日銀総裁、〝2%目標〟への芽「育ち続けている」 段階的利上げ姿勢継続
2025.06.03 19:28
日本銀行の植田和男総裁は6月3日、金融政策運営で重要視する基調的な物価上昇率について、「2%(物価安定目標達成)に向けて高まっていく」との見方を改めて示し、段階的な利上げ姿勢を訴えた。東京都内で開いた「内外情勢調査会」の講演で語った。
植田総裁は講演で、日銀が掲げる物価目標水準に向けて高まる基調的物価の姿を植物の成長に例え、「2%の達成に向けた『芽』は育ち続けている」と形容した。半面、世界経済を取り巻く米トランプ関税の影響については、「我々(日銀)の事前の想定を上回るインパクトを及ぼしている」との現状認識を述べた。そのうえで、「各国の通商政策を巡る不確実性は高い状況が続く」とし、様々な統計データやヒアリング情報を予断を持たず「丁寧に確認する」姿勢を繰り返し表した。
今後の政策運営や利上げ判断に関わる先行きのリスクでは、IT関連などで顕著な生産ネットワークの複雑性や、欧米比で安定・定着性に劣る企業の賃金・価格設定行動を挙げ、5月1日に予測値を下方修正した展望レポート(経済・物価情勢の展望)に触れつつ、「(同レポートの)前提が崩れれば、先行きの見通しは上下双方向に大きく変化する可能性がある」と留意点を述べた。
一方、国内経済の底堅さも強調。米関税下、歴史的高水準が続く企業収益が賃上げ原資の〝バッファー〟に作用することや、雇用全体に占める比重が大きく貿易環境の影響を受けにくい非製造業の堅調さが「(国内の)経済活動を下支えする」との考えを訴えた。
今後の金融政策運営では、展望レポートで示した中心的な見通しに沿って、基調的な物価上昇率が物価安定目標である2%に向けて高まっていく姿が実現していくとすれば、「引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになる」と考えを示した。
次回(6月16、17日)の金融政策決定会合で「中間評価」する国債購入減額計画にも言及。前日(2日)に日銀が公表した債券市場参加者会合(5月20、21日開催)の「議事要旨」に触れ、「(日銀保有国債残高の削減などで)市場の機能度を一段と高める努力を続けることが重要」や「国債の買い入れ額を減らしていくことが適切」といった会合の多数意見を抽出して説明。ただ、具体的な減額ペースについては「様々な意見があった」と明言を避けた。
講演後の質疑では、米関税政策を受けた足元の状況について、米中双方で課していた追加関税の大幅引き下げを「前向きの動き」としながら、展望レポートを公表した5月初旬と「大きな構図に変化はない」との認識を述べた。
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