【BOJウオッチャーに聞く⑦】植田日銀2年半、任期〝折り返し点〟の評価と課題 

2025.10.01 11:50
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【第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミスト】


――総裁任期前半の政策運営をどう評価する。


「マイナス金利解除やイールドカーブ・コントロール(長短金利操作、YCC)撤廃、国債購入減額を一気に進め、政策運営の自由度を取り戻した点は評価でき、短期(政策)金利を0.25%に引き上げた2024年7月末までは非常にうまく運んだとみている。ただ、その後の政策スタンスは慎重過ぎで、3カ月ごと(2会合に1回)のペースで段階的に利上げしていれば、エネルギー・原材料価格高騰の背後にある為替円安が是正できたはずだ。慎重姿勢を見透かされるなど為替市場との対話がうまくなく、利上げに踏み切って海外金利差が縮まっても円安が進んだ」


――ETF処分も決め本格的な“出口”に向かう。


「ETF処分について、売り切るまでに100年以上を要する売却ペースを示したことに違和感がある。日銀は年間売却額に関し、簿価(買い値)ベース(3300億円程度)の金額に注目を集めさせたが、本来は時価ベース(6200億円程度)で見るもの。数字をあえて小さく見せる必要があったのか疑問に感じる。売却を始めたこと自体は大きな一歩だが、控えめに見せる戦略は逆にリスクを呼び込む。簿価を強調し過ぎると、世間の関心が含み益により向けられ、政治サイドから売却増を迫られる口実を与えているような印象を受ける」


――任期後半の課題やテーマは。


「最大の課題は円安是正だ。消費者物価上昇率が3%台で定着しかねないなか、物価安定が失われたと感じる国民も少なくない。今の日銀は、組織防衛的な面がみられ、利上げに対して腰が引けている。物価の安定を実現する意志が十分に伝わっていないため、一段とタカ派的なスタンスを示す必要がある。実際の利上げは、(これまでのような)『半年(4会合)に1回』のスパンではなく、展望レポート公表のタイミングなど『2会合に1回』のペースで段階的に進め、予見可能性を高めることが重要。(名目で1%~2.5%と幅を持たせて公表する)中立金利についても、水準を絞り込んで明確に示しながら政策を進めることが日銀に対する信認につながる」

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