして十分なガバナンスが効いてるかどうかっていうところについては、この部分はしっかりと検証する必要があるというふうには思っております。具体的にどういったところのガバナンスを検証するかというところにつきましては、先ほど論点として申し上げさせていただいたところ、例えば理事会あるいは傘下にある部会で、どういったことが議事決定されていたのかをしっかりと確認するとともに、体制あるいは体制の中身、判断能力、これが適切だったか。そういったところは今後しっかりと全銀ネットのガバナンスのあり方についてはしっかりと検証していく必要があると思っております。 Q.システム障害で次期全銀システムのスケジュールに影響は。本日の全銀ネットの理事会で、予定をしていた次期全銀システムの計画書制定、これを見送るということを決議いたしました。これやはり、今回の生じた障害の原因をまずは追究して、その真因をしっかり確認をして再発防止を作ると。それを含めてスケジュールを決めていく、この順番ではないかなと考えておりまして、そこをしっかりと対応していきたいというふうに思います。 Q.足元の日本経済への認識は。足元ですね、GDPも見直しがされるなどインバウンドの需要、あるいはそれに伴ってリテールの方もコロナが終わりまして復活してるということで穏やかに回復しております。製造業につきましても、一時の例えば半導体不足でやや苦戦をされておられた製造業も一部回復の兆し、あるいは再生エネルギーといったところの脱炭素関連の投資があるということで基本的にはかなり景気の方は上向き加減、穏やかに回復してるなということで力強さってのは感じます。ただ一方で、やはり心配なのは海外の状況でございます。欧米のですね、ようやく兆しが見えてきたものの、なかなか金利の高止まりや下がり切らない。こういったところの状況であるとか、あるい中国も足元で回復したという話もありますけれども、まだまだ不動産関係もありまして、非常に低調な状況が続いていると。これが大きく日本に影響するっていう可能性は当然否定されるものではないと思ってますので、この辺りは注視していく必要あるかなというふうに私は思ってます。 Q.米金利の上昇に伴う外国債券の含み損について。もちろん今後の金利動向っていうのは注視する必要はあるとは思いますが、今の日本の金融機関は総じて健全な財務を維持してるというふうにまずは考えておるということであります。ただ昨年度ですね、米金利が大きく上昇したということで、まずは外国債券を中心に多くの銀行というのはポートフォリオの健全化に取り組んでおります。また4月に日銀さんが公表いたしました金融システムレポートにございますように、日本の金融機関は、仮に有価証券の評価損が全て実現損益になったとしても十分な自己資本を有しているというレポートも、この4月ですけどもあったということであります。一方で、今年度に入りましても米国ではやっぱり政策金利の高止まりということを織り込む中で、依然として長期金利というのは上昇基調にあります。年初の10年債の金利は3.5%ぐらいだったんですが、今は足元で5%に近づいているということで、4月の段階よりも金利が高止まっていることもあります。加えて外国債券というのは、運用利回りと調達コストが今逆ザヤにもなっておりますので、ご質問いただいたように今後の動向には注意が必要だというふうに思っております。外債を含めた有価証券投資、これは各国の経済であるとか金融政策動向に加えまして、各行のリスク許容度を踏まえた上で運営されるべきというふうに考えておりまして、その中で債券投資のポジションの収縮、あるいは売却による債券評価損の実現などを各行で判断していく必要あるのかなと、こんなふうに思っております。
2023.09.14 18:09
Q.日銀のYCC柔軟化など政策修正への受け止めは。1点目、日本銀行の政策修正についてということでございますが、個人の見解としてお答えさせていただきたいと思いますが、イールドカーブコントロール(YCC)の運用の柔軟化。これは日銀が昨年来の経験を踏まえて、将来の物価金利上昇局面において、YCCが内包する副作用が顕在化する懸念に配慮し、判断したものと私は理解をしております。長期金利の上限がこれまでの明確な0.5%から柔軟化され、足元では長期金利は約0.7%と若干上昇はしておりますが、上昇幅は限界的であり、現時点では日本経済や財政への影響は大きくないと考えています。ただし今後、仮に長期金利が大きく上昇すれば、借り入れの利払い費増加、円高に伴う輸出採算の悪化等を通じて、経済活動の下押し圧力が生じる可能性があり、引き続き注意深く見ていきたいと思っております。日銀が目指す安定的な2%物価目標が達成されるためには、賃金の持続的な上昇が不可欠であります。ただ、最近は物価高や人手不足を背景に、企業の持続的な賃上げに向けた動きも出始めております。ご質問いただきました更なる政策修正につきましては、今申し上げたような外部環境などを見極めつつ、対処されていくと私は考えております。植田総裁は最近のインタビューで、物価目標の実現にはまだ距離があるとしつつも、マイナス金利の解除後、物価目標の達成が可能と判断すればやると発言されております。