日銀、政策金利を据え置き 複数委員が利上げ求める 「ETF処分」も決定
2025.09.19 12:47
日本銀行は9月18、19日に開いた金融政策決定会合で、政策金利である無担保コールレート翌日物を「0.5%程度」に誘導する方針の維持を決めた。政策金利の据え置きは5会合連続。
高田創、田村直樹両審議委員は、「0.75%」への追加利上げを求めて反対票を投じた。高田委員は「物価が上がらないノルムが転換し、『物価安定の目標』の実現が概ね達成された」との理由で、田村委員は「物価上振れリスクが膨らんでいる中、中立金利にもう少し近づけるため」として、利上げに関する議案を提出。反対多数で否決された。
保有するETF(上場投資信託)とJ-REIT(不動産投資信託)の処分も決めた。ETFの年間売却ペースは、時価ベースで6200億円、日銀の買い値である簿価ベースでは3300億円。J-REITは、時価で55億円(簿価で50億円)規模とした。
市場全体の売買代金に占める売却割合は、「0.05%程度」。2002~04年と09~10年に、金融システムの安定確保で買い入れ、25年7月に処分を終えた「金融機関から買い入れた株式」と同規模・ペースで市場へ売却。「所要の準備が整い次第、処分を開始する予定」(日銀)とした。
「市場の情勢を勘案し、適正な対価で売却」「日銀の損失発生を極力回避」「市場の攪乱(かくらん)的な影響を与えることを極力回避」とするETF・J-REIT購入導入時に規定した方針に基づき、売却の一時的な調整・停止や、ペースの見直しが可能な仕組みとした。
情報「もう少し見たい」
植田和男総裁は会合後の会見で、追加利上げの主な焦点の米国経済について、米トランプ関税の影響を踏まえつつ、雇用市場や個人消費の一部に「弱めの動きがみられる」との現状認識を語り、「(関税率引き上げによる)消費者物価への転嫁の動きは緩やかなものにとどまっている」との見方を示した。
また、9月17日に6会合ぶりの利下げに踏み切った米連邦準備制度理事会(FRB)の政策対応に対しては「米国経済を下支えする方向で作用する」とし、世界経済についても「一旦、減速するものの、その後は緩やかな成長経路に復していく」とこれまでの見通しを踏襲した。
国内経済への影響に関しても、設備投資や雇用・賃金動向を含め、「経済全体に波及している様子は伺われない」とし、前回(7月)会合との間で妥結した自動車などの関税率引き下げは、「不確実性の低下につながる」との所感を述べた。前回の会合で見通した展望レポート(経済・物価情勢の展望)のメインシナリオに関しては、「修正する必要はない」との現時点の判断を表した。
一方、米関税の影響が「これから一段と出てくる可能性がある」との懸念も訴え、「下振れリスクも意識しないといけない」と不確実性の高さを繰り返し語った。足元でみられる食料品価格高騰の長期化が個人の物価観を押し上げるリスクなどにも触れ、国内外の経済・物価関連データや支店長会議などで集まるヒアリング情報を「もう少し見たい」とのスタンスを示した。
売り切り〝100年超〟
保有ETF・J-REITの処分決定に対しては、株式市場への影響や金融機関から買い取った株式の売却経験を踏まえながら、「ゆっくりと減らしていく」姿勢を前面に出し、「我々はいないが、(日銀保有分のETF完全売却に)100年以上かけて売っていく」と出口局面の実情を述べた。
マーケットのサプライズ的な受け止めにつながった、処分決定プロセスの情報発信姿勢については、「直接、株式ETFを売却する政策決定なので、アナウンスをしただけでマーケットに影響が出てくる種類の政策。ガイダンスしていくというのが非常に難しい」と、短期金利を操作する伝統的な金融政策と比べた政策の特性を示した。