マーケット・トレンド(為替) 日銀会合後〝チャレンジング〟の解釈訂正で円安へ
2023.12.13 04:25
ドル円は12月7日の海外市場で一時1ドル=141円70銭台(ブルームバーグデータ)まで急落(12月11日執筆時点では145円台半ばまで反発)。米FRB(連邦準備制度理事会)による早期の積極利下げ観測を背景とした米金利低下とドル安に加え、日銀の植田総裁が7日の参院財政金融委員会で、金融政策運営について「年末から来年にかけて一段とチャレンジングな状況になる」と発言。これが政策変更を示唆したと受け止められ、円金利が上昇し円が急伸した。
本来〝チャレンジング〟とは、困難な状況に立ち向かう様を表すものだ。だが、マイナス金利解除に向けた意気込みのように報じられ、市場はやや間違った解釈をしているように思える。
確かに、日本のインフレ率は欧米をしのぐ水準まで上昇し、マイナス金利政策を解除すること自体に特段の違和感はない(むしろ、早急の解除が妥当であろう)。だが、日本の実質賃金上昇率は19カ月連続で前年を下回っており、家計の購買力は大きく減退している。
仮に日銀がマイナス金利政策の解除を決定しても、その後の継続利上げは想定しにくく、利上げ幅はわずか0.1%に留まる公算が大きい。
一方、米国の実質政策金利は既に景気抑制的なプラスの金利水準まで引き上げられており、FRBが利上げ停止期間に入った可能性は高い。だか、米コアCPIが前年比プラス4.0%と、依然FRBの物価目標の倍の水準にあるなか、米利下げペースは市場が織り込んでいる程早急ではないだろう。
そもそも、昨年からの大幅な円安進行は日本の貿易赤字の常態化とサービス収支の赤字拡大が主因だ。来年以降もこうした国際収支における円売り超過の需給環境が円安圧力につながるとみられる。
当面は145~146円程度で上値の重い展開が想定されるが、12月開催の日米金融政策会合を通過した後は投機的な円買いポジションの損切りを巻き込み、再びドル高円安が進みそうだ。
東海東京調査センター投資戦略部グローバルストラテジーグループ 金利・為替シニアストラテジスト 柴田 秀樹氏
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