長らく続いた超金利緩和政策の転換時期を見極めようと、市場参加者は物価、賃金の動向はもちろん、日銀幹部の発言の細かい言い回しにも着目し、市場も敏感に反応しております。今後の動向にはこれまで以上に注視していく必要があると考えております。 Q.令和6年度の税制改正要望の主なポイントと背景について。今年度の税制改正要望では、足元の我が国の課題を踏まえて、多岐にわたる項目を要望してまいりました。ポイントを4点述べさせていただきます。1点目は、ESG債投資への優遇税制の創設です。我が国が目指すSDGs達成やカーボンニュートラル実現には、民間からの資金が不可欠であり、個人からの投資をESG市場に振り向けていくためのインセンティブとして、個人投資家がESG債投資から得られる利益の非課税化を求めてまいります。2点目は、スタートアップの資金調達に資する税制上の措置です。具体的には、今年度の期限を迎えるオープンイノベーション促進税制の延長です。足元、政府の実行計画の柱の一つになっているスタートアップ育成。成長資金の調達を円滑にする観点で、当該税制が果たすべき役割は極めて大きく、期間の延長を要望します。3点目は、確定拠出年金税制の拡充です。具体的には積立金に対する特別法人税の撤廃や、拠出限度額の見直しなどを要望します。高齢化が進む我が国において、公的年金の補完となる確定拠出年金制度の更なる普及、貯蓄から資産形成の更なる促進。これらに資する、当該税制の更なる拡充を求めてまいります。最後、4点目は国際的な金融取引の円滑化です。主には海外支店の所得に関わる、テリトリアル課税の導入を要望しております。海外支店の所得については、我が国では、日本の法人税率が適用される一方、欧州などの諸外国ではてりとテリトリアル課税として、現地の法人税率を適用することが主流となっております。このため、我が国より法人税率が低い国に仮に支店形態で進出した場合は、本邦企業は欧州企業と比べ、相対的に重い税負担が課されることになり、かかる状況は本邦企業の国際競争力に負の影響を及ぼしているものと考えられます。特に銀行については、支店による海外進出が多く、本要望の措置により、海外での税負担の格差解消、国際競争力の確保を図ってまいりたいと考えております。その他、社会経済の持続的な発展を支える税体系の構築に向け、重点要望以外にも、NISA制度の利便性向上など、多岐にわたる項目を要望しております。 Q.次期会長に三井住友銀の福留頭取が内定したが。福留頭取が次期会長に内定したということのコメントでございます。ご案内の通り、三井住友銀行の福留頭取は、長年の市場営業部門や国際業務部門を中心に豊富な実務経験を積まれており、人格、見識、リーダーシップ、いずれも兼ね備えた方であります。私頭取になる前、2年名古屋で営業部長、営業常務ということで駐在していた時、福留頭取は当時トヨタフィナンシャルサービスというトヨタグループの社長でやっておられましてですね、担当させていただいておりました。大変優れた素晴らしい方だということは個人的にも思うところであります。その福留頭取には今年4月から全銀協の副会長を務めていただいておりますが、資産形成の推進や、融資業務体制の検討など、銀行の国内業務に関する事項を所管する業務委員会を中心に、卓越した手腕を発揮されています。これらを総合的に踏まえ、本日の理事会において、新会長として最もふさわしい方と判断した次第であります。 Q.米金融機関の格付引き下げに伴う金融危機の可能性は。足元では財務内容が悪化した複数の米地銀の格付けが引き下げられましたが、現時点でですね、金融システム全体にストレスがかかる兆候は見受けられておりません。金融危機には至らないと考えております。ご認識の通り、米国では根強いインフレ圧力を抑制するべく、2022年から23年にかけて、政策金利を5%超の水準まで急速に引き上げました。それにより、リスク管理が不十分であったいくつかの銀行で破綻が起きましたが、リーマンショックのような金融システム全体に波及する事態には陥りませんでした。これは、これまでの各国における規制・制度改革の取り組み、また各国規制当局間の迅速な連携の成果であり、金融システムが強靭であることの一つの証左だと理解をしております。また、地銀の格下げ後、株式市場、債券市場などの金融市場においても、信用不安を織り込む動きは見られません。短期金融市場でも、銀行間で円滑な資金取引が行われてると認識しております。ただ一方、米商業用不動産向けローンの焦げ付きなど、一部に信用懸念がくすぶっていることも事実であります。また、インフレの動向次第では、金利が高止まりすることも懸念され、金融市場の先行きについては予断を持たずに緊張感を持って注視していく必要があると考えております。 Q.取引先支援の一つとしての廃業支援の在り方について。コロナ後の中小企業の経営というのは、足元の物価高であるとか、人手不足によりまして、相変わらず厳しい環境が続いていると私は認識をしております。そういった意味で、引き続き、銀行界が中小企業の資金繰り支援に最優先に取り組む方針は変わっていないというふうに思っています。