日銀、政策金利を据え置き 再利上げ判断「毎会合、適切に」
2025.07.31 11:57
日本銀行は7月30、31日に開いた金融政策決定会合で、政策金利である無担保コールレート翌日物を「0.5%程度」に誘導する方針の維持を全員一致で決めた。政策金利の据え置きは4会合連続。
会合結果と同時に公表した「展望レポート(経済・物価情勢の展望)」では、物価の先行きについて、見通し全期間(2025~27年度)の見通しを上方修正。生鮮食品を除く消費者物価指数(コアCPI)の前年度比上昇率(中央値)は、25年度を「2.7%」と前回(5月)から0.5ポイント引き上げ、26年度が0.1ポイント上昇の「1.8%」、27年度も0.1ポイント上昇の「2.0%」と見通した。
国内経済については、25年度の成長予測を引き上げた。GDP(国内総生産)の実質成長率は、25年度が「0.6%」と前回から0.1ポイント高め、26年度(0.7%)、27年度(1.0%)は据え置いた。
米関税影響「少しずつ出る」
植田和男総裁は会見で、米トランプ関税政策の日米間交渉合意に対し、「国内経済を巡る不確実性の低下につながる」との認識を述べた一方、米中間など他国の交渉動向や関税政策を受けた海外経済・物価への影響について、「不確実性が高い状況が続いている」との現状認識を語った。「一気に霧が晴れることはなかなかない」と展望し、「十分注視」する必要性を繰り返し表した。
ただ、「崖を落ちるような動きはかなり少なくなった」とし、発生確率は低いものの、起きると影響が大きい「テールリスク」シナリオの可能性低下を語った。
米関税の影響分析に関しては、米国経済や貿易関連統計といったハードデータを念頭に「非常にデータが見にくくなっている」としつつ、主要国の交渉進展を踏まえ、「はっきりした影響が少しずつ出てくる局面に入る」と見立てた。
今後の金融政策運営では、名目金利から予想物価上昇率を差し引いた実質金利が「極めて低い水準にある」ことを踏まえ、展望レポートの見通しに沿って国内情勢が移行した場合、「引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していく」と、これまでの段階的な利上げ姿勢を強調。物価の「上振れリスク」への認識に対しては、「政策金利が0.5%という低い水準にあるということは意識しないといけない」と足元の金融環境を持ち出した。
また、政策判断において重視する基調的物価上昇率を捉える指標として、日銀が算出する消費者物価の「加重中央値」や「サービス価格」のトレンド、「家計や企業、エコノミストの予想物価上昇率」など具体的な注目指標を並べた。
そのうえで、「基調的な物価上昇率が高まっていく見通しの確度やリスクを確認しながら、先行きの利上げの是非やタイミングについて、毎回の(金融政策)決定会合において適切に判断していく」との運営方針を語り、見通し実現の確度は、前回(5月)の展望レポート公表時に比べ「少し高まった」と所感を話した。
25年度の物価見通しを前回から0.5ポイント引き上げた背景については、「コメを含む食料品価格のここまでの上昇を反映したもの」と〝一時的要因〟を強調。半面、生鮮食品やエネルギーを含む全てのモノの価格を寄せ集めた「消費者物価・総合指数」の上昇が、一時的要因を取り除いた「基調的物価」や法個人の「インフレ予想」に影響を及ぼす懸念にも触れ、「以前よりも注意して見ていかないといけない」と警戒度合いを高めた。
(経済成長と物価情勢について情報を追加しました。2025年7月31日12:08)
(総裁会見について情報を追加しました。2025年7月31日20:00)
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