企業景況感、「横ばい」続く 関税不透明感緩和も物価高重し 日銀短観

2025.10.01 11:52
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企業景況感の「横ばい」傾向が続いている。日本銀行が10月1日に公表した9月短観(全国企業短期経済観測調査)によると、全規模・全産業の業況判断DIは、6月の前回調査から変わらず「プラス15」を示した。前々回(3月)の調査も同じ値で2期連続の据え置きとなった。


自動車を中心とした日米交渉妥結で米関税をめぐる不透明感が和らぐ一方、関税影響の織り込みや人件費・物流費の上昇、長引く物価高による個人消費の抑制姿勢が景況感を押し下げた。


大企業・製造業の同DIは前回から1ポイント上がり「プラス14」。小幅ながら2期連続の改善を示した。半導体需要や価格転嫁の進展が寄与し、「繊維」や「汎用機械」、「自動車」産業などの景況感回復が全体のDIを押し上げた一方、「鉄鋼」や「紙パルプ」はコスト増や米関税政策の影響を織り込みDIを下押しした。


同・非製造業のDIは、「プラス34」と前回から不変で歴史的高水準を維持。「建設」や「情報サービス」を中心に幅広い業種で改善を表す半面、国内消費を下支えしてきたインバウンド需要には陰りも見え始め、高水準が続いていた「宿泊・飲食サービス」は前回から19ポイント悪化の「プラス26」と大幅に落ち込んだ。


日銀が政策判断で材料視する設備投資計画(2025年度)は、全規模・全産業ベースで前年度比8.4%と、前回から1.5ポイント上方修正。大企業製造業を中心に増産投資や資本財価格の上昇が要因。日銀・調査統計局は「(2000~24年度の)過去平均と比べると強め」との認識を示しつつ、直近3年間の実績対比では「(設備投資額の)伸び率がなお抑制的」との分析を述べた。


企業金融関連では、「資金繰り」と「金融機関の貸出態度」のDIが横ばいだった一方、「借入金利水準」は事業規模を問わず4~6ポイント低下した。


物価の基調をみるうえで重要な企業の「長期(5年後)物価見通し」は、全規模全産業で「2.4%」で0.1ポイント上昇した。


日銀は、追加利上げに向けた政策判断において、短観結果を重要視する政策委員が一定数いる。賛成多数で政策金利を据え置いた前回(9月)の金融政策決定会合では、「企業の積極的な経営姿勢が維持されていることを、短観や企業ヒアリング情報で確認したい」といった委員の意見も出ていた。

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