一方で、新陳代謝という観点においては、7月の会見におきまして、コロナという危機を出した今、中小企業が経営課題に向き合う機会となると、私は申し上げさせていただいております。銀行界として融資にとどまることなく、各社の経営課題を踏まえた支援を行ってまいりたいというふうに思っております。例えば、新規事業や業務効率化などに意欲的に取り組む企業に対しては、資金繰り支援に加えて、ビジネスマッチングやDX支援など、非財務面もしっかり支援していきたいと思っております。一方で、自力での事業継続に限界を感じ、事業売却や廃業等の退出を希望する企業には、M&A、円滑な債務整理を丁寧に提案していきたいと思っております。同時に、次世代の産業育成のためのスタートアップ企業の支援にも注力してまいりたいと思ってます。8月30日、金融庁を初め関係省庁より「挑戦する中小企業応援パッケージ」が公表されました。コロナ資金繰り支援に加え、経営改善、再生支援を包括的にまとめた政策であり、こうした政策面での後押しを積極的に活用していくよう会員には周知しております。ただ、やはり事業再生が廃業などのその経営判断は、中小企業の経営者にとってですね、大変悩ましい。重要な決断だと思っております。銀行界として取りうる選択肢が多いうちから、経営者の目線に立って丁寧に会話を継続し、その経営判断をサポートする。これを地道に続けていくことが重要であると考えております。 Q.中小企業の脱炭素化支援について。カーボンニュートラルの実現、そのためには日本企業の9割以上を占める、かつ、日本の温室効果ガス排出量のうち1割から2割弱を占める中小企業の取り組みは欠かせないというふうに思っております。一方で、経営資源や財務面に制約のある中小企業にとって、大規模な事業変革を伴う脱炭素経営は大変大きな挑戦でもあります。銀行界としては、1社1社の課題に寄り添い、中小企業の脱炭素化に向けた取り組みを支援していきたいというふうに考えております。全銀協では、今年の1月に銀行の営業担当者とお客様の初期的なエンゲージメント支援のツールとして、「脱炭素経営に向けた初めの一歩」を作成し、公表をいたしました。そして次のステップとして、より具体的な取り組みを進めています。23年8月、中小企業の開示データ標準化を目指す「一般社団法人サステナビリティデータ標準化機構」が設立されました。中小企業は、商品の納入先企業や、取引銀行から脱炭素への取り組み状況について、別々に異なる形式で説明を求められることがあります。これは大変中小企業にとって事務負担の大きなものであります。当機構ではこの負担を軽減していくために、2024年1月をめどに開示データ標準化のガイドラインの策定を進めており、銀行界として積極的に参加していきたいというふうに考えております。 Q.稼働から5年経過の「モアタイムシステム」について。来月でちょうど、全銀モアタイムシステムというのは5周年を迎えさせていただきます。稼働当初、参加金融機関は505であったものをですね、足元は1115先まで増えております。また、2022年のモアタイム中の振込件数は約2億件、金額は35兆円でありました。この取扱量は毎年20%から30%のペースで増加してきております。今後も引き続き利用が広がっていくものと見ております。モアタイムシステムについてご質問いただきましたが、ちょっと離れますけど全銀システム自体がですね、実は1973年4月の稼働開始から、今年で50周年であります。コアタイムシステムは足元約1200先の金融機関が参加をしております。2022年の振り込み件数は約18億件。金額は3000兆円を超えております。我が国の決済、ひいては経済活動を支えてきております。50周年という節目でございまして、ちょっと触れさしていただきました。 Q.円安が進む為替相場の受け止めと家計や企業への影響は。為替相場と日本経済の関係でいきますと、一般的には円安は製造業などの輸出産業の価格競争率の向上やインバウンド需要の拡大といったプラス面があるかなというふうに思っております。また足元では、製造業の想定為替レートに比べて円安が進んでおりまして、輸出産業の利益が上振れるようにはなっております。実際に多くの輸出産業の企業の皆様とお話をすると、大体130円ぐらいを想定レートにしておりますので、今申し上げたような、その分の上振れになってるんじゃないかなと思っています。また、あくまでもマクロモデルの試算なんですけれども、プラスマイナス両面あると思いますがそれを加味した後のですね、10円円安になればどうかという意味で言うと、日本の実質GDPを0.2%程度押し上げると、こんなデータもございます。一方で、円安は、ご案内の通りですけれども、輸入企業ではコスト上昇を通じて減益要因になる可能性があるほか、最近のガソリン価格の高騰に見られるようにエネルギー価格の上昇などを通じて家計の負担が増加するといったマイナス面の影響もあります。