大和証券発ベンチャー・相原社長に聞く(上)「トークンが行き交う世界」当たり前に

2023.05.31 04:50
ブロックチェーン 暗号資産
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目まぐるしいスピードで変化する暗号資産やブロックチェーンなどのWeb3の世界ーー。大和証券グループ本社子会社「Fintertech(フィンターテック)」の相原一也社長(42)は「Web3と向き合わざるを得ない状況が来ると確信している」と展望する。4月に大和証券グループ国内最年少の社長に就任した相原氏に今後の事業展開やWeb3の可能性について聞いた。


ーー2018年のフィンターテック設立時から参画し、4月に前社長の武田誠氏(現大和総研常務執行役員)からバトンを引き継いだ。就任の抱負は。


「フィンターテックは大和証券グループ本社とクレディセゾンの合弁会社で、今(23)年で6年目に入る。4つの事業(デジタルアセット担保ローン、投げ銭サービス、不動産投資プライムローン、貸付型クラウドファンディング)を行っており、グロース期に入ってきた。既存の金融機関にできなかった新たな金融をテクノロジーの力でより一層進めていきたい」


「特に意識しているのはWeb3。これからWeb3の影響を受けない事業は、かなり限られてくるのではないか。早くからその分野に乗り出し、パイオニアを目指す。お客様に新たな価値を提供していきたい」


5年後にもWeb3がインフラに


ーー次の5年間に向けたビジョンは。


「5年後の28年ごろにはWeb3がインフラとしてかなり確立できていると思う。当たり前のように、デジタルウォレットを持ち、トークンが行き交っている世界が来るはず。短期的に見ればあまり変化は感じられないかもしれないが、数年単位の視点では大きな違いが出てくる。その変化を先取りしたい」


「金融機関として、金融サービスに必要なものを取りそろえていく。一つは暗号資産担保ローンで、さらにデジタルアセットファイナンスを総合的に手がけていきたい。イーサリアムは4月の大型アップグレードにより、一定期間保有することで得られる『ステーキング報酬』が取り出せるようになった。これは債券投資と同じようなもので有望だと思っている。そういう新たな投資先へのアクセス手段を提供できるよう準備を進めている」


ーーWeb3はどのように社会に浸透するか。


「例えば、NFT(非代替性トークン)ゲーム『STEPN(ステップン)※』をプレイする人は、実は暗号資産ウォレットを持っている。6月には改正資金決済法が施行され、ステーブルコインの流通が解禁される。いろいろなユースケースがけん引し、気づいたら多くの人がデジタルウォレットを持っていることになる」


※STEPN(ステップン)=専用のスニーカーを履き、散歩やランニングすると暗号資産が得られるNFTゲーム。登録ユーザーは全世界で470万人以上いる。


ブロックチェーンに魅せられる


ーー大和総研時代の調査活動で出会ったビットコインがキャリアの転機となったが、暗号資産やブロックチェーンのどこに魅力を感じたのか。


「最初の体験を明確に覚えている。口座開設せずにウォレットアプリを入れただけでお金を受け取ることができた。これを技術だけで実現していることがすごいと思った。仕組みを深く調べてみたら、さらにすごい世界が広がっていた。ブロックチェーン技術はインフラに近い技術で、社会的なインパクトの大きさにわくわくした」


「分散的に全員でデータを持ち合うことはこれまでと異なるデータの保有・更新の仕方で、かなりの進化だと感じる。管理主体に依存しないため、これまで国やGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック=現メタ、アマゾン)のような巨大企業でなければ難しかったサービスを創り出せる。例えば、公共福祉やSDGs(持続可能な開発目標)に資するものなど大きな仕掛けが必要なサービスでも、今の技術を使えばどんどん生み出せる。ブロックチェーン技術はそういうイケてるアーキテクチャだ」


(佐藤 剛)



 相原 一也(あいはら かずや) 42歳。05年4月に大和総研入社。証券システム開発を経て研究開発部門に所属し、先端技術の研究・開発に従事。15年に調査活動で出会ったビットコインの仕組みに感銘を受け没頭。大和証券グループ横断のブロックチェーン検討チーム責任者を務めた後、18年にFintertech創業メンバーとして参画。「デジタルアセット担保ローン」事業開発責任者を経て23年4月より現職。


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