地域銀、総還元性向50%迫る 〝身の丈〟以上に懸念
2024.09.04 04:50
地域銀行が株主還元を手厚くしている。日本銀行の調査によると、当期純利益に占める株主還元額の割合を示す「総還元性向」は直近の2023年度で47.7%と、30%台前半だった5年前(18年度)から10ポイントを超す上昇となった。配当額の引き上げに加え、近年はROE(自己資本利益率)改善などを目的とした自社株買いも積極化。日銀は、収益力や経営体力に見合った株主還元を促している。
東京証券取引所が「資本コストや株価を意識した経営の実現」を要請していることや存在感の高まるアクティビスト(物言う株主)からの要求などを背景に、上場地域銀の資本政策は転換。資本・投資効率を示す経営指標や自行の株価に目を向けつつ、株主還元を一段と重視した経営が広がっている。
地域銀の配当額は23年度に3230億円となり、5年前から1000億円増加。配当性向も同期間に5ポイント以上高まり32%に達した。
自己株式の取得も目立つ。新型コロナショック後の21年度から増え始め、23年度には1469億円とコロナ前の水準に比べて2.5倍に膨らんだ。総還元性向は50%に迫り、10年度以降で最高となった。
日銀は、金融仲介機能を持続する観点から、身の丈に合わない株主還元策に目を光らせる。
ROEの「下位先」は、増配など株主への分配姿勢を前面に出して市場の評価改善を狙う傾向にあり、配当性向が「上位先」に比べて高くなりがち。足元では自社株買いを通じて〝分母〟となる自己資本を減らし、ROEを引き上げるケースもみられる。
地域金融機関のビジネスモデル維持・変革へ、資本政策における適切な収益配分の重要度は増している。日銀は考査などを通じ、先行きの収益力や経営体力に懸念のある先の経営陣との対話を深める構え。
※この記事は2024/10/15にfree記事に変更しました。
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