浜松市、ベンチャーデットで新興育成 「認定金融機関」に5機関
2024.09.18 04:35浜松市は、7月からスタートアップ育成に関する施策を拡充。これまでの「ファンドサポート事業」にベンチャーデット手法によるスキームを追加した。2025年初旬には、監査法人トーマツ(東京都)と浜松いわた信用金庫が協力した起業家らのシリコンバレー視察研修も展開予定だ。さらに24年8月、市内企業が全国のスタートアップとつながるプラットフォームを無料で活用できるサービスも開始しており、2社(8月26日現在)が登録済み。
ベンチャーデット活用によるスタートアップ育成は、地方公共団体で初。これまでの事業に、アーリー・ミドル期育成を「認定金融機関」でも実施するメニューを増やした。7月31日に静岡銀行、浜松いわた信金のほか、三菱UFJ銀行、愛知銀行、日本政策金融公庫を認定。24年度は2億5000万円を計上し、9月2日から交付金申請募集がスタートした。
19年開始のファンドサポート事業は、「認定ベンチャーキャピタル(VC)」がスタートアップに投資した同額を市が交付する形態。認定VCは増加しており、24年度は23年度から12社増え、66社となっている。ベンチャーデットの「認定金融機関」は現在5機関だが、全国の地域銀行からの参入を促したい考え。これまでに交付金を受けたのは36社で、うち市外からの進出は26社・72%。福岡市の製造管理でデジタル化を促すスタートアップが、名古屋市場での本格的な販売を前に企業ニーズ・販売実績調査などを踏まえた試験的な拠点設置に動いた事例もある。川路勝也・浜松市産業部スタートアップ推進担当部長は「浜松市では自動車関連企業が多い特色のほか農業分野の生産も量・種類ともに多く、幅広いエリア・分野からのVC参入に対応する」と強調する。
交付金はこれまで通り「シード・R&D(研究開発)枠」が最大1000万円、ベンチャーデットの「デット枠」とアーリー・ミドル期の「一般枠」が同4000万円、スタートアップと地域企業の協業が始まる際の増資に対応する「協業枠」で同2000万円を準備。「デット枠」と「協業枠」は、過去の交付確定額と合算して7000万円を上限に原則申請が可能だ。
4月開始の「浜松スタートアッププログラム」では、プロポーザル方式で採択された監査法人トーマツに浜松いわた信金が協力。起業に満たないアイデアに関する相談を受け付ける総合窓口を、同信金内ベンチャー育成施設FUSE内に設置した。さらに、関連セミナーを全12回(5月~25年3月)で展開。9月9日には「ファンドサポート事業」採択企業経営者によるスタートアップの地方展開手法を学んだ。25年上旬には、米国のシリコンバレー視察を行うプログラムも計画する。
8月に、浜松市内企業とスタートアップをマッチングするプラットフォーム「ハマハブ!」を設置した。市内企業は規模に関わらず登録が可能。自社の課題や新事業アイデアを掲載し、活用できる技術を持つ全国のスタートアップが応募することでマッチング。プロポーザル方式の入札で採択されたフォースタートアップス(東京都)が展開する全国の2万社以上のスタートアップを掲載したシステムも利用できる。このプラットフォームで、有効面談20社以上を目指す。