フィンテック経営者に聞く⑮ ペイトナー・阪井社長

2022.07.24 04:55
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個人事業者向けのオンライン完結型ファクタリングを提供するペイトナー。請求書をアップロードすると、報酬が最短10分で支払われる。2019年9月のサービス提供開始から22年6月までの累計で3万件以上の申し込みがあり、毎月数億円が利用されている。「フリーランスは信用や商慣習の面で悩みを抱えており、資金繰りを支援したい」と話す阪井優代表取締役社長(32)に事業概要や地域金融機関との取り組みについて聞いた。(2021年8月にセブン銀行などから約4.5億円の資金調達)


ベンチャー企業で地域金融機関との提携に関わった後、起業されたと聞いている


「新卒で大手通信キャリアに入社した後、事業者向けクレジットカード決済サービスの事業開発に従事し、地域金融機関をはじめとする外部パートナー企業との連携を行った。その後19年2月にyupを創業し、22年1月にペイトナーに社名変更した。起業した理由の一つは、『個人事業者にとって1カ月を目安とする入金サイクルはかなり長い』という問題意識だ。これがプロダクトにも生かされ、素早い審査と入金という強みになっている」


迅速な入金は魅力ですが、審査は


「他のファクタリングや銀行融資、キャッシングは、決算書や確定申告書類・納税通知書などが必要だ。そのうえ、利用の都度、最新版の書類提出を求められたり、多くの場所に申し込んだり、断られているうちに信用情報が悪化する。一方、当社の登録に必要な情報は名前や振込先口座など最低限で利用しやすい。これを支えるのが、当社独自の与信アルゴリズムで、請求書・会計・企業・反社会的勢力などのオーソドックスなデータに加え、SNSの状況までさまざまなデータを蓄積している。また、2社間ファクタリングの仕組みを採用し、売掛先への利用承諾がないことも迅速な審査を可能にしている。申し込みの半分が審査を通過。回収率は98%近い。また、個人の利用可能金額を50万円にし、再保険もかけるなど、リスク分散にも力を入れている」


利用者は
「一番ニーズが強いのは建設業の1人親方だ。材料の仕入れ・立て替え・下請会社への報酬支払いなどにより、出金と入金のタイミングが大きくずれることが理由と考えられる。建築・不動産業のくくりで最多の30%を占める。2番目は、サービス業で14%。近年ECサイトの隆盛により軽貨物の個人ドライバーが増加しており、ガソリン・高速代の立て替えとして利用されている。3番目はデザイナーやクリエイターの13%で、納品後に請求する商慣習が影響している。収入と支出が不安定になるタイミングや、経費の立て替えで需要がある。ファクタリングの手数料として請求書の金額の10%を利用者からいただいている」


個人事業主などと関りがある信用金庫・信用組合と相性が良さそうだ


「決済ベンチャーで一緒に仕事をしたご縁もあり、信金・信組さんと積極的に提携することを考えている。DX(デジタルトランスフォーメーション)が浸透していない100人未満の中小企業や個人事業者にサービスを提供していきたい」


 


※本シリーズは随時配信しています。過去の記事は下記からご覧いただけます。


①Siiibo証券・小村代表取締役 


②Crezit・矢部代表取締役社長


③ビットバンク・廣末代表取締役社長


④ネットプロテクションズ・柴田社長


⑤400F・中村代表取締役CEO


⑥Opn・長谷川CEO


⑦JPYC 岡部代表取締役


⑧トリニティ・テクノロジー磨代表取締役CEO


⑨ KAERU・岡田代表取締役


⑩ Fintertech・武田社長


⑪ クラウドローン・村田代表取締役


⑫AGE technologies・塩原CEO


⑬ Lecto・小山社長


⑭ IB・井藤CEO

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