「概ね確立」 商工中金の経営改革 評価委が報告書
2022.08.04 06:08中小企業庁の「商工中金の経営及び危機対応業務に関する評価委員会」は8月3日、報告書を取りまとめ、商工組合中央金庫の新たなビジネスモデルについて「概ね確立できた」との評価を下した。危機対応業務についても「当面は実施する責務がある」とした。
委員会は、商工中金の危機対応業務を巡る不正事案を受けて2018年4月に設置。以降17回にわたり、新たなビジネスモデルの進ちょくや危機対応業務の実施状況、ガバナンス体制の見直しについて検証してきた。
新たなビジネスモデルは、商工中金が18年10月に策定した4年間(18年度~22年度)に及ぶ中期経営計画「商工中金経営改革プログラム」に基づき検証。事業性評価による融資では、経営者保証を徴求しない融資比率が36%(18年度)から61%(21年度)と大幅に増加。A(経営支援)・B(事業再生)・C(高リスク事業)・D(創業)で構成される重点分野の貸出金残高は、B・Cゾーンが中計目標を上回った。A・Dゾーンは、コロナ禍で危機対応融資の残高が大幅に増加したため目標を下回ったが、一定の効果はあったと判断した。
21年度の収支実績は中計目標全てを達成。なかでもOHR(業務粗利益に占める経費の割合)は55%と、18年度比16%も改善した。バックオフィス業務のシステム化や店舗統廃合などにより、経費を約93億円削減できたことが奏功した。
危機対応業務については、災害や金融収縮を伴う経済危機が発生した際、迅速で円滑な資金繰り支援を行う観点から、引き続き実施する必要があると判断。コロナ禍では全国の支店網などを活用し、日本政策金融公庫の役割を補完。危機対応融資では、3万6千件、2兆6千億円を供給した。また、同業務を担う指定金融機関制度の運用を見直し、民間金融機関の参入を促進するとした。
ガバナンスでは、営業店ごとのノルマ割り当ての廃止や定量評価の割合を95%から50%に半減するなど、ノルマ主義からの脱却を図る動きを評価した。また、取締役会での審議時間や発言回数が不正事案発覚以前よりも大幅に増加。取締役会の過半数が社外取締役となり、議論の場として機能していると判断した。
今後の課題では、創業・スタートアップや海外展開の支援、全国ネットワークの活用を上げた。
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