両方あるということでございますので、円安が日本経済にプラスかマイナスかということはですね、なかなか一概には言えないところでありまして、やはり大きなリスクという意味で言いますと、為替レートの急激な変動、これは非常に企業経営にとっても大きなリスクでありますので、望ましくないかなというふうには考えております。また、先行きについて個人的見解として申し上げさせていただきますと、ご認識の通り最近のドル円相場の変動の主因は、日米金融政策の差にあります。短期的には米金利の高まりを背景に円安傾向が継続する可能性がありますが、年末以降は見立てといたしましては、米国金利が減速する可能性もあると。そうすれば、米金利が低下傾向に転じ、ドル高圧力が徐々に緩和されるという方向感ではないかなというふうに予測しております。 Q.金融政策の転換による住宅ローンへの影響は。個人的な見解ということでお許しいただきたいんですけども、あとになって振り返れば、昨年の長期金利の変動幅の拡大や、今年7月のYCCの運用の柔軟化、これがね、転換点だったというようなことになるんじゃないのかなというふうに思っております。しかしながら日本銀行の情報発信やコミュニケーションを踏まえますと、当面の間は金融緩和は継続されるのではないかなと理解をしております。住宅ローン金利は市場金利動向などを総合的に勘案し、各行がそれぞれ決めているため一概には申し上げられませんが、市場金利の上昇に伴い住宅ローン金利が上昇する可能性はあります。実際の住宅ローン利用者への影響に関しては、ご存知の通り7月のYCCの柔軟化を受け、長期金利が上昇したことで、新規借り入れの固定型の住宅ローン金利は上昇しました。一方で、現在、住宅ローンの約4分の3は変動金利ですが、短期金利は低位で推移していることから、今のところ家計への直接的な影響は限定的です。引き続き、お借り入れから完済までの金利が変わらない安心感、これをメリットと感じていただける、全期間固定金利などのご提案を含めて、お客様のライフステージやニーズに寄り添った丁寧な対応を行うことが重要だと考えております。 Q.資産運用立国の実現に向けた金融界の役割認識は。資産運用立国を実現する、そのためには資産運用業の高度化やアセットオーナーの機能強化、これは大変な課題であると思っております。資産運用業の抜本的改革は重要施策とまずは受け止めております。今後、その実現に向けた作成プランにおいて、具体的な施策が検討されていくものと思いますが、銀行界としてもしっかり役割を果たしていきたいというふうに考えております。銀行界では、グループ会社に資産運用会社を持つ会員行もありますが、資産運用立国の文脈において、銀行は販売会社としての立場が中心になります。したがいまして、販売会社の立場で申し上げれば、今年度から始まる新しいNISAの普及・提案活動などを通じて、個人の資産運用の裾野を広げ、家計資産の成長と資産所得の好循環に結び付けていくことが重要な役割であると考えております。特に銀行というのは、預金や決済などのサービスを通じて、個人のお客様にとって最も身近な金融機関だと私は思っております。個人の資産運用の裾野を広げるうえで、銀行界が果たす役割は大きいと考えています。また、そのためには、販売会社としての顧客本位の業務運営の高度化や資産形成を広く浸透させるための金融経済教育の取り組みなどは当然重要ですので、銀行界としてしっかりと取り組んでまいりたいと考えています。 Q.金融庁が求めるコベナンツ開示について。まず現状の認識でございますが、本件につきましては、金融審議会のディスクロージャーワーキング・グループ報告において、重要な計画の開示・拡充が提言されたことを受け、開示に関する内閣府令の改正が検討されているということであります。その中で、ローンや社債に付される財務上のコベナンツに関し、特に重要性が高いと見込まれるものについて、重要な契約として、借入金の元本や財務上のコベナンツなどの概要を有価証券報告書、臨時報告書にて開示する方向で制度設計が進んでいると理解をしております。本改正案は、投資家への情報提供の観点からは重要であると思っております。一方で、ご案内の通りローンというものは相対取引であります。その契約条件である財務上のコベナンツは開示を前提としておらず、この点において社債と性質が異なります。開示の内容次第では、開示した企業に対する過度な信用不安が誘引されることが懸念されます。例えば、当該企業が厳格なコベナンツなしでは借り入れができないとか、そんな誤解が考えられます。また、金融機関や借入企業がこのような誤解を恐れて、コベナンツ付の借り入れを回避すると円滑な資金調達が阻害される懸念も想定されます。そういった事態に陥らないよう、実務面や実態を含めて影響を考慮して開示の対象や内容については、投資家に対して真に開示が必要な情報を見極めて慎重に制度設計していただく必要があるというふうに考えます。
2023.06.15 19:51
Q.仕組み債の販売に関する協会の対応や今後の方針と、投信商品数の削減可能性についての受け止めは。
