【M&A 地銀の選択】(2)企業襲う悪質な買収
2024.11.21 04:45第1回はこちら
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今年、M&A仲介業界を揺るがす事件が、相次いで明るみに出た。悪質な買い手が、経営者の個人保証を外さず、企業の資産を抜き取る手口だ。
東京都中小企業活性化協議会にも、年商5億円ほどの建設会社の元経営者から相談が寄せられた。後継者不在のため仲介業者を頼り、ある投資会社に株式を譲渡したところ、ほどなくして、手放した会社が取引先への支払いを滞納していると知る。投資会社から派遣された代表者は音信不通。会社の資産は大幅に減り、経営者保証は外されておらず、決算の粉飾も発覚した。返せるはずだった借入金の返済も不可能に。仲介業者を紹介したのは、都内の信用金庫だった。
仲介業界は対策に乗り出した。M&A仲介協会(2025年1月にM&A支援機関協会へ名称変更)は、資格制度の創設や仲介手数料の透明化などを通じて悪質な事業者の撲滅を目指す。一部同業者からは実効性について冷ややかな声もあがるが、同協会の荒井邦彦代表理事は「疑問の声があるからといって、指をくわえているわけにはいかない」と強い姿勢を示す。
現在、M&A関連業者を縛る業法はなく、協会の自主規制や中小企業庁のガイドライン頼みなのが実情だ。同庁は、法整備は「時期尚早」との立場。事業環境部の伊藤尚志課長補佐は「現在は健全化している段階。承継ニーズがあるなかで、法というブレーキを踏むことが公益に資するのか」と話す。
M&A仲介に臨む金融界の動きに対し、金融庁の担当者は「M&Aは事業者支援の一つ」としたうえで「どこまで踏み込むか判断し、内容に比例して能力を高めてほしい」と求める。仲介業務は高度な知識が要求される。M&Aトラブルに詳しいシャローム綜合法律事務所の中川内峰幸弁護士は「専門的な知識が担保されるのか」と地銀の進出に疑問を呈する。一方、「価格面などで業界の健全な発展に資するかもしれない」とも期待。荒井氏も「手数料や品質面で競争を促す」と前向きな見方を示す。
金融機関は業界のゲームチェンジャーになり得るか。取引先を悪質な買収に巻き込むのは許されない。
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