地域銀、GHG算定・分析高度化へ 環境省が先行事例を横展開
2024.03.24 04:50
地域銀行が、投融資先の温室効果ガス(GHG)排出量を示す「ファイナンスドエミッション」の算定・分析手法の高度化に動き出している。環境省の支援事業に参加した地域銀4行・グループが、トップダウン分析による算定や分析結果の精緻化などに取り組み、ネットゼロ達成に向けた移行戦略の骨子策定やエンゲージメント(対話)方針を具体化した。同省は、先行事例の創出を通じて、他の金融機関にも横展開していきたい考え。
環境省による「金融機関向けポートフォリオ・カーボン分析支援事業」は、2023年度が3回目。参加したのは東邦銀行、池田泉州ホールディングス、山口フィナンシャルグループ、九州フィナンシャルグループ。参加金融機関は、5回の面談を通じて、ファイナンスドエミッション算定手法や移行戦略を策定するための知見を身に付けることができる。
1、2回目の面談では、業界ごとの平均的な排出係数などをもとに推計する「トップダウン分析」でファイナンスドエミッションを算定。取引先の開示データなどをもとにした「ボトムアップ分析」や取引先のエリア別分析を通じて、結果を精緻化。結果をもとに対象セクターを選定した。3回目以降は、移行戦略の骨子案や具体的な施策を検討した。
3月14日の成果報告会では、4行・グループの担当者がファイナンスドエミッションの算定結果や移行戦略案を紹介。算定については、業種分類と排出係数の紐付け作業を課題として指摘する意見があった。また、ボトムアップ分析による算定結果はトップダウン分析よりも低くなる傾向が一部で見られた。移行戦略では、同省が実施する「脱炭素アドバイザー資格制度」の認定資格取得を推奨する動きが目立った。
同省は、今回の支援事業で得た知見や成果などを報告書に取りまとめ、参考事例として公表する予定だ。
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