日銀・氷見野副総裁、政策運営「無数のファクター考慮」 米経済は軟着陸見込む

2024.08.28 13:35
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日本銀行の氷見野良三副総裁は8月28日、甲府市(山梨県)で講演し、今後の政策運営について、展望レポート(経済・物価情勢の展望)で示す見通しの実現確度が高まれば「金融緩和の度合いを調整していく」との基本姿勢を語った。8月初旬に相場が急変した金融資本市場に対しては「引き続き、不安定な状況にあり、当面はその動向を極めて高い緊張感をもって注視していく必要がある」とした。


氷見野副総裁は、今の政策スタンスについて、7月末の追加利上げや為替・株式相場乱高下の影響を見極めつつ、日銀の見通し通りに経済・物価情勢が進めば政策金利を引き上げていくとする従来の考えを強調。相場急変を受けた金融資本市場に対しては「統計に反映されるのもこれからなので、今後よく分析していかなければならない」との認識を話した。


円高転向による功罪にも触れ、「多くの中小企業にとっては、円安に伴うコスト上昇圧力がいくらか和らぐ面がある」と見立てた。円安の恩恵を受けやすく好業績が続くグローバル企業についても「事業計画の前提としている想定為替レートから大きく外れていない」と現状の水準感に言及。「自己変革を重ねてきた日本企業の強みは依然健在」として、目先の相場動向に「見方を左右されすぎないことが大切」と持論を述べた。


弱含む個人消費は、高水準の夏季賞与や所得税減税効果、物価上昇ペースの減衰を主な要因として「腰折れしない」とのメインシナリオを語った。


氷見野副総裁は講演後の会見で、政策運営に関して「無数のファクターを考慮する」と総合的に判断していく意向を繰り返し訴えた。


中立金利推計の有意性についても言及。「人によって意見や考え方があり、議論して勉強していきたい」としたうえで、「現在、特定の水準やレンジを特別に意識して考えているということは、私自身はない」と、追加利上げ後の経済・物価の反応を分析しながら政策の道筋を探るスタンスを表した。


米経済の先行きはソフトランディング(軟着陸)を見込む。「インフレを克服するために、かなり深い(経済)減速がなくてはいけないというシナリオには引き続きなっていない」と楽観的な見方を踏襲した。円高基調に転じた為替市場の中小企業への影響に対しては「おおむねプラスの面が大きい」と地元経済団体などとの懇談内容を紹介した。

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