日銀横浜支店、景気判断据え置き 地政学リスク注視
2022.03.09 19:30
日本銀行横浜支店は3月9日、「神奈川県金融経済概況」を発表した。全体では新型コロナウイルス感染症や供給制約の影響を受けながらも、基調としては「持ち直している」と据え置いた。ロシアのウクライナ侵攻などを踏まえ、地政学的リスクの高まりに伴う影響を追記し、「注視が必要」とした。
実体経済は2月の判断から全て据え置いた。雇用・所得環境は雇用者の名目賃金を示す現金給与総額の2021年10~12月が前年同期比を上回ったが、常用雇用者数はマイナスで推移しており、河西慎支店長は、「足元で物価上昇圧力が徐々に高まっている。消費マインドの冷え込みを防ぐためにも雇用・所得環境の改善が明確化されることが待ち望まれる」と述べた。
金融指標では、22年1月の貸出金末残が前年同月比マイナス0.1%となり、11年10月以来10年3カ月ぶりにマイナスを記録した。実質預金末残は、各種給付金などの財政資金が滞留していることから前年同月比3%台の増加が続いている。
河西支店長は、ロシアのウクライナ侵攻について「一刻も早く現地の治安が回復されることを祈っている」と哀悼の意を表した。先行きの景気に対する下振れリスクが高まっていることから、金融市場の動揺やセンチメントの悪化などを通じて投資や消費の停滞へとつながる可能性を指摘。金融システムの安定に関しては、「ウクライナ情勢の悪化に伴い国際金融市場が不安定化している」とし、金融機関が保有する有価証券の評価額の変化について「意識しておくべき点」とした。