日銀、増審議委員が就任 利上げ判断「日米交渉よく見てから」

2025.07.01 19:59
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就任会見で自身の政策スタンスについて語る増委員(7月1日、日銀本店)
就任会見で自身の政策スタンスについて語る増委員(7月1日、日銀本店)

内閣は7月1日付で、日本銀行の政策委員会審議委員に元三菱商事常務の増一行氏(66)を任命した。産業界出身で前日の6月30日に任期満了により退任した中村豊明・審議委員の後任。


増委員は1日午後の就任会見で、2%を超すインフレ水準が続く足元の物価動向に関し、原材料・エネルギーやコメ価格の上昇を念頭に置きつつ、「基調的な物価上昇率は2%目標に達していない」という日銀の公式的な見解に「違和感を持っていない」との所感を示した。


また、現状の政策金利(0.5%)の水準感に対しては、米トランプ関税政策などによって不透明感の増す経済情勢を受け、「実質金利が(かなりの)マイナスだからといって、(利上げを)急いで良いとはいえなくなっている」との認識を語り、「執行部などの話をよく聞き、これから慎重に考えていきたい」との政策判断姿勢を表した。


就任当日朝に公表された6月短観(全国企業短期経済観測調査)については、「しっかりした数字が出ていた。悲観論が減っている」との印象を述べる一方、「(日米間の関税)交渉はまだまだ終わっていない。絶対に見守っていかないといけない」とし、「ここ(日米交渉)をよく見てからでないと判断できないという日銀のスタンスに違和感を思うところはない」と主張した。


大規模金融緩和下に買い入れたETF(上場投資信託)の対応では、「(日銀が大量保有する)今の状態がいいということは誰も思っていない」との考えを訴えた。半面、株式市場へのインパクトなどを踏まえ「すごく時間を掛け、極めて慎重にやっていくことが企業(の視点)として望ましく、(金融政策当局者である)日銀としても、そうやる必要がある」との姿勢を強調した。


日銀政策委員の任命を受けたことについては、「職業人生の最終盤でこのようにえらい重責が来るとは思わなかった」と率直な感想を語った。 


増 一行(ます かずゆき) 大阪府出身、66歳。82年東大卒、三菱商事入社、業務改革・内部統制推進部長、コーポレート部門管理部長、生活産業グループ管理部長を経て13年4月執行役員主計部長、16年4月常務執行役員CFO、同年6月代表取締役 常務執行役員CFO、22年6月 三菱商事退任、同年7月日本公認会計士協会理事、9月EY Japanシニアエグゼクティブアドバイザー、24年6月日立Astemo取締役監査等委員、同年9月国立大学法人東京藝術大学監事。

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