苦情に学べ カスハラ対応を真剣に考えよ
2024.10.05 04:10
本紙7月5日号で「カスタマーハラスメント(カスハラ)」を取り上げた。現在、カスハラに係る対応の一環として多くの企業、団体などが「カスハラへの対応方針」といったものを打ち出し、その対応を実践し始めている。
では金融機関、とりわけ預金等取扱金融機関の現状はどうであろうか。多くの銀行では、こうした基本方針を打ち出し、また、ホームページ(HP)にも記載している。
一方、協同組織金融機関はどうか。一部、例えば尼崎信用金庫や協栄信用組合は既にカスハラへの対応方針をHPに掲載しているが、多くはいまだ公表するに至っていないようである。
実際、カスハラに関する条例制定で話題になった東京都に本店を構える協同組織金融機関(信用金庫・信用組合の計42機関、9月現在)を調べると、こうした対応方針を公表しているところは、なんと3金融機関だけであった。
カスハラ対応の一つとして、こうした対応方針を組織の内外に示すことが重要であるといわれている。
特に、組織内で働く職員にこうした方針を明確に打ち出すことで「自分がカスハラを受けた場合、組織としてちゃんと守ってくれる」といった安心を持てる点が大きいとされている。
今後、多くの金融機関がその方針を打ち出していくだろうが、気になる点もある。カスハラに係る管理態勢について、その役目をコンプライアンス統括部門が担当していることである。
これまでの「苦情等」「金融ADR(裁判外紛争解決)制度」の観点から、カスハラもその延長線上で捉えていると考えているのであろう。しかし、カスハラは職員のメンタル面の問題が大きいため、ある意味、労務管理的側面の方が大きいのではないか。そう考えれば、これまでの「苦情等」の対応部署ではなく、人事部門なども対応する必要があると考えられる。
今後もカスハラは増加すると思われる。対応方針だけではなく、今後どういった管理態勢とすべきか経営陣は真剣に考えるべきである。
金融監査コンプライアンス研究所代表取締役 宇佐美 豊
【対応方針公表金融機関の関連記事】
・めぶきFG、対カスハラ方針を制定 傘下各社に手引書・窓口
・愛媛銀、「カスハラ」対応方針制定 行員の就業環境を守る
・大分銀、「カスハラ」対応方針策定 悪質な場合は通報も
関連キーワード
おすすめ
アクセスランキング(過去1週間)
- 中堅の外資生保、乗合代理店からの要求に苦慮 変額保険手数料で
- 地域金融機関、半数の250機関が預金減 金利戻りパイ奪い合い
- 八十二銀、AIモデル開発50種に 投信販売モニタリングも
- 広島銀、金利再来でALM改革 各部門の収益責任 明確に
- 多摩信金、住宅ローン168億円増 業者紹介案件が4割強
- 金融庁・警察庁、URL貼付禁止案を軟化 銀行界から反発受け 不正アクセス防止で
- 横浜銀や静岡銀など20行庫、生成AIの実装拡大へ 検証結果・最善策を共有
- カムチャツカ半島付近でM8.7の地震 一部金融機関の店舗で臨時休業
- 金融庁、障害対応の強化要求 クラウド利用拡大で
- あおぞら銀の中野さん、金融IT検定で最高点 専門部門との対話円滑に