日銀、政策金利を据え置き トランプ関税で海外経済減速見通し
2025.05.01 12:02
日本銀行は4月30日、5月1日に開いた金融政策決定会合で、政策金利である無担保コールレート翌日物を「0.5%程度」に誘導する方針の維持を決めた。
経済・物価情勢の展望(展望レポート)で示した実質GDPは、政策委員見通しの中央値で2025年度が前回(1月時点の見通し)のプラス1.1%からプラス0.5%に、26年度がプラス1.0%からプラス0.7%にそれぞれ引き下げた。各国の通商政策などの影響を主因にあげている。27年度はプラス1.0%見通し。
一方、消費者物価指数(除く生鮮食品)は、25年度がプラス2.4%からプラス2.2%、26年度がプラス2.0%からプラス1.7%に見直した。27年度はプラス1.9%とした。
経済・物価見通しを総じて下方修正し、「下振れリスク」を警戒した。米トランプ政権下の相互関税の影響で「海外経済が減速し、国内企業の収益なども下押しされる」(日銀)とし、国内経済についても「成長ペースは鈍化する」と予測。政策判断で重要視する消費者物価の基調的上昇率についても、「伸び悩む」と見立てた。
今後のリスク要因としては、「海外の経済・物価動向を巡る不確実性はきわめて高い」とトランプ関税への視線を強め、金融・為替市場などへの影響を「十分注視する必要がある」と警戒度を一段切り上げた。
一方、今回の展望レポートで予測期間に加わった「27年度」は、「0%台半ば」(日銀推計)とする潜在成長率を上回る経済成長を予測。物価見通しも中長期的なインフレ予想が上昇していくと想定し、予測値を物価安定目標である「2%」近辺に置いた。
今後の金融政策運営では、「現在の実質金利がきわめて低い水準にある」とこれまでの認識を踏襲。展望レポートの見通しが実現していくことを前提に「引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していく」と段階的な利上げ姿勢を改めて示した。
半面、ターミナルレート(政策金利の最終到達点)に関わる中立金利(経済を温めも冷ましもしない金利)に達する時期については、予測期間が次年度に移行するなかでも「見通し期間の後半」と表現を据え置き、従来の到達時期からの後ろ倒しを表した。
再利上げ〝90日前後〟焦点
植田和男総裁は会合後の会見で、米相互関税政策に関し、関税率など具体策が明らかになった「4月2日」を念頭に「(シナリオの)かなり悪い方に振れ、その後は、若干の巻き戻しがあって(現時点では)もう一つわからない状態になっている」との認識を語った。
展望レポートの中心的な見通しを作るうえで前提に置いた関税政策のシナリオについては、「(国内経済・物価動向に)無視できないレベルの関税(の影響)が残る」としながら、「各国間の交渉がある程度、進展するほか、グローバルサプライチェーンが大きく棄損されるような状況は回避される」といった楽観的な要素を織り交ぜた。
国内のインフレ率や賃金上昇率の先行きに対しては、「やや下振れする、あるいは伸び悩みの状態に入ってくる」と述べ、上昇経路を辿ってきた基調的な物価上昇率は「ちょっと足踏みする」との見解を示した。また、日銀の物価安定目標である「2%」付近に収束するタイミングは、「やや後ずれしている姿になっている」との見方も訴えた。
足元の賃上げ動向は、歴史的高水準だった前年(24年)を上回る妥結が中小企業にも広がる春季労使交渉(春闘)の集計結果を踏まえ、「おおむねオントラック(想定通り)」と捉えた。今後については、「(関税の影響が)企業収益にマイナスの影響を与え、(今)冬のボーナスや来年(26年)の春闘に影響を及ぼす可能性がある」と懸念を表した。
一方、段階的な利上げスタンスは保ち、〝次の利上げ〟時期に関して、4月9日の関税発動直後に下した停止措置期間の「90日間」を「一つのポイント」として挙げ、「その前後である程度、不確実性は低下するとみている」と政策判断の可能性をにじませた。
年度ベースで3年連続の3%台となった足元の消費者物価については、「基調的物価上昇率は2%をやや下回っている」との見方を語った。そのうえで「(政策対応が後手に回る)ビハインド・ザ・カーブではない」と強調し、「少なくとも今回の会合では(政策金利を)維持することが適当と考えた」とした。
(経済成長と物価情勢について情報を追加しました。2025年5月1日12:55)
(リスク認識や金融政策スタンスの情報を追加しました。2025年5月1日13:31)
(会見内容の情報を追加しました。2025年5月1日20:38)