【20代退職者の本音に迫る】 元信金職員男性Ⅾさん “愛”なき営業でIT転職
2024.09.01 04:35若手行職員は胸の内に何を思って辞めていくのか――。同年代の若手記者が実際に20代退職者に取材し、本紙8月2日号で傾向や対策を取り上げた。ニッキンオンラインでは続編として、元行職員4人が退職に至った心境の変化をさらに掘り下げる。
4人目は、信金で渉外係だった男性Dさん(2022年上期退職、当時24歳)。転職後はIT業に勤務。“顧客愛”を持って担当企業を支援するなか、上司と生じた営業方針のズレが退職の決め手となった。
Q:業務で感じたギャップについて教えてください。
A:渉外業務を担当するなか、信金が掲げる地域貢献に沿わない行動が増えてきた時です。コロナ禍で担当企業の社長が赤字経営に苦しむなか、融資を断らなければいけない場面が目立ちました。「信用金庫として地域のためにリスクを取るべき」と考えていたため、条件が良い先のみに融資をお願いする営業スタイルに違和感を抱きました。今後勤務する40年間、このジレンマを抱え続けることがストレスでした。
Q:元々の営業に対する考え方を教えてください。
A:就活時代から「ノルマに追われ大変」なイメージが強かったです。そのため、当初は融資の稟議・審査を担当する業務を希望していました。実際に渉外業務を経験すると、潜在的な課題を見つけ出し、解決へ導く提案をすることにやりがいを感じました。また、日々会話するお客さまにも情が生まれていきました。だからこそ、真に融資を求める担当先を助けることができない状況が辛かったです。
Q:不満が募るなか、退職を決意した出来事を教えてください。
A:上司が店舗実績を優先し、明らかに高い金利で担当先に融資を実行した時です。過度に高い金利で企業の財務状況は大幅に悪化しました。支店の実績が上がるため、上司は満足しています。ですが、私は今後担当者として社長と関わること、そして企業を支援できる自信がありませんでした。
Q:信用金庫を辞めた今、勤務時代を振り返った感想は。
A:営業の楽しさを感じることができましたが、やはり適職ではなかったと思います。金融機関で活躍できる人材は、「表面的に意見を擦り合わせ、自組織の利益を最優先した内容を提案できる人間」と感じたからです。「顧客に寄り添って信頼関係を築く人間」ではありません。顧客の利点を最優先していた私は、柔軟に対応することはできませんでした。
対策まで紐解いた、まとめ版は(URL:https://www.nikkinonline.com/article/205797)に掲載。
※この記事は2024/10/15にfree記事に変更しました。