手形・小切手の完全電子化まで2年切る 中国地区地銀・第二地銀、代替手段の案内強める

2025.06.01 04:50
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手形・小切手の電子化を知らせるニュースリリースやチラシ
手形・小切手の電子化を知らせるニュースリリースやチラシ

金融界が手形・小切手機能の全面電子化に向けて取り組むなか、期限とする2026年度末まで2年を切った。業界を挙げて活動してきたが、手形・小切手の年間交換枚数は24年時点で1967万枚だった。電子化への切り替えが進まない「岩盤先」と呼ばれる企業も存在し、24年の年間削減枚数は目標値822万枚に対し、6割となる501万枚にとどまった。金融機関は取引先企業へ訪問やダイレクトメール(DM)を重ねて周知を急ぐとともに、代替手段の案内を強める。手形・小切手の削減に向けた中国地区の動きを取材した。


IB手数料無料

鳥取銀行は5月23日、手形・小切手の代替手段として、法人インターネットバンキング(IB)月額手数料とでんさいネットサービス利用手数料を6月から26年3月末まで無料とすることを発表した。対象は、期間中に新規で利用を申し込んだ法人、個人の事業主。


他方、手形・小切手の発行は26年5月29日に終える。他行振り出しの手形・小切手の入金は同年9月末に終了し、手形・小切手の最終振出期限は同日に設定した。


山陰合同銀行は4月、同様の措置を講じることを公表した。担当者はメガバンクの動きを受けて検討してきたことを明かし、「(26年9月末までの)周知期間を1年半程度設け、顧客が対応できる時間を十分に確保した」という。


顧客同士の対話が本格化

金融界は今後2年で電子交換所における手形・小切手の交換枚数をゼロにするため、毎年1000万枚弱のペースで削減する必要がある。ただ現状の取り組み度合いでは「目標の達成は困難」(全国銀行協会)との見方だ。全銀協は抜本的な対策として、27年度初めから電子交換所における手形・小切手の交換廃止を決めた。「期限まで待ったなし」(銀行関係者)の状況になった。



これを受けて、企業側の動きも活発になりそうだ。広島銀行は「顧客同士で決済手段の変更に向けた対話が本格化する」とみて、代替手段の利用環境がない顧客に法人IBやでんさいサービスの案内を強化する。山口フィナンシャルグループ傘下の3行(山口、北九州、もみじ)も、こうしたサービスの未契約先を抽出し、営業店による訪問やDMを重ねる方針だ。


中国銀行は「非競争領域」と位置づけ、岡山県内金融機関と成功事例や課題を共有している。金融機関が連携することで、地元企業への周知や理解が進む効果がある。山陰地区や山口県内でも同様の活動が展開される見通し。


「(手形・小切手の問題に関して)当局がピリピリしている」。中国地区の銀行関係者が状況を明かす。全国的に取り組みが遅れている背景には、企業側の理解が不十分なことも一因だ。建設や製造業、繊維業など各業界内で説明会などが実施されており、改善が期待される。別の地銀関係者は「他の金融機関に先駆ける内容ではなく、歩調を合わせることが大切」とし、取り組みが今後加速する見方を示した。


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