一つ目の仕組み債の件です。千葉銀行ならびに武蔵野銀行における仕組み債の販売に対しまして、証券取引等監視委員会が金融庁に対する行政処分勧告を行ったということは承知しておりますが、個社の事例かつ正式な処分が出ていないという現時点で、具体的なコメントは差し控えさせていただきたいと思っています。ただし、会員行に対して行政処分勧告が行われるに至ったことについては、大変残念に思っております。
銀行界では、2022年10月のお客様本位の業務運営の徹底に関わる申し合わせによりまして、お客様の知識、経験、投資背景、財務状況、リスク許容度、取引目的等に即した適合性の判断と、お客様のニーズに踏まえた適切な商品・サービスの提供およびフォローアップの徹底について申し合わせを行っております。
仕組み債に限らずリスク性商品の販売にあたっては、金商法や日証協の自主規制規則等の遵守はもとより、顧客保護、顧客本位の観点から、会員各行には今一度、こうした申し合わせやFD原則に立ち返り、経営陣の関与のもと自らの販売・勧誘体制を振り返り、適切な業務運営の構築に努めていただきたいと思います。
本日この記者会見の前にですね、理事会のメンバーに対しましても、私からその旨を述べさせていただいております。処分等につきましてはですね、繰り返しになって恐縮でございますが、現時点では金融庁から千葉銀行、武蔵野銀行に対しての行政処分は決定されていませんので、今後、公表内容を踏まえて適切に対応していきたいというふうに考えております。
それに関わらず先ほど申し上げました通り、会員各行におきましては本件の事例を踏まえ、今一度、昨年10月の全銀協の申し合わせやFD原則に立ち返り、経営陣の関与のもと自らの販売・勧誘体制を振り返り、適切な業務運営の構築に努めていただきたいと思っておりまして、先ほど申し上げましたように、理事会のメンバーにも私からその旨を申し上げたというところであります。
続きまして2点目に移らさせていただきたいと思っております。投信商品数の削減ということでございます。ご承知のことだと思いますけれども、我が国の投資信託は資産規模に対して商品本数が多くて、米国と比較いたしますと投信1ファンドあたりの運用資産残高が20分の1程度であることから、商品数の削減を図り、効率性を高める必要性というのが指摘されているということだと認識しております。
削減につきましては、基本的に投信委託会社、いわゆる運用会社の判断によるところでございますが、管理コストの削減や運用リソースの集中などを通じて、より高品質な運用商品の提供に繋がることが期待されております。一方で、多様な投資ニーズに対する選択肢が狭まることや、既存商品の保有者には繰上償還の負担ということを強いることになりますので、そういった観点に十分留意しながら対応が進められるべきだと考えております。
今般の質問というのは販売会社である銀行の立場ということでありますので、その立場から申し上げさせていただきますと、投信商品数の削減のためには、今申し上げた繰上償還を行うためには投信委託会社が投信約款の規定に従い、受益者からの異議申し立ての受付を行うことになりますので、販売会社としては異議申し立て手続きに関わる受益者への通知や情報提供等の対応を行うことになってまいります。
また、繰上償還された商品の保有者に対しては、必要に応じて代替商品の提案などのフォローを行うことも重要と認識しております。そういった、繰上償還に関わる手続きの煩雑さというのが実はあるんですけれども、やはり大事なことというのは、真に顧客の最善の利益に資する商品ラインナップを提供することであると思ってます。これが販売会社に求められる役割だというふうに思いますと、やはり長期的なビジネス発展に繋がるということで、しっかりと顧客本位の立場から適切に販売会社としての役割を果たしていきたいと思っております。
Q.新型コロナの5類移行に伴う資金需要等の変化は。
コロナの5類移行に伴う銀行への影響ということでございますが、5月8日に政府が新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付けというのを5類に見直しました。
銀行界も新型コロナウイルス感染症対策ガイドラインを廃止いたしまして、現在は業務継続の観点に留意しつつ、各行が自主的な感染対策に取り組んでいるというのが現状であります。ご質問いただいた銀行のですね、店舗運営の影響について申し上げますと、5月8日以降、銀行界として、マスクの着用は個人の判断に委ねるというふうにいたしました。
またお客様に対して感染防止への取り組みを求めるポスターも廃止しておりまして、店舗はコロナ前の風景に戻りつつあります。一方で、これはみずほ銀行のケースになってしまうんですけれども、5月の店舗への来店客数につきましては、2020年度以降のコロナ前の2019年度対比、おおむね半減が続いております。
このトレンドは今年度も変わっておりません。今後の推移というのはよく確認する必要があるんですけれども、おそらくですねコロナ禍を経まして、お客様に一定程度、非対面チャネルの銀行取引が定着してきたのではないかなと受け止めております。
