氷見野・日銀副総裁、米関税影響「大きくなる可能性」 不確実性〝引き続き高い〟
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日本銀行の氷見野良三副総裁は9月2日、米関税政策が国内経済に及ぼす影響について、「当面は(見通しに比べ)大きくなる可能性の方により注意が必要」との認識を示した。世界経済の先行きに関しても「不確実性は引き続き高い」との考えを表した。北海道釧路市内で開いた金融経済懇談会の講演で語った。
氷見野副総裁は、米関税政策による影響の「メイン・シナリオ」として、横ばいの続く輸出数量や底堅い個人消費の動きに触れつつ、「いずれ顕在化し、海外経済が減速、国内企業の収益も下押しされる」との見方を述べ、国内経済の成長ペースは「鈍化する」と見通した。
物価については、「食料品価格上昇の影響は、いずれ減衰し、(消費者物価の総合指数など)現実のインフレ率は下がっていく」と見込んだ。一方、日銀が政策判断で重視する基調的なインフレ率は「2%に向かって徐々に上昇しつつある」とし、2%物価安定目標と「概ね整合的な水準で推移する」との見立てを述べた。
3回利上げも「極めて低い」
今後の政策運営に関しては、名目金利から予想物価上昇率を差し引いた「実質金利」に対し、「これまで3回政策金利を引き上げてきたにもかかわらず、インフレ率が上振れしてきたこともあり、依然きわめて低い水準にある」と言及。そのうえで、日銀の展望レポートでも示す経済・物価の「メイン・シナリオ」が実現することを前提に、「引き続き、政策金利を引き上げ、金融緩和度合いを調整していくことが適切」と段階的な利上げ姿勢を維持した。
日米間の関税交渉合意は、「大きな前進であり、日本経済にとって先行きの不確実性の低下につながる」とした。半面、「依然交渉中の国もあり、品目別関税の扱いについても不確定の部分がある。通商政策が経済にどう波及するかについての不確実性もある」などとして、世界経済に対する高い不透明性を繰り返し強調した。
また、関税影響が「あまり顕在化していないようにみえる」状況の米国経済・物価への懸念点も指摘。「米国内の生産者同士の取引価格は上昇している」とし、輸出側の値上げや輸入側の在庫の入れ替わりなど「さまざまな段階での価格転嫁が進めば、影響が顕在化する」と大方の見方を持ち出しつつ、米経済の先行きは「よくみていく必要のある点の一つ」と、政策運営における位置付けを語った。
一方、金融市場の動向については、モニタリング姿勢を保ちつつ、市場センチメント(心理)は「概ね、(米関税公表の)4月より前の状況に戻っている」との現状認識を表した。