マーケット・トレンド(金利) 日銀の出口戦略の意味 

2023.10.31 04:25
金利
メール 印刷 Facebook X LINE はてなブックマーク

11月2日に岸田首相は経済対策の中身を発表する見通しである。経済対策の裏側では、それを実行する補正予算が組まれる。筆者は、税収の自然増が見込めそうだから、それを使って補正予算を組むこと自体が必要性に乏しいとも感じる。


2022年度決算では、税収が当初計画より6兆円ほど上振れた。2023年度も同様になるかは不確実だが、10月からのインボイス導入もあって税収は増える可能性がある。各種予備費も5.5兆円ほどある。これらが歳出の追加に用いられる格好になるだろう。これらの余剰が新規国債の発行抑制に回っていれば、財政再建の進捗(しんちょく)を強く意識されたことだろう。


今後、日銀がマイナス金利解除して、長期金利の上昇をいくらか容認することになれば、財政運営次第で長期金利が動くことになっていくだろう。ルーズな運営だとマーケットが評価すれば、長期国債は売られて政府の利払い費も増えていく。


日銀の出口戦略とはそうした世界への移行を意味するものでもある。税収の自然増も、金利正常化に伴う利払い費の増加に食われる部分が増えていくに違いない。


まだ、岸田政権はそうした変化が近々来ることへの実感は乏しいようだ。植田総裁は、どこまで長期金利コントロールを維持するのだろうか。出口によって、政府の財政運営も正常化を迫られることを、まだ十分に自覚してはいないと考えられる。


第一生命経済研究所 首席エコノミスト 熊野 英生氏

すべての記事は有料会員で!
無料会員に登録いただけますと1ヵ⽉間無料で有料会員向け記事がご覧いただけます。

有料会員の申し込み 無料会員でのご登録
メール 印刷 Facebook X LINE はてなブックマーク

関連記事

第一生命HD、米子会社が団体保険のシェルターポイント社を買収
第一生命HD、オルタナティブ運用を強化 米キャニオンGに出資
大手生保に見る資本政策最前線 ESR導入まで1年、“余剰”なら配当や成長投資へ
大手生損保、24年度にTNFD開示へ 投融資との対話も視野

関連キーワード

金利

おすすめ

アクセスランキング(過去1週間)