日銀・高田委員、国内物価「上振れるリスク」 米インフレ再加速警戒
2025.02.19 13:51
日本銀行の高田創審議委員は2月19日、仙台市内での講演で米国のインフレ再加速などを警戒し、「国内物価が上振れるリスクに留意する必要がある」と訴えた。都市部を中心に高騰が続く不動産など資産価格への視線も強め、金融が過熱するリスクの顕在化を防ぐ観点と合わせ、段階的な利上げの必要性を繰り返し強調した。
高田委員は米経済の堅調さを指摘。1月下旬に発足したトランプ米新政権に対するマーケットの受け止めを踏まえつつ、「米国の雇用や物価動向が一段と上振れる可能性や、その国際金融市場への影響も念頭に置く必要がある」と指摘。日本経済への影響についても「(経済)回復のモメンタム(勢い)が強まる可能性がある」と見通した。
持続・安定的な物価上昇に向け、日銀が重要視する2025年春季労使交渉(春闘)動向については、人件費を含む価格転嫁の進展に触れながら「昨年(24年)に続くしっかりとした水準を期待している」と前向きに展望した。
バブル化の指摘が強まる不動産などの価格上昇にも触れ、「過度な緩和継続期待が醸成され、物価上振れリスクや金融の過熱リスクが顕在化しないよう、1月に実施した追加利上げ以降も、ギアシフトを段階的に行っていく視点も重要」と自身の政策スタンスを語った。
政策運営の柔軟性に関しても、堅調な米経済を背景としたFRB(米連邦準備制度理事会)の利下げ休止観測を念頭に、政策金利の動きが日米で〝逆行〟するリスクの後退に言及。日銀の再利上げによって為替市場などが大きく変動する懸念が薄れ、「(日銀の)政策の自由度が増した」との認識を述べた。
一方、ターミナルレート(政策金利の最終到達点)の目安とされる中立金利の水準感に対しては「推定は困難」とし、「中央銀行が一定の中立金利の水準を示すことは、市場でフォワード・ガイダンス(先行きの政策運営の指針)のように捉えられる可能性がある」と明言を避けた。
講演後の会見で高田委員は、上昇ペースが速まる足元の長期金利の動きについて、24年3月のイールドカーブ・コントロール(長短金利操作)撤廃に触れながら、「先行きに対する経済・物価に対する見通しを普通に反映したもの」との見方を示した。期待インフレ率を加味した実質ベースでの金利水準が上昇している点に関しても「(中立的な水準からの)幅はある」として、緩和環境の継続を語った。
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