金融庁、事業成長担保権を法制化へ 鈴木金融相が諮問

2022.09.30 17:15
法令・制度 金融庁
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ON金融審諮問
鈴木金融相の諮問文を読み上げる鈴木英敬大臣政務官(9月30日、金融庁)

金融庁は、無形資産を含む事業全体の価値に包括的な担保権を設定できる「事業成長担保権(仮称)」の法制化に向け、具体的な制度設計に入る。鈴木俊一金融相が9月30日の金融審議会総会で検討を諮問した。不動産担保を持たないスタートアップなどへの資金供給の拡大をめざす。


金融審に今秋、新たな作業部会を立ち上げる。金融審の神田秀樹会長が座長に就き、委員には金融機関やエクイティ投資家、企業経営者、弁護士などのステークホルダーを選出する見通しだ。


包括的な担保権は、法務省の法制審議会でも2021年4月から担保法制見直しの論点の一つとして議論されている。金融審の作業部会では別途、担保権者を金融機関に限定する形での制度化を検討したい考え。ただ、法制審には金融庁も幹事として参加しており、引き続き両省庁で連携する。特別法が念頭にあると見られるが、国会への法案提出時期などは未定だ。


政府は6月に閣議決定した「新しい資本主義のグランドデザイン・実行計画」に、包括的な担保権の創設に向けて「関連法案を早期に国会に提出することを目指す」と明記。これを受け、金融庁も22事務年度(22年7月~23年6月)の金融行政方針で「早期実現に取り組む」と表明していた。


制度創設により同庁が目指すのは、多様な融資実務の形成だ。現行は不動産担保が中心であるため、有形資産を持たないスタートアップなどが金融機関から資金調達しにくいとの指摘がある。新たな選択肢を用意することで、こうした課題に対応するほか、金融機関による事業改善支援の強化などにも生かしたい考えだ。


30日の金融審総会では、賛同を示す委員がいた一方、労働者側の委員からは「(担保権の)実行前から担保権者による経営への強い関与が行われ、リストラや労働条件の切り下げ、人件費の抑制などが強行されるのではないか」との懸念も出た。また、別の委員からは「スタートアップはデットを好まない傾向がある。使いたいと思える制度設計にしてほしい」との注文があった。


金融庁は「他の担保権との優先関係や、民事法制・倒産法制でこれまで積み上げられてきた制度との関係で、インパクトが大きいとの指摘がある。難しい論点が多く含まれるが、スピード感を持って取り組んでいきたい」としている。

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