【M&A 地銀の選択】(1)内製化 それでも危機感
2024.11.14 04:45
「お客さまのベストパートナーが、取引先のなかから見つかるとは限らない」。FFGサクセション代表取締役の原田亮氏は設立の背景をこう語る。2年半前、ふくおかフィナンシャルグループが地銀他行に先駆けて事業承継・M&A(合併・買収)の専業会社として立ち上げたのが同社だ。「取引先同士でマッチングする銀行のM&Aは敬遠されてしまう」。内製化による危機意識が出発点だった。
「社長が描く理想の企業像を聞かせてください」。このような問い掛けを幾度となく繰り返し、ようやく事業承継の話につながる。従業員の雇用やオーナーシップ、企業によって守りたいものはさまざまだ。ニーズを深く掘り下げるため、同社では買い手または売り手どちらかに付くFA(ファイナンシャル・アドバイザー)にこだわる。
肥後銀行は4月、日本M&Aセンターホールディングスなどと九州M&Aアドバイザーズを福岡市に立ち上げた。お金を借りている銀行に弱みを見せることになる企業の”売り”情報は集まりにくい。仲介ビジネスとして「最適な相手を紹介するには、熊本県内の情報だけでは限界を感じていた」(米本明弘代表取締役)。売り上げ規模やオーナー年齢をもとに、純新規先へテレアポ、ダイレクトメールを展開。半年で面談件数は500先を超え、買い手ニーズに合った売却案件の発掘に手応えを得ている。
後継者不足が深刻化するなか、中小企業のM&A件数は増えている。国が設置する「事業承継・引継ぎ支援センター」でのM&A成約件数は、2023年度に2023件と過去最高だった。円滑な事業承継(売り手)と事業の成長(買い手)を仲介する効果に疑いの余地はない。
一方で不芳仲介業者の問題も表面化しており、取引先企業と〝仲介成立〟といった一過性の関係にとどまらない中長期のリレーションがある地域金融機関への期待は大きい。それだけに情報伝達や売買価格を巡る利益相反、金融業が内包する「優越的地位の乱用」防止など高いコンプライアンス意識が求められる。金融界のM&A支援ビジネスの現状と課題をシリーズで探る。
【地銀・M&Aの関連記事】
・・山梨中央銀、事業承継 一気通貫で M&A前の情報収集強化
・宮崎銀、M&A相談3500件 サポート内製化を実現
・山陰合同銀、M&Aシニアエキスパート65拠点に配置 支店長ら70人が資格取得
・荘内銀と鶴岡信金、M&A業務で連携 地域内マッチング注力
おすすめ
アクセスランキング(過去1週間)
- 中堅の外資生保、乗合代理店からの要求に苦慮 変額保険手数料で
- 地域金融機関、半数の250機関が預金減 金利戻りパイ奪い合い
- 八十二銀、AIモデル開発50種に 投信販売モニタリングも
- 広島銀、金利再来でALM改革 各部門の収益責任 明確に
- 多摩信金、住宅ローン168億円増 業者紹介案件が4割強
- 金融庁・警察庁、URL貼付禁止案を軟化 銀行界から反発受け 不正アクセス防止で
- 横浜銀や静岡銀など20行庫、生成AIの実装拡大へ 検証結果・最善策を共有
- カムチャツカ半島付近でM8.7の地震 一部金融機関の店舗で臨時休業
- 金融庁、障害対応の強化要求 クラウド利用拡大で
- あおぞら銀の中野さん、金融IT検定で最高点 専門部門との対話円滑に