トランプ関税「十分注意」 高水準賃上げ〝期待できる〟 日銀、地域経済報告
2025.04.07 17:45
日本銀行は4月7日、支店長会議を開いて地域経済報告(さくらレポート)を公表し、景気の総括判断を全9地域で前回(1月)から据え置いた。各地域の景気認識は「回復・持ち直し」基調を維持。米トランプ政権下の高関税政策による影響については「不確実性が高まっている」として、今後の動向を「十分注意してみていく」とする支店報告が多くみられた。
支店長会議報告などに基づく「景気の現状」では、世界的な通商政策を巡り、生産や企業収益への影響を懸念する経営者の声が目立った。
ただ、先行きの不透明要素が多く、「(通商政策の)影響を見極めつつ具体的対応を進めていく必要があるとの声が聞かれている」(日銀)と、様子見の姿勢を取る先が少なくない。正木一博理事・大阪支店長は「現時点で影響を定量的に評価することは難しい。予断を持つことなく、情報収集に努める」との認識を語った。
半面、足元の国内経済は堅調さを保つ。2025年の春季労使交渉(春闘)は、大企業を中心とした前年(24年)を上回る妥結結果を受け、人材確保・係留の観点から「積極的な賃上げが必要」(食料品製造業)と前傾姿勢を取る企業が広がる。「優秀な人材の確保に向けて継続的に賃上げを行う方針」(輸送用機械器具製造業)と中期的な視点での賃上げを計画する企業もみられた。
賃上げ原資の確保も進む。企業の価格設定では、原材料・エネルギー高騰を主とした値上げに加え、輸送費や人件費を転嫁する動きが強まる。「今後もコストの上昇が続く場合、販売価格を引き上げる」(スーパー)など、コスト吸収力の限界に直面して値札を改めるケースも増えている。
賃金の継続的な上昇は、個人消費の押し上げに寄与している。サービス消費では、旺盛なインバウンドと相まって観光・宿泊や外食需要が引き続き堅調。モノ(財)消費でも、都市部百貨店での高額品販売などが好調さを維持する。一方、生鮮食品や日用品の価格上昇が継続し、スーパーなどで「節約志向の影響が引き続きみられた」(日銀)。