【推薦図書】『アメリカン・ベースボール革命 データ・テクノロジーが野球の常識を変える』(ベン・リンドバーグ、トラビス・ソーチック著)
2023.04.28 04:45
【推薦者】野村証券副社長・鳥海智絵氏
やっぱり野球ってすごいな
栗山監督の言葉術や組織マネジメント、ダルビッシュ投手のリーダーシップ。経営ネタは多々あれど、純粋に「野球の楽しさ」を感じたWBCだった。
本書では「楽しさ」の後ろにあるデータ解析や、それを活用したトレーニング施設“ドライブライン”などの「革命」について詳細に解説している。「打球速度98マイル以上、角度30度前後の打球はヒット確率80%で、その大半はホームラン。」これを打たれまいと投手は身体の動きを解析し、球速や回転数を計測し、大きく横に動くボールを投げる。
一方で、かつて映画化された「マネー・ボール」はデータを元に選手を入れ替えてリターンを最大化するという経営目線の物語だったが、本書の主語はあくまで選手で、重要なことは選手自身が「成長マインドセット」を持つこと、と説く。本書中、ドライブラインを活用して成長し、サイ・ヤング賞も受賞したと紹介されるトレバー・バウアー選手は、個人的な不祥事による謹慎期間が終わり、今期からDeNAに所属している。また、大人気となったヌートバー選手はコロナ後にドライブラインでトレーニングを開始して急成長したという。
野球を「楽しむ」とともに、科学的に考えるヒントと「成長」への糸口を見つけていただければ幸いである。
(化学同人、税込み3520円)