金融庁、仕組み債販売を注視 金融機関の対応に差
2022.09.30 04:43
仕組み債の販売をめぐり、各金融機関で対応が分かれている。販売方針やルールの見直しを図る一方、停止を決めたケースも出てきた。背景には、顧客本位の業務運営を重視する金融庁の存在がある。特に、仕組み債の商品性や販売体制に強い問題意識を持っており、経営陣に対して取り扱いの再考を促す姿勢を打ち出している。金融機関のなかには収益の柱の一つに位置付けていたとみられる先もあり、今後の対応が注目される。
仕組み債は、オプションやスワップなどのデリバティブ(金融派生商品)を組み込んだ債券。このうち、やり玉に挙がっているのがEB債(他社株転換可能債)だ。償還日までの株価変動で、満期日に償還金が支払われる代わりに、当該債券の発行者とは異なる会社の株式(他社株)が交付される場合もある複雑な仕組みの商品。
仕組み債の販売について、野村証券は「販売時や販売後の状況を適宜点検し見直しをしている」と回答。大和証券は「2022年度から勧誘開始基準に、金融資産に占める仕組み債の割合が過度に高くならないように目安を設けた」という。21年度には私募仕組み債の最低販売金額を引き上げた。
SMBC日興証券は「22年8月から勧誘を控えている」、みずほ証券は「9月13日から限定的な取り扱いとした」と、それぞれ回答した。
他方、三菱UFJ銀行は「必要に応じて販売方針やルールの見直しを行う」との方針を示している。三井住友銀行は個人向けの仕組み債の勧誘や販売を7月から全面停止した。みずほ銀行は、そもそも販売をしていないという。
「仕組み債のニーズはある」。地方銀行関係者はこう話す。地域銀行は販売姿勢を「自然体」とする先が多いが、地域銀系証券子会社のなかには、収益の半分以上を仕組み債の販売で賄っている先もあるとみられる。
地方のあるエリアでは22年度に入り、仕組み債を購入した顧客から苦情が増加している。管轄する財務局は販売体制や推進方法に問題があると見て、状況の把握に努めているもよう。
金融機関経営に詳しい森祐司・高崎経済大学教授は「(仕組み債は)手数料が高く、金融機関にとっては短期的な収益を上げられる商品で、同様のケースは過去にもある。もはや現場レベルの問題ではなく、収益目標の見直しなど経営陣の意識改革が求められている」と指摘する。
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