日銀、米関税不確実性「なお高い」 利上げへ〝春闘の事前情報〟確認 9月会合議事で
2025.11.05 16:06
日本銀行は11月5日、前々回(9月)の金融政策決定会合の議事要旨を公表し、複数の委員が米関税政策の不確実性に対して「なお高い状況が続いている」と認識していたことを明らかにした。米連邦準備制度理事会(FRB)の政策運営についても、米国の雇用動向次第では中立金利を下回る水準まで「大きく利下げする可能性がある」と警戒感を表す声がみられた。
日銀は9月会合で、政策金利の維持を賛成多数で決定。海外経済の動向に関し、「ハードデータ(統計)をもう少し確認する必要がある」など政策判断に慎重な意見が並んだ。
複数の委員は米関税政策について、「マイナスの影響が米国経済に本格的に表れるのはこれからであり、その時期や影響の大きさには不確実性がある」との見方を示した。
最高値圏で推移する米国の株式市場に対しても、「先行きの米国経済を楽観しているようにみえるが、関税による下押し圧力が予想以上に大きいと認識されれば、市場が悲観論に傾く可能性にも留意する必要がある」と懸念を訴える委員もいた。
一方、米関税の影響の〝出方〟では、「インフレや雇用の急激な悪化ではなく、じわじわと時間をかけて出てくる」と、関税政策が打ち出された当初(4月)の想定よりも緩やかな影響の広がりを主張する意見があった。
追加利上げについては、賃上げ機運を醸成してきた大手企業の収益動向を重視する委員の声が散見。ある委員は、「ここ数年の賃上げの流れが途切れないことをある程度の確度をもって予想できるかどうかが重要」と、今期の収益見通しや26年春季労使交渉(春闘)の事前情報を判断材料に賃上げ定着の持続性をみていく考えを強調した。
別の委員も、「経済・物価が日本銀行の見通しに対して大きく軌道を外れなければ、ある程度定期的な間隔で政策金利の水準を調整していくべき」と述べたうえで、25年度の上期決算・通期見通しや短観などがでてくれば「幅広い情報が揃う」との認識を語った。
同会合では、保有ETF(上場投資信託)などの処分も決めた。政策決定時期や対応期間については、金融システムの安定確保で金融機関から買い入れ、7月に処分を終えた株式の対応から「あまり間を置かずに開始することが望ましい」との見解を示した。
処分完了まで「100年以上かかる」売却ペースでは、「指摘されるであろうが、それがかえって安心材料となり、市場への影響を軽減することにつながる」と、異例の長期計画がもたらすアナウンス効果を見込む意見があった。