日銀・黒田総裁が退任会見 恒常的な2%割れ「ない」 終盤に手ごたえ

2023.04.08 04:50
金融政策 日本銀行
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退任会見で異次元金融緩和の効果について説明する黒田総裁(4月7日、日銀本店)
退任会見で異次元金融緩和の効果について説明する黒田総裁(4月7日、日銀本店)

「恒常的に〝2%〟を割るような状況に戻ってしまうことはない」――。日本銀行の黒田東彦総裁は4月7日午後の退任会見で、2%物価安定目標の持続・安定的な達成について「実現には至っていない」との認識を示しつつ、物価の先行きをこう見通した。


黒田総裁は「順調な賃上げ交渉が進むということが2%目標を達成するうえで重要」と強調。そのうえで、賃上げ・ベア率など足元の春闘の情勢を踏まえ、「(物価・賃金は上がらないという)ノルムが明らかに変容しつつある。23、24年の賃上げを通じて、賃金の上昇に支えられた2%の持続的・安定的な物価上昇は考えられる」と話し、これまで遠ざけてきた「2%目標」達成を視野に入れる発言に終始した。


今後、賃金上昇を起因とするコスト転嫁が進むと分析。2%を下回る水準まで一時的に低下すると見込む物価は、「23年度後半からリバウンドしていき、24年度は比較的順調に上昇していく」と2%台への再浮上を予想した。


10年間の異次元金融緩和については、「金融システムに働きかけて実体経済に影響を与えるインダイレクト(間接的な)政策で、(企業や家計を直接的に刺激する)財政政策とは違った難しさがある」と金融政策による景気浮揚の限界感などをにじませ、「分析や注意が必要ということがよくわかった」と振り返った。


米欧で信用不安が顕在化している。国内の金融システムに対して「金融機関は極めて充実した資本基盤と十分な流動性を備えており、金利が相応に上昇するといったストレスに対しても十分な耐性を備えている」と訴えた。金融システムの安定を確保しながら出口戦略を進めることは「可能」とみる。


在任中の10年間については「経済、物価の押し上げ効果をしっかりと発揮し、物価が持続的に下落するという意味でのデフレではなくなっている」と、自身が旗振り役となって推し進めた大規模緩和策を評価。一方、2%目標を持続・安定的に実現できなかった原因として「ノルムが根強く残っていたことが影響した」と分析した。


4月9日に就任する植田和男新総裁をはじめとする新体制に対しては、「賃金上昇を伴う形で物価安定の目標が持続的、安定的に実現することを期待している」と思いを寄せた。


東短リサーチの加藤出氏は、「退任を目前に、異次元緩和の効果を強調しつつ、足元の情勢を踏まえた出口との距離感を率直に口にした」と会見の印象を語った。

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