信金中金、個人向け信託の成約1万件突破が間近に
2022.02.24 04:45
信金中央金庫は、2022年3月末にも個人向け信託商品(相続信託「こころのバトン」、暦年信託「こころのリボン」)の成約実績が累計1万件を超える見通しだ。2月15日現在の実績は9766件。信託業務開始から約5年での大台到達となる。高齢顧客による計画的な資産承継ニーズの高まりを背景に、足元では月200件を超えるペースで成約。川崎信用金庫などでは、相続対策のきっかけ商品として提案活動に注力する。
信金中金は、17年1月に両商品の取り扱いを開始。22年1月末までの成約件数は累計9676件(内訳=こころのバトン6097件、こころのリボン3579件)、合計金額は607億円。現在、取り扱い信金(信託契約代理店)は、業界全体の約7割に当たる176信金に拡大した。
個人向け信託は、受取人の口座開設につながるケースが多く、こころのリボンの申し込では、受取人(主に申込人の子や孫など)の42%が新規先で、このうち26%が口座を開設。「次世代顧客との取引獲得につながっており、これを契機に複合取引への発展も期待できる」(信金中金信託部の高橋慎弥次長)という。
相続対策として外貨建て生命保険などを推進する金融機関もあるが、個人向け信託の増加要因は元本保証かつ預金保険の対象でもある安心感。販売経路は、渉外が64%で最も多く、窓口での販売も25%を占める。「テラーが高齢顧客から資産承継の悩みを聞くことが起点になっているケースも多い」(同)という。
成約実績が全国トップの川崎信金では、高齢者取引の基幹商品と位置付け、両商品の手数料を無料にして取り扱う。推進策としては、年金支給日などの高齢者との接点を生かし、顧客が抱える悩みを聞き取る。同信金業務部の吉田英和審査役は「相続への不安をあげる方が非常に多く、個人信託を入り口に不動産も含めた本格的な相続対策の提案に移行するケースも多い」と話す。