地銀協・米本新会長インタビュー ビジネスモデル見直す好機
2022.06.15 14:10
全国地方銀行協会では6月15日、新会長に千葉銀行の米本努頭取(57)が就任した。地方銀行を取り巻く経営環境や協会運営方針などを聞いた。
――地銀経営の現状認識は。
「環境変化の波に柔軟な対応をしながら、地域経済の持続的な発展をけん引することが求められている。コロナ禍で個人の価値観が変わった。さらにグローバルな金融政策の潮目が変化し金利上昇のほか、各種資源や原材料価格が高騰するなど経済情勢の不透明感が出ている。こうしたなかで、会員行は自らを変革し地域で存在意義を示すことが大切だ」
――2022年度の活動方針は。
「三つの柱がある。さまざまな変化に対するレジリエンス(強靭性)を備えた持続可能な地域経済の確立、デジタルトランスフォーメーション(DX)を通じた金融イノベーションの促進、持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けたESG(環境・社会・ガバナンス)経営の推進――を重点テーマに掲げた」
――コロナ禍における地銀の役割は。
「資金繰りのサポートに万全を期す。そのうえで本業支援を通じて収益力の回復や事業の再構築支援など、きめ細かい伴走支援をしていきたい。地域商社などを活用して面的支援にも取り組む。ポストコロナを展望した営業体制やチャネルを構築し、安心安全な金融サービスを提供していく」
――DXに取り組む意義は。
「コロナ禍で個人の価値観や行動が大きく変化し、金融サービスの非対面化を一段と進めることが求められている。決済手段の効率化を図り、生産性や利便性を高めたい。2021年11月の銀行法改正で業務範囲が広がった。取引先企業を始めに地域全体のDXをけん引するとともに、新ビジネスの創出にも努めていく」
――SDGsに関連した取り組みが広がっている。
「地域経済の持続可能性を高めることが、会員行の持続的成長にもつながる。取引先企業のカーボンニュートラルなどをサポートすることで、ESG経営を後押しする。こうした課題を融資や非金融サービスによって解決することが、地域金融機関の社会的価値だろう」
――就活学生の「地銀人気」が以前に比べて低下しているようだが。
「PR不足が原因の一つだ。会員行は各地域で社会的価値のある活動をしているが、学生などへ十分に発信できていないのではないか。地域金融機関を取り巻く経営環境は厳しいが、だからこそ理解してもらえる努力を続けるべきだろう」
――会員行の行員へメッセージを。
「さまざまな変化を自ら見極めたうえで、スピード感を持って本気で取り組む必要がある。変化の潮流には今後のアイデアが含まれており、ビジネスモデルを見直す好機とも言える。前向きに捉えてそれぞれの組織を活性化してほしい」
(聞き手=飯田 裕彦)