地域銀、変わる大株主に対応急ぐ 旧村上ファンドなど
2022.12.16 04:40
地域銀行は、従来とは異なる大株主の登場で対応を急いでいる。旧村上ファンド系の投資会社のほか、著名個人投資家の井村俊哉氏や植島幹九郎氏などが一部地域銀の大株主に浮上してきたのが要因の一つだ。「機関投資家の見方を知りたい」(地方銀行関係者)として、生命保険会社などから情報収集に努める動きが出ている。別の地銀は「(主幹事の証券会社に対して)来年の株主総会までの動き方を含めて相談をしている。株主との対話が重要になっている」と話す。
著名投資家、栃木銀株を買い増し
2023年3月期の第2四半期報告書で、旧村上ファンド系の投資会社、シティインデックスイレブンス(東京都)は秋田銀行、岩手銀行、武蔵野銀行、八十二銀行、スルガ銀行の5行の大株主となっていた。
個人投資家の井村氏は、富山第一銀行株を142万株(持ち株比率は2.22%、7位)保有。植島氏は、22年3月末時点で栃木銀行と長野銀行の大株主として浮上した。当時、栃木銀株を204万7000株(同1.96%、5位)保有していた。同氏が11月29日に関東財務局へ提出した株式保有割合の変更報告書によると、栃木銀株の持ち株比率は6.5%に高まっている。
重要度増す「誠実な対話」
SBI証券の鮫島豊喜シニアアナリストは、地域銀株に注目が集まる理由を「ROE(自己資本利益率)の改善や株主還元の強化、金利の上昇期待」と指摘。さらに、「来春の日本銀行総裁の交代によって、金融緩和政策の転換に期待がかかる。同様の理由で05年から06年にかけて銀行株は上がったが、今回も同じではないか」とみる。
一方、地域銀は大株主の動向に注意を払う。「聞き慣れない投資家が株式を急ピッチで買い増しているようだ」。ある銀行は情報をつかむと、対策チームがその投資家とコンタクトを取って、対話を試みるという。ただ、こうした活動は一部の地域銀にとどまっているようだ。地銀関係者は「今後も様々な投資家が出てくるだろう。アクティビスト対策で言えば、自己資本の使い道を明確に示し、日頃から丁寧に説明するしかないのでは」と話す。
【識者の見方】
東証プライム上場の費用対効果を再考
立命館大学・播磨谷 浩三 教授
「上場地域銀行の意義が問われている中で、キャピタルゲインを目的とした地域銀株投資が増えている背景には、広域的な再編の進展などによって株価が反応することへの期待が見て取れる。地域銀を取り巻く経営環境が総体的に厳しい状況に変わりはなく、構造的な変革を迫られている業界であることから、投機的な思惑で一定程度の関心が寄せられているのだろう」
「他方、地域銀の持続可能性という観点からも、株主構成に占める地元企業や個人の比率を高める努力は決して無駄とは言えない。しかし、海外の機関投資家などから幅広く資金調達を行うことを目的とする東証プライム市場に上場するかぎり、投資家への対応を含めた上場維持コストがかさむのは必然であり、地元の投資家に集中する余裕がなくなるのは自明であろう。費用対効果を考慮したうえで、上場先の見直しや非上場化を検討することはやむを得ない。反対に、東証プライム市場のまま資金調達の効率性を優先するのであれば、多くの上場地域銀にとって、広域的な再編は不可避であろう」
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