日銀、政策金利を全員一致で据え置き 外憂下の「展望」通り

2024.09.20 20:40
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会見する植田・日銀総裁(9月20日、本店)

日本銀行は9月19、20日に開いた金融政策決定会合で、政策金利である無担保コールレート翌日物を「0.25%程度」に誘導する方針の維持を「全員一致」で決めた。


追加利上げを決めた前回の7月会合では、中村豊明、野口旭両審議委員が反対。両委員は「次回の金融政策決定会合で法人企業統計などを確認してから金融市場調節方針の変更を判断すべき」(中村委員)、「賃金上昇の浸透による経済状況の改善をデータに基づいてより慎重に見極める必要がある」(野口委員)との考えを示していた。


賃上げ、来年も「しっかり」


植田和男総裁は会合後の会見で、今後の金融政策運営について、現在の実質金利が「極めて低い水準にある」ことを訴え、日銀の展望レポート(経済・物価情勢の展望)の見通しに沿って情勢が進展した場合、「引き続き、政策金利を引き上げ、金融緩和度合いを調整していく」との基本スタンスを改めて強調した。


前回の7月会合で決めた追加利上げの判断要素となった物価の上振れリスクに関しては、歴史的な円安ドル高水準から円高基調に転じた為替動向を踏まえ、「相応に減少している」との見方を示し、追加利上げの検討に「時間的な余裕がある」とした。 


8月上旬の市場急変動には、「大まかには一時的な動きだった」として、個人消費や設備投資、金融システムへの影響は「無視できる程度のものだった」との現状認識を語った。


半面、3月のマイナス金利解除後の市場とのコミュニケーションに対しては、「私ども(日銀)の考え方が十分に伝わっていなかった」と株式・為替市場の反応を振り返り、情報発信姿勢や頻度について「もう少し丁寧に、場合によっては頻繁にできるといい」と改善の余地があることを明かした。


国内需要を左右する賃金動向は、2年を超して2%を上回る足元のインフレに加え、一過性に収まる見込みの低い構造的な人手不足、好収益が継続する企業業績に触れ、来年(25年)の春季労使交渉でも「しっかりとした賃上げが続くことが期待できる」と展望。現状の個人消費も「緩やかな増加基調にある」として、「底堅く推移している」とした前回会合の判断を上方修正した。


追加利上げに〝距離〟


一方、大幅かつ連続的な利上げによる累積的影響が急減速リスクとしてくすぶる米国経済には視線を強めた。「(米経済の)ソフトランディング(軟着陸)をメインシナリオとみている」とこれまでの見方を訴えつつ、8月以降に公表された弱含む米経済指標や、18日に大幅利下げに踏み切ったFRB(米連邦準備制度理事会)の政策対応に触れ、「(複数回の)大幅利下げを必要とした上でのソフトランディングなのかを見極めていきたい」と先行きを憂慮した。


7月末に講じた追加利上げの影響を含め、「当面は極めて高い緊張感をもって注視し、国内経済の見通しやリスク、見通し実現の確度への影響をしっかりと見極めていく必要がある」とし、さらなる政策金利の引き上げには距離を取った。


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