【M&A 地銀の選択】(3)専門人材で丸投げ防止を
2024.11.28 04:45
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顧客とのリレーションを通じてM&A(合併・買収)案件を発掘した後に、提携する仲介事業者をそのまま紹介してしまう地域金融機関は少なくない。金融機関の担当者が細部まで把握せず、「業者に丸投げすれば不測の事態を招いてしまう」(神奈川県内金融機関)危うさがある。内製化だけでなく、仲介事業者との連携効果を上げるためにも専門人材の育成と確保が欠かせない。
育成の起点となるのは外部機関への出向だ。中国銀行はコンサルティング営業部内にM&A担当者を10人配置。外部のコンサルティング会社への出向を継続的に活用してスキルアップに努める。岡山県の医師不足による医療機関の統廃合加速を見据えて医療・介護業の支援にも注力。10人のうち2人が同業種の担当として活動する。
横浜銀行は2年前にM&A専門部署「企業情報グループ」の活動体制を変更。担当者1人で案件発掘から成約までの全過程を担うのではなく、実動部隊のうち、2人を案件発掘、3人を外部連携・マッチング、7人を成約までの手続きをサポートする実務担当に分ける「分業制」に移行し、専門性を高めることに成功。体制変更後、受託件数は10%増えた。
専門スキルを身に付けるため、行員を外部出向させる銀行は多いが、有効性を疑問視する声もある。地方銀行から常に数人の出向者を受け入れている経営コンサルタント会社の幹部社員は「出向者自身の目的がないままに当社に来るケースが増えている」と話す。公募制で行員を選んだとしても、人事部などが「どのようなスキルを身に付けてほしいのか」を明示して送り出すことが重要だ。
外部出向で専門性を高めた行員やスカウトした転職人材が処遇や業務内容に不満を持ち、流出してしまう事例も散見される。一部の大手地銀では「プロフェッショナル枠」などとして、一定の実績を上げた行員を専門人材と認め、人事異動の制限や一般の行員と異なる評価・給与体系を認めている。仲介事業者との連携においても、専門性でそん色ない人材を配置しておくことが地銀のM&A支援業務における最低条件と言える。
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