わたしと組織のマインド改革プロジェクト 信金の女性活躍に7人の旗手

2025.01.05 04:50
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座談会で意見交換する7人の参加者(2024年8月23日、ニッキン本社)
座談会で意見交換する7人の参加者(2024年8月23日、ニッキン本社)

少子化の進展による労働人口減少など、これまで以上に女性の登用やキャリア形成が重要になっている。金融機関はどう対応していくか。ニッキンでは、次世代を担う信用金庫の女性職員を対象とした「わたしと組織のマインド改革プロジェクト」を始動。組織を超えたコミュニティー形成や学びの場を提供し、リーダーシップの養成と組織改革の促進を後押しする。2024年8~11月の第1弾プロジェクトを振り返りながら、これからの女性活躍の在り方を探った。


理想実現へ理事長に提言

同プロジェクトは、企業研修を手掛けるシー・マインド(名古屋市)の宮道京子社長を講師に招いた約3カ月間の短期集中プログラム。「組織をより良くしたい」と情熱を注ぐ城北信用金庫(東京都)、三島信用金庫(静岡県)、浜松いわた信用金庫(浜松市)、蒲郡信用金庫(愛知県)、日新信用金庫(兵庫県)、島根中央信用金庫(島根県)、熊本第一信用金庫(熊本市)の女性リーダー候補7人が参加した。


ゴールは「理事長への直談判」。参加者は所属組織における女性活躍の課題を洗い出し、それぞれが考える理想の信金像と照らし合わせた改善策を理事長にプレゼンテーション形式で提言し、施策への反映を目指す。取り組みを通じてリーダーとしてのマインドシップを醸成する。



人材育成や体制整備課題

24年8月の初顔合わせでは座談会を実施し、女性活躍の取り組みや課題を共有。目立ったのが「男性は法人営業、女性は個人営業・窓口」「融資・渉外経験がないと管理職になれない」など、男女の働き方に対する固定観念を指摘する声。若手の成長意欲やモチベーション低下を招いている。


また、「管理職が業務に追われ、部下を育成できていない」「ロールモデルがいない」など育成環境が不十分で、男女問わずキャリアビジョンを描きにくい点も指摘。とりわけ信金業界の女性比率は年々上昇し、23年度末で42.4%(信金中央金庫地域・中小企業研究所調べ)となり、全産業の上昇幅を上回っている。女性の営業職への登用を含め、働き方の選択肢を増やすには人材育成や業務推進体制の整備が喫緊の課題といえる。


宮道講師は「過保護かもしれないが、手をかけ過ぎと思うくらい時間をかけて育成しないといけない」と強調。参加者には「女性がどんどん物申していかなければならない。その一歩を踏み出してほしい」と自らが先頭に立って声をあげていく行動・意識改革に期待を寄せた。


キャリアプランを明確化


24年11月の「理事長への直談判」で目立ったのが、職員のつながりを生み出すコミュニティーの形成や、男女問わずキャリアパスやキャリアプランを明確化する取り組みだ。浜松いわた信金と蒲郡信金はそれぞれ「キャリアコンサルチーム」「キャリアプラン作成プロジェクトチーム」の設置をアピール。全職員のキャリアプラン作成を通し、「私には向いていない」など経験不足による不安の取り除きや、早くから多様な経験を積ませ働き方の選択肢を増やすといった施策につなげる。


日新信金は、渉外未経験の若手女性総合職を対象とした座談会を実施。「渉外は残業が多くワークライフバランスが保てない」「結婚、出産後のキャリアが見えない」といった意見を踏まえ、具体的なキャリアパスの提示とキャリアプランの作成に着手する案を提言に盛り込んだ。


三島信金は、23年度から女性管理職を対象に公募によるスキルアップ研修を展開。次世代リーダーに必要な判断力や決断力などマネジメントスキルの習得ができるカリキュラムを提供する。これを発展させ、女性管理職同士のつながりや経営への参画意識を高めていく「Woman's Board」の設立を提案。生え抜き部長・役員など「課長級以上の上位職の不在」の課題解消につなげる。


女性総合職を23年に輩出して間もない熊本第一信金は、女性職員を対象にアンケートを実施。キャリアアップには前向きなものの、「仕事内容が分かりにくい」「自分には無理」など営業活動や総合職の転換に躊躇しているという結果を踏まえ、不安や悩みを気軽に相談できるコミュニティーの創設を提案。女性ならではのアイデアをボトムアップで提案できる場としての活用も期待する。


仕事と育児両立の職場へ


「わいわいスクール」の導入を提案する島根中央信金人事部の淀谷友加副部長(右)と福間均理事長(2024年11月19日、本店)
「わいわいスクール」の導入を提案する島根中央信金人事部の淀谷友加副部長(右)と福間均理事長(2024年11月19日、本店)

仕事と育児を両立できる職場づくりに着目した施策もあった。島根中央信金は、子供と一緒に出勤できる「わいわいスクール」を提案。24年12月に採用され運用が始まった。長時間の留守番に危険が伴う小学1~4年生の子供を持つ職員が対象で、小学校の全休時に開く。本部に職員と子供で勤務できる執務スペースを設け、支店勤務者も子供を預けられるようにする。これまでは有給休暇を使わざるを得なかったという。小学生になった子供の預け先が見つからず親が働きづらくなる、いわゆる「小1の壁」問題の解消にもつなげる。


城北信金は、営業店職員の積極的な休暇取得や研修参加、時短勤務の対応などを担う「助勤スタッフ」の増員を提案。具体的には、本部各部で助勤対応が可能な職員を公募しローテーションで派遣。本部と営業店職員の交流機会を生み出すほか、営業店の困りごとのタイムリーなキャッチや本部職員が営業店に異動する際の心理的な負担軽減を期待する。


「信金の強み」発揮に貢献

プレゼンテーションの詳細や理事長の受け止め、さらに参加者のプロジェクトを通じた気づきなどをニッキンONLINEおよびプレミアムで随時掲載。ニッキンではこの活動を全国の信金に広め、男女の区別なく信金で働く職員が働きやすい職場を作り、信金の強みを最大限発揮できる環境づくりに貢献していく。


女性活躍が顕著な企業への視察ツアーや女性の働き方を考えるセミナーなど学びの場を提供する。


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