地域銀、「五つ星」ホテル誘致に関心 海外富裕層呼び込みで
2024.02.08 04:45
地域銀行が、「五つ星」ホテルの誘致に関心を強めている。インバウンドが回復傾向にあるなかで、富裕層を地元へ呼び込むことが狙いだ。四国地区の地方銀行4行は、香川県へ高級ホテルを誘致する会社に出資した。富裕層向け宿泊施設は、諸外国に比べて少ないといわれる。2030年には、国内宿泊需要の約3割を外国人が占めるとの試算もある。富裕層の獲得に向けた動きが各地で活発化しそうだ。
阿波、百十四、伊予、四国の4行は23年12月、「合同会社四国まちづくり&おもてなしプランニング」に出資した。同社は、香港を拠点に世界25カ国・地域に展開する高級ホテル運営会社「マンダリンオリエンタルホテルグループ」と協業し、27年夏の開業を目指す。地銀4行はホテル新設で雇用を創出するとともに、地域外から観光客を呼び込んで域内消費を拡大させたい考え。
ホテル業界に詳しいKPMGFASの谷本千春マネージャーは「地方での高級ホテル開発は、資金調達がボトルネックとなるケースが多い」と指摘。「地方創生の観点から地銀による資金調達が望まれる一方、地銀1行では対応に限界がある。他行や他社との連携が有効」との見方を示す。
24年1月16日、JR長崎駅近くに「長崎マリオットホテル」が開業した。米マリオット・インターナショナルが運営するホテルで、部屋数は207室。インペリアルスイートは242平方メートルの広さがあり、「九州最大級」(同社)という。同ホテルのサイ・ウエスト総支配人は「非日常的な体験を提供し、国内外旅行者の目的地にしたい」とコメントした。
こうした高級宿泊施設は「ラグジュアリーホテル」とも呼ばれる。増加の背景には海外需要のほか、高コスト化への対応がある。国内では建築費や開業後の人件費などが高騰しており、それを賄うために客室単価を上げる必要がある。また、サステナビリティ対応で環境面などに配慮した事業が求められており、そのコストを価格に反映させやすい面もあるようだ。
地域にもメリットがある。ラグジュアリーホテルが誕生すれば、地元のアクティビティや食材の利用促進が期待できる。また、地域の人たちが建物内のレストランを利用するなど「日帰り需要」も生まれる。
ある地域銀のトップは「地元にラグジュアリーホテルがないので、(誘致に関する)調査をしている」と明かす。地銀関係者は「関心はあるが、地元の理解も欠かせない」と語った。インバウンドの増加は、オーバーツーリズム(観光公害)を引き起こしている。国は「量」から「質」への転換を掲げており、富裕層を呼び込む流れは加速しそうだ。
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