苦情に学べ 風評意識したカスハラ対応を
2025.01.11 04:10
「苦情等」に係る2024年の大きな動きの一つがカスタマーハラスメント(カスハラ)ではないだろうか。その動きは皆さんが思っているよりも早く、26年までには企業として法対応を行わなければならないとも言われている。
24年12月、厚生労働省の労働政策審議会に提出された報告書案(表)のなかに、カスハラへの企業の対策を義務化するとの内容が盛り込まれた。
報告書案では、「(1)顧客や取引先、施設利用者らが行う(2)言動が社会通念上相当な範囲を超える(3)就業環境が害される」この3要素を充足するものをカスハラと定義した。
あわせて、カスハラから従業員を守るための具体的対策として、対応方針を打ち出し、その対応を明確にするとともに被害に遭遇した従業員などに適切な体制整備を行うこともその内容に盛り込まれた。
こうしたことを踏まえると、金融機関、特に地域金融機関にとってカスハラへの対応は喫緊の課題となってきている。
では実態はどうであろうか。
カスハラに係る対応方針を打ち出す地域金融機関は徐々にではあるが増加傾向にある。しかし、体制についてはいまだに従来の「苦情等」と同じ対応でその体制が十分でない地域金融機関が圧倒的である。
この報告書では「正当なクレームはカスハラではない」とも述べられている。現状の体制、人員でカスハラと正当なクレームを区別できるだろうか。
金融機関側の従業員の訴えのみをもってカスハラと判断することは非常に危険である。正当な苦情や顧客の善意によるクレームまでもカスハラとして処理してしまうと、せっかくの改善の機会を失うことにもなりかねない。
また、顧客の側からすれば正当な苦情を伝えているのに、カスハラだと金融機関に判断されれば場合によっては、SNSなどで正当性を訴え、顧客にとって金機機関の不当な対応を広く流布されるリスクもある。
SNSの影響は絶大であり、事例は異なるが某金融機関の不祥事件では、SNSにおける批判(影響)が収まらないためトップによる記者会見を早めたといった報道もなされている。
金融機関、特に地域金融機関の経営陣は法的対応といった点からも、これまで以上にカスハラ対策に真剣に取り組まなければならないであろう。
金融監査コンプライアンス研究所代表取締役 宇佐美 豊
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