銀行界といたしましても、お客様に来店をお願いする必要のない銀行取引の拡充を初め、引き続き金融サービスの利便性向上を図っていきたいというふうに思っております。また同時に銀行の社員も多様な働き方に変化していくことが重要でありまして、ポストコロナの時代にふさわしい業務運営を努めていきたいというふうに思っております。
また資金需要の動向につきましては、現時点で5類以降のデータってのは全て揃ってるわけではありませんが、これまでもコロナ関連の行動制限は段階的に緩和されてきている中、2023年4月の全国銀行の貸し出し残高は571兆円と前年同月比24兆円増加をしております。
サービス業を中心とする消費行動の活性化、売上拡大による運転資金の増加、設備資金への意欲向上によりまして、資金需要も伸びているものと考えており、5月以降もこうした資金需要の底堅さは継続するものと考えております。
引き続き銀行界といたしましては、資金繰りを初め、事業者等の支援に取り組み、日本経済の更なる回復をしっかりと下支えしてまいりたいというふうに思っております。
Q.為替相場の見通しと日本経済への影響についてと、顧客部門と市場部門のバランスへの考え方について。
会見が始まる前は1ドル141円までいっていたと思うんですよね。先行きについては全銀協会長としてのコメントはちょっと差し控えさせていただきますけれども、経済への影響等については個人的見解ということでお話させていただきたいと思います。
昨年秋にはですね、1ドル150円まで円安が進行しておりましたが、年初にかけて120円台後半まで円高になってきたと、かなりボラが激しい期間でありました。足元では落ち着いていましたけど、今申し上げたようにまた円安の方に向かってると。それはFRBの利上げ継続ということで、やっぱり日米の金利差が拡大したということであるかなというふうに思っております。
日銀によってその金融緩和策の早期修正観測が和らいでいるということも円安圧力になっているというふうに思ってます。やはり為替は日米の金利差の相関関係がかなり強いという環境が続いているとみています。
そういった意味で今後につきましても、足元の米国経済は依然底堅く推移している一方で、先般の銀行破綻など先行きの不透明感が残る状況であります。今後の米国経済、FRBによるこれまでの金融引き締め策の影響で、下押し圧力がかかることというのが想定されます。
金融引き締めの効果を見極めるためのFRBの利上げ停止というのは、一定程度、ドル高圧力を緩和させるものというふうに考えております。また逆にですね、日本銀行が金融政策を修正し、日本の長期金利が上昇すれば、日米金利差が縮小し、為替が円高に振れる可能性があるとも認識をしております。
経済面でございます。円高による日本経済の影響というのは、プラスとマイナスの二つの側面があると思っております。プラス面は、エネルギーや食料を初めとする輸入品価格の抑制でありますし、家計負担の軽減や企業の投入コストの減少に繋がっていく。一方、マイナス面は製造業を中心とする輸出産業の価格競争力の低下であります。サービス業の輸出に当たるインバウンドの需要も、円高が進行すれば伸び悩むリスクというのもあります。
そういうこともありましてですね、ちなみにみずほのシンクタンクのマクロモデルの試算によりますと、10円の円高が進むとですね、日本の実質GDPは0.2%程度押し下げられるという、こんなモデルもあります。
いずれにしましても、為替レートの急激な変動というのは、企業行動を慎重化させる要因になりますので、望ましくないということは確かです。引き続き、為替動向を含め、経済動向、ならびにお客様のビジネスへの影響を注視してまいりたいというふうに思っております。
2問目に移りたいというふうに考えております。顧客部門と市場部門とのバランスをどう考えるかということでありまして、一般論としてご回答させていただくということでございますが、銀行ビジネスというのは金融仲介機能やコンサルティングを通じて、お客様へのサービスを提供することで対価をいただくと、これが基本であるというふうに認識をしております。
一方でALM運営や余資運用などの市場部門の機能は、顧客部門のビジネスと密接に関係しており、どちらも重要であるということはいうまでもありません。また、債券ポートフォリオを中心とする市場部門の収益は、顧客部門における貸出ビジネスなどが不景気で低調なときの市場金利の低下を受けて好調である傾向がありますので、顧客ビジネスのヘッジ効果というのも期待できます。
景気の良し悪しによらずに銀行の財務収益を安定させるということは、我々銀行の役割である金融仲介機能を発展するために非常に重要だというふうに考えております。2022年度は外国債券を中心に債券投資には苦戦をしましたが、一方で貸し出しや非金利ビジネスは堅調で、顧客部門と市場部門の収益の分散効果は一定程度機能していたというふうに考えております。
また、各行の債券を含めた有価証券投資は厳格な流動性管理のもと、リスク量の上限や失敗限度などのリスク管理のフレームワークの中で適切に運営されているというふうに認識しております。加えて、仮に債券を初めとする有価証券投資の評価損が全て実現損となったとしても、日本の金融機関は十分な資本を有しており、リスク許容度を超えた状況には至っていないというふうに認識しています。
