マーケット・トレンド(金利) 出口に前進していく日銀
2023.11.14 04:25
植田総裁は、11月8日に衆院財務金融委員会で、従来の物価見通しについて「誤りがあったことを認めざるを得ない」と答弁した。植田総裁は、4月の就任直後は2023年度後半にはコアCPIが2%を割り込む場面があると述べていた。その見通しは変更される。
7月・10月の展望レポートの2023年度予想も4月1.8%、7月2.5%、10月2.8%と上方修正された。日銀は、物価上昇リスクの方をデフレ逆戻りのリスクよりも強く意識しているということだ。
もう一つの注目される発言は賃上げについてである。9日には、賃上げの定着を見極めたいと発言した。賃上げへの言及は何度も繰り返されている。
最近は、賃上げを前提に、物価見通しが達成される確度が高まったとも述べている。「賃上げを見極めたい」から「賃上げの定着を見極めたい」に表現を変えているのは、安定的な賃上げの継続を意識しているからだろう。安定的に2%を上回ると二重写しになる表現である。
念頭にあるのは、3月半ばの春闘の集中回答日となる。そこで再び大幅な賃上げが見込まれれば、3月か4月のどちらかでマイナス金利の解除が決定されるだろう。あと3、4カ月後に近づき、植田発言はさらに前向きに変わっていくだろう。
第一生命経済研究所 首席エコノミスト 熊野 英生氏