日銀、2%達成 依然「見通せず」 大規模緩和を維持
2023.09.22 19:20
日本銀行は9月21、22日に開いた金融政策決定会合で、大規模金融緩和策を維持した。前回の同会合(7月)で運用を柔軟化したイールドカーブ・コントロール(YCC)も、長期金利の「許容変動幅」や「実質的な上限」に関して「全員一致」での据え置きを決めた。
植田和男総裁は22日15時半からの記者会見で、「粘り強く金融緩和を継続し、賃金上昇を伴う形で2%の物価安定目標を持続的、安定的に実現することを目指していく」と、これまでの政策スタンスを踏襲。2%目標達成については、「見通せる状況には至っておらず、不確実性も高い」と、依然として距離があることを訴えた。
ただ、賃上げ動向を左右する企業収益の現状については、「おおむね、好調」と判断し、「来年の賃金に向けて良い材料」と会合での議論に触れた。
前回の会合で決めたYCC運用見直しの効果は、「表れているか、いないかをみるには時期尚早」とし、さらなる政策修正時期に関しても「決め打ちはできない」と言及を避けた。
家計負担につながる固定型住宅ローンの金利上昇については、長期金利の高まりに伴って上がることを「当然の現象」とし、現時点での上昇幅や、変動型に対して低い固定型の契約比率から「マクロ的な影響は限定的」との見方を示した。
国内景気は「緩やかに回復している」と指摘。先行きも、海外経済の回復ペース鈍化によって下押し圧力が当面続くものの、「ペントアップ(繰り越し)需要の顕在化などに支えられて、緩やかな回復を続ける」と見通した。
明治安田総合研究所の小玉祐一氏は「足元や先行きの物価に対する見方が政策委員間で割れてきている印象。インフレ率が高止まるなか、2%目標達成への距離感や異次元緩和の必要性に対する認識の差が広がり、物価高対策を進める政府の考えもより反映されていく」と分析する。
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