マーケット・トレンド(為替) ドル円、23年回顧と24年相場展望
2023.12.27 04:252023年のドル円相場を振り返ると、年初には「米国の利下げによって円高になる」という金利要因に依存した見方が支配的であった。だが実際には、年初こそ黒田日銀総裁の後任人事を巡る思惑から投機的な円買いが入り、1月には127円台まで年間安値を更新したが、新しく就任した植田総裁が大規模緩和策の継続を示唆すると円売りに転じた。
また、米インフレは23年に入って以降もおおむね順調に減速を続けてきたものの、粘着性が高いとされるサービス価格の下げ渋りから、FRB(米連邦準備制度理事会)のタカ派姿勢が続き、米金利上昇に伴いドル高が進行、11月には昨年高値に肉薄する151円90銭台まで急伸。結果的に23年のドル円は2000年以降の年間平均値幅である16円を超えて、25円近くドル高円安が進行した1年となった。
一方、ちまたでは「24年のドル円は米利下げに伴う日米金利差縮小を背景に円高の年になる」との見方が圧倒的だ。まさに昨年の今頃を思い起こさせる状況にある。確かに24年はFRBの利上げ終了がほぼ確実な情勢であり、米利下げに応じた日米金利差縮小に伴うドル安・円高の圧力拡大は想定の範囲内だろう。こうした中で市場の最大の関心事は、実際に円高がどこまで進むかだ。市場が見込む米政策金利は、24年3月に利下げを開始、年末には4%を下回る水準まで引き下げるというもの(12/25執筆時点)。
だが、11月の米CPIは構成要素のおよそ6割を占めるサービスが依然高水準の前年比5.5%増を維持。基調インフレを示すコアCPIはFRBの物価目標2%の倍にあたる同4.0%増にとどまっている。米物価目標を達成するまでの「ラストワンマイル」は市場が想定しているほど容易ではない可能性が高そうだ。
さらに、通貨本来の実力を確認するうえで有効な実効為替レートでは、円は歴史的な低水準まで価値が下がっており、物価水準を考慮して算出された実質ベースでの実効為替レートになれば、1973年以前の360円固定相場制だった時代の円の価値すら下回っている。仮にFRBが利下げサイクルに入っても、円の本質的な弱さが改善されない限り、ドル円が以前の120円を上回るような円高水準に戻ることは無理筋であろう。
24年も日本の貿易赤字の常態化とサービス収支の赤字拡大を背景とした円売り超過の需給環境を背景に、下値目途はオーバーシュートしても135円程度を想定。時期としては米利下げや日銀のマイナス金利解除の思惑が高まりやすい1-3月期か。その後は緩やかなドル高円安が基本シナリオ。コアレンジは138-158円。バイアスは依然円安方向と考える。
「マーケット・トレンド」を長きにわたり、お読みいただき誠にありがとうございました。(おわり)
東海東京調査センター投資戦略部グローバルストラテジーグループ 金利・為替シニアストラテジスト 柴田 秀樹氏
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