日銀、利上げ方針「不変」 米関税は〝様子見モード〟 前回会合で

2025.05.13 11:39
日本銀行 金利 物価
メール 印刷 Facebook X LINE はてなブックマーク

日本銀行は5月13日、前回の金融政策決定会合(4月30日、5月1日開催)で交わされた政策委員の「主な意見」を公表し、米トランプ関税政策発動後も段階的な利上げスタンスの維持を訴える声が複数出ていたことを明らかにした。国内外経済の先行きでは、関税交渉の着地点や企業の投資行動への影響など不確定要素を強調する意見が並び、物価への影響度合いや方向性について見方が割れていたこともわかった。


ある委員は、5月1日に公表した展望レポート(経済・物価情勢の展望)を踏まえ、「実質金利は大幅なマイナスであるので、利上げしていく方針は不変」との姿勢を表し、各国の関税交渉結果が国内経済・物価見通しに与える影響を見極める必要性を示した。


別の意見でも、日銀の見通しが実現していくことを前提に「金融緩和度合いを調整していくことになる」と段階的な利上げ姿勢を主張。そのうえで、「不確実性がきわめて高いことを踏まえ、予断を持たずに判断していくことが重要」とした。


今回の展望レポートで改めた予測値の位置付けに関し、「『米国の関税政策の着地』と『(関税政策を踏まえた)企業の対応』は二重の意味で流動的であり、現時点での見通しは仮置きにとどまる」との認識を述べ、次回(7月)展望レポート以降の大幅な見通し修正の可能性に触れる委員もいた。 


米関税の具体的な影響については、「経済・物価のいずれにも下押し方向に働く」との見立てがある一方、世界各国に課される相互関税の特性を念頭に「日本企業の相対的な競争条件悪化にはつながり難く、収益減少が限られる可能性もある」と楽観的な見方を示す委員もいた。


物価動向に対しても、世界的なサプライチェーン混乱などによる将来的な「上振れリスク」を懸念する声があり、「国内要因にも注目して、冷静に金融経済の状況判断をしていきたい」との構えを表す意見もみられた。


米関税政策の今後の展開に関しては、「ある程度、落ち着くまでは様子見モードを続けざるを得ない」と訴える委員や、「良い方にも悪い方にもすぐに覆る可能性がある」として、政策経路の変更がマーケットを動揺させないよう、市場と十分に率直なコミュニケーションを求める声も出ていた。

すべての記事は有料会員で!
無料会員に登録いただけますと1ヵ⽉間無料で有料会員向け記事がご覧いただけます。

有料会員の申し込み 無料会員でのご登録
メール 印刷 Facebook X LINE はてなブックマーク

関連記事

日銀、世界経済「不透明感高まる」 〝米関税公表前〟の3月会合で
「物価の番人」黙考の3年目(下) 冷徹な中期予測 人手不足が訴える〝覚悟〟
マネタリーベース、4月は前年同月比4.8%減
「物価の番人」黙考の3年目(上) 〝トランプ難局〟 政策判断に漏れる本音

関連キーワード

日本銀行 金利 物価

おすすめ

アクセスランキング(過去1週間)