いずれにしましても、各行のビジネス戦略やリスク許容度を踏まえた上で、適切なリスク管理のもと、顧客部門と市場部門のリスクリターンのバランスを考えていくことが重要だというふうに考えております。
Q.生成AIが銀行界にもたらす変化への期待は。
生成AIですね。銀行界でもですね、これまでもAIOCRによる帳票の読み取りであるとか、AIスコアリングサービスなど様々な場面でAIを活用しております。一方、今おっしゃられた生成AIであると思うんですけれども、近年のAIの技術的進歩は非常に早くて、大きな話題にもなっているかというふうに思ってます。常に最新のAIの技術や規制動向を把握し、その活用方法を模索していくことが大事だというふうに考えてます。
例えば昨年11月に公表されたChatGPTにつきましては、生成された文章の自然さっていうのはですね、非常に驚かされました。今ではスマホのアプリでも利用可能になるなど急速に普及しておりまして、広く馴染みのあるAIチャットサービスになりつつあるということであります。
今後、ビジネスシーンでの生成AIの実用化の局面においては、ChatGPTのように、インターネット上の膨大な情報を学習する汎用型ではなくて、特定領域の専門知識や、個別企業の社内データについて学習する特化型、これが主力になっていくと考えております。
これによって生成AIがさらに精度高く、人間を補助してくれる存在になるのではないかとこんなふうに認識してます。銀行界においても、より中核的な業務、例えば、お客様への適切な運用提案であるとか、各種の取引申込の自動化から金融取引の不正検知、それに対する警告発信に至るまで、幅広い場面で活用されていくということが予想されております。
個別行の話になりますけど、みずほにおいても、稟議書であるとか、契約書の作成、社内での照会対応、金融に関するデータ収集。あらゆるシーンを想定し、対話型AI活用を検討しています。セキュティー面など安全に利用できる環境整備を進めながら、全社員が利用できるように準備を進めてまいります。
一方で、AIの活用においては様々な懸念点があります。例えば、機密情報の漏洩、誤った情報のまん延、プライバシー侵害や犯罪への利用、こういったことが挙げられます。こうした課題に対応するため、我が国においても、政府において5月よりAI戦略会議が開かれ、各論点についての議論が開始されていると理解をしております。
銀行界といたしまして、利活用のルール作りの動向をしっかりと踏まえながら、各会員行において適切にAIの活用を検討することが必要と考えております。これによって、お客様対応や金融サービスの高度化を通じて、更なる顧客満足度向上に努めてまいりたいと思います。
Q.決済手段としてのステーブルコイン等の受け止めは。
今年の6月に施行されている改正資金決済法ですね。今後我が国においてステーブルコインを発行する事業者の登場とか海外で発行されたステーブルコインが流通するということが想定されております。ステーブルコインを基盤とするブロックチェーンの上には様々な仕組みというのがありますが、ネットワークの信頼性であるとか、決済プロセスなどの円滑さなどから、法定通貨やデジタルマネーに比べて、発行体や利用者のメリットが向上する可能性はあるというふうに考えます。活用シーンといたしましては、まず限定的な領域でのメリットあるコイン。例えばですね、地域活性化の観点から特定の地域で利用できる固有のコイン、あるいはメタバース空間でのNFT売買等のスムーズな決済手段、こんなものが考えられるんじゃないかなというふうに思ってます。
今後ですね、ステーブルコインが広範囲な資金決済手段となるかどうか。こうした試行錯誤を通じて、利便性の高いユースケースが見出されるかどうか、これ次第じゃないかなというふうに考えています。他方、銀行はですね、長い歴史を通じて預金を中心とした決済サービスの改善・改良を行ってまいりました。その結果、広く世界に行き渡った安心・安全で利便性の高い決済インフラを構築するに至っております。また、デジタルマネーによるキャッシュレス決済手段、こちらもですね、スマホのメッセージサービス等を利用した手軽さ、あるいは実質的には銀行振り込みに劣らないネットワークが近年着実に普及しております。銀行界といたしましては、ステーブルコインのみならず、預金、キャッシュレスなどの既存の決済サービスについても、それぞれの特徴を踏まえ、利便性や安全性の向上に引き続き努めてまいりたいというふうに思っております。
Q.日銀の金融政策について現在の緩和策への評価は。
元々、金融政策でございますので、コメントについては個人の見解ということでお許しいただければと思います。副作用についてということでございますけど、まずは足元の消費者物価指数でございますが、ご案内の通り前年比2%を超える状態が続いているものの、輸入物価上昇の影響が大きく、いわゆるコストプッシュインフレ、輸出上昇を伴う物価目標の持続的・安定的な達成が見込まれる状況であると日本銀行が判断するに至ってないというふうに理解をしております。
