フィンテック経営者に聞く⑳ シンプルフォーム・田代代表
2022.09.04 04:50
シンプルフォームは、金融機関の取引先の法人調査を大幅に効率化する「SimpleCheck(シンプルチェック)」を提供する。法人名・法人番号を打ち込むと、法人登記簿や行政データ、ウェブサイトの情報に、同社が足で独自に収集した情報を合わせ、リアルタイムデータに基づいた法人レポートを作成する。金融機関の高いコンプライアンス水準に対応しており、新興企業や小規模な法人まで全国500万社をカバーする。田代翔太代表取締役CEO(34)に事業のきっかけや金融機関への展開などを聞いた。(2022年5月に6億8000万円を資金調達)
金融機関での経験が現在のサービスにつながっている
「新卒で政府系金融機関に入行し、投資ファンドの組成・管理などの業務に携わった。その際、フィンテック企業の勃興を目の当たりにした。その後は、新規事業立ち上げの企画部門に在籍し、スタートアップ企業と既存取引先をつなぐビジネスマッチングを通じて、新たなビジネスを生み出す手助けを行った。取引先にスタートアップ企業を紹介する際には法人調査を行う必要があるが、新興企業は情報が極めて少なく、調査するにも膨大な手間がかかる。これを何とかしようと考え、現在の会社を20年10月に立ち上げ、22年6月からシンプルチェックを提供している」
非対面化の進展とDX(デジタルトランスフォーメーション)が法人調査に影響を与えていると聞いた
「コロナ禍で、従来金融機関が対面で行っていた法人調査が、インターネットによる情報収集や電話・メールなどになり、『よく分からないから取引を止めよう』というケースが頻発している。DXによる業務の自動化もこの傾向に拍車をかけている。結果として、情報が少ない新興企業や小規模な法人が金融機関と取引できず大きなダメージを受けている。この状況に大きな課題感を持ったこともシンプルチェックを提供する原動力となった」
シンプルチェックを詳しく
「最大の特長は、金融機関の与信業務などを念頭に置いているということだ。法人レポートで表示される項目は金融機関ごとにカスタマイズでき、登記情報や法人のネガティブ情報、企業の業種などに幅広く対応。金融機関が一定期間に使う法人件数に応じてサービス使用料をいただいている。カード会社や大手損害保険会社など、大量の法人を素早く調査する必要がある会社で使ってもらっている。今まで担当者が1週間近くかけて行っていた法人調査を大幅に短縮することができたなど、法人調査の効率化に貢献している。(マネーロンダリング対策で求められる)継続的な顧客管理にも生かせるのではないかと考えている。現状として取引先にチェック項目があるハガキなどを送って確認しており、返事が返ってこないケースもあると聞く。当社のサービスは手軽に最新の法人情報が手に入るので、より確実で簡単な顧客管理ができる」
これからの展開は
「今秋には、シンプルチェックのカバー領域を個人事業主まで広げるつもりだ。将来的には、法人調査から人事、不動産を扱うことを考えている。近年SaaS(サービスとしてのソフトウェア)がはやっているが、それより一歩進んだ、『空気のようなサービス』の構築を目指していきたい」
※本シリーズは随時配信しています。過去の記事は下記からご覧いただけます。
おすすめ
アクセスランキング(過去1週間)
- 北陸銀と北海道銀、営業支援システム導入 年18万時間の作業削減
- 金融界、「隠れリース」特定に本腰 27年の新基準適用迫り
- 群馬銀、ストラクチャードファイナンス3年5.7倍 RORA向上に寄与
- 金融庁、決算書入手方法を調査 地域金融の実態把握へ
- 広島銀、請求書業務のDX後押し 新システムで決済口座確保
- 京都中央信金、理事長に植村専務が昇格 白波瀬氏は代表権ある会長へ
- 固定型住宅ローン、金利〝決め方〟見直し機運 参照指標「再検討」も
- 地銀、外貨保険販売が36%減 24年度下期、10万件割れ
- 信金、店舗減少が小幅にとどまる 職員数推移との格差鮮明
- 地域銀・信金、NISA口座伸び悩む 3カ月の増加率1%