金融界、「物流24年問題」解決へ 三井住友信託銀は上流支援
2024.05.10 04:40
4月からトラック運転者に時間外労働の上限規制が適用され、人手不足が深刻化する運送・物流業界。三井住友信託銀行は荷主企業を中心に幅広い業種で中長期の物流戦略の策定支援などに注力する。2024年度には物流コンサルティングの累計実績100件を目指す。地域金融機関ではスタートアップと連携し、運送会社向け支援策を拡充する動きが広がっている。
三井住友信託銀は情報開発部内の物流ソリューションチーム(7人体制)が課題解決に奔走する。現場視察や面談による現状評価をしたうえで各社の課題に沿った対策を練る。大手食品メーカーの物流戦略・ロードマップの策定や印刷会社の物流・管理体制の見直しなどの支援実績がある。

輸送業務は「多重下請け構造」になりやすく、荷主が実運送会社の実態を把握できていないケースも多い。「見える化」のためにトラック運転手へのアンケートなども手掛ける。
同行の清水統文理事は、24年問題に対応して先手を打つ企業は「一部にとどまる。問題が表面化してからでは遅い」と危機感を募らせる。
地域金融機関では運転手の健康・労務管理システムを提供する「enstem(エンステム、東京都)」と連携し、運送会社などを支援。同社の提携先は北海道銀行や北陸銀行、大垣西濃信用金庫など10機関に達する見込みで、金融機関からの顧客紹介による案件獲得数は100件を超える。
同社が提供する運転手向けサービスはスマートウォッチを活用し、脈拍や血圧などをリアルタイムでモニタリング。人工知能(AI)で運転中の危険な兆候を検知することで、ドライバーや管理者に通知をする。
管理者は労務関連データを専用サイトで確認できる。今後、業界再編の加速が想定されており、山本寛大社長は「収集したデータはM&A(合併・買収)時の労務のデューデリジェンスで役に立つ」と強調する。
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