そのため、今おっしゃられたようにですね、緩和的な金融政策が継続されているんじゃないかなというふうに我々も受けとめております。一方、昨年見られたように、海外金利の上昇などから円金利に強い上昇圧力がかかる局面においては、イールドカーブコントロールにより、円金利の上昇を抑えることで、イールドカーブがゆがむなどの債券市場の機能低下も生じております。
また、内外金利差の拡大による外国為替市場の値動きの不安定化も懸念されております。加えて金融界にとっては異次元金融緩和によりまして、資金収支および運用環境の悪化など、収益に相応のマイナスな影響があったということも事実であります。
今後、現状の異次元金融緩和が長引く場合は、これらのいわゆる副作用が金融機関および金融資本市場を通じ、実体経済に悪影響がおよぶ可能性というのも否定できないというふうに考えております。4月の決定会合におきまして、過去25年にわたる金融緩和政策の多角的レビューを今後1年から1年半にかけて実施する旨、公表されております。
日本銀行におかれましては、金融緩和の効果と副作用のバランスを見ながらレビュー結果が出る前であっても、必要な金融政策修正は実行されるものと理解しております。市場との円滑なコミュニケーションと適切な金融政策運営がなされることを期待しております。
Q.振込手数料の引き上げについての受け止めと、賃上げの状況と今後の見通しについて。
手数料の件でございますが、手数料の設定というのはまさに個別行の戦略、経営判断でありまして、会長としてのコメントはちょっと差し控えさせていただいて一般論でお話させていただきますけれども、手数料設定の基本的な考えというのは、三つありましてですね。一つは顧客にとってのサービスの価値、二つ目が競争環境、三つ目が基本的なコスト、必要なコスト。これを踏まえて価格決定されるものだということであります。
その商品であるとかサービスがお客様にとってどれだけ大切なものか、お役に立っているか、あるいは他の銀行や事業者が同等のサービスを提供できるかどうか、こういったところを含め、価値は決まってまいります。また、提供する商品やサービス自体が不変であっても、例えばデジタル技術の進展であるとか、社会全体としての働き手不足の進展といった、コスト構造に影響しうる環境変化によってその価値は変わります。
これらを踏まえてどのような手数料設定をするかというのは、まさに個別行の事業戦略そのものでありまして。例えばですね、ペーパーレス化とか電子化を推進すると、これによって社会全体としての業務効率化を図ると、こんな観点で例えばその紙の手続きに関わる手数料を引き上げて、電子的な取り組みから手数料を引き下げる。こういった対策もですね、戦略上取り得る選択肢の一つだというふうに考えております。いずれにしましてもこういったところはですね、戦略の個別判断に基づくものではないかなと。こんなふうに判断をしております。
2点目は今後の賃上げの状況や先行きでございますね。まず失業率でございますが、新型コロナ感染が急拡大した2020年に一時3%を超えておりますが、足元では2%台後半で推移をしております。コロナ禍で打撃を受けていた外食・旅行・娯楽等の需要が正常化に向かう中で、雇用者数というのは穏やかに増加しておりまして、ご案内の通り人不足感というのが今強まりつつあります。
当面はこうした対人サービス部の雇用増が見込まれる、それ以外にですね、中長期的には人口減少あるいは高齢化により労働需要が逼迫する中、デジタル化を背景に特に医療福祉であるとか情報・通信業などの業種で、労働需要の増加が予想される状況だと認識しております。賃金についてはですね、人手不足や物価高を背景に、穏やかに上昇しておりますが、物価の上昇には追いついていないということであります。今後の賃金というのは、2023年の春闘賃上げ率は3%台後半と聞いておりますけども、例年を大きく上回る結果になることを受けて、次第に伸び率を高めていくというふうに見ております。
ただですね、やはり中小企業、こちらはですね、なかなかコスト上昇の影響で収益が圧迫されており、賃上げ余力というのが十分でない企業が多いと認識しております。持続的な賃金上昇のためには、中小企業を含む企業の収益改善、成長力の強化が不可欠というふうに考えております。
他方、個人消費、ちょっとこれに触れさせていただきたいと思いますが、穏やかに回復をしております。コロナ禍で大きく減少していた外食・旅行などの対人接触を伴うサービス消費、こちらが全国旅行支援などの政策効果もあって持ち直しており、消費の回復をけん引しております。
春闘賃上げ率が高まったこと、5月に新型コロナ感染症の分類が変更されたことに加え、夏のボーナスの増加も予想されることですから、引き続きサービス消費を中心とする回復が期待されております。持続的な賃金上昇や個人消費の強まり、企業の業績向上に繋がる循環、好循環を期待をしております。
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