日銀、不動産価格高騰を注視 増勢融資に〝市況変動リスク〟
2025.10.23 20:21
日本銀行は、都市部を中心に伸びが目立つ不動産価格への視線を強めている。オフィスやマンション価格の上昇ペースが加速する一方、銀行や信用金庫の融資構成は市況の動きに左右されやすい内容にシフトしつつあり、 金融システム全体への波及リスクを念頭にモニタリングを強化する構え。10月23日に公表した金融システムレポートで明らかにした。
商業用不動産は割高感が強まる。東京エリアの取引価格は10年前の約2倍、地価も7割上昇。キャップレート(還元利回り)から無リスク資産(10年国債)の利回りを差し引いた「不動産イールドギャップ(東京)」は、ニューヨークやシンガポール、香港を上回っていた2010年代の3%水準から下がり続け、足元では1%を割り込む。
海外勢の存在感も高まる。海外投資家による商業用不動産の年間取得額は2兆円を超え、総額約6兆5000億円の取引全体を押し上げる。
運用資産としての需要も価格上昇に寄与。利用目的別の大規模土地取引件数では、「資産保有・転売目的」が直近(25年5月)で年間約3000件と、2000件を下回っていた21年頃から増加。「販売目的」を上回り、ミニバブル期(2000年代半ば)を超す水準に達し、価格の上昇要因となっている。
増勢の続く金融機関の不動産関連融資は内訳が変化。銀行・信用金庫の貸出全体に占める不動産関連貸出は、09年度の38%から足元(24年度末)には43%に上昇。「不動産ファンド」「不動産業」向けが増える一方、主にアパートローンを対象とする「個人の貸家業向け」は縮小。市況変動の影響を一段と受けやすい与信構造に移っている。
日銀金融機構局は、「金利上昇の影響が警戒されるなか、既存物件を売却する動きもみられる」と指摘。「市場参加者の投資スタンスが急変することがないか、今後も注意深く見ていく必要がある」との見方を示した。