大手行5グループ4-9月期決算 純利益77%増で過去最高 3メガバンクは上方修正

2021.11.15 22:55
決算
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決算発表をする亀澤社長
決算発表をする亀澤社長(11月15日)

大手行5グループ(G)の2021年4ー9月期決算は、5社合計の当期純利益が前年同期比77.4%増の1兆8148億円と、中間期としては過去最高だった。トップラインが堅調に推移しているほか、与信関係費用も大きく減少。3メガバンクGは22年3月期の業績予想を上方修正するなど高い進ちょくとなっている。


三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)が22年3月期の純利益予想を2000億円増の1兆500億円(計画修正後の進捗率74.4%)に引き上げたのをはじめ、三井住友FGが700億円増の6700億円(同68%)、みずほFGが200億円増の5300億円(同72.7%)に上方修正。りそなホールディングス(HD)の進捗率は55.7%、三井住友トラスト・ホールディングス(THD)も71.6%と高く推移する。


大幅増益の主因は与信関係費用の減少で、87.5%減の702億円。三菱UFJFGと三井住友THDでは戻り益の発生で収益計上。三井住友FGは通期の与信費用の発生見通しを1000億円減らし、2000億円にした。


手数料が11%の伸び


トップラインで特に伸びたのが手数料利益(役務取引等利益と信託報酬の合計)。11.1%増の1兆9575億円と全社で増加。「不動産案件は過去最高に近い」(三井住友THDの高倉透社長)、「ストック型のフィー収益で下支えできるようになってきた」(りそなHDの南昌宏社長)と手ごたえ。システム障害の影響があるみずほFGの坂井辰史社長も「口座の解約が多少増加しているのは事実」としつつ、「『人生100年時代』で個人の資産運用が大きく伸びている」と述べた。


資金利益も全社で増加し、7.8%増の2兆5397億円。採算性向上へ投融資先の見直しに取り組んでいる先は多く「大きくではないが利ざやの改善は持続していく」(三菱UFJFGの亀澤宏規社長)と説明する。


対して、債券などの市場売買等利益(特定取引利益とその他業務純益の合計)は33.2%減の7210億円と全社で減少。前年同期に売却益を多く出した反動減が主因で「前年比で減益だが、今年度の水準も高い」(三井住友FGの太田純社長)。市場関連収益のうち、業務純益外に計上される株式等関係損益は32.9倍の2275億円で、三菱UFJFGと三井住友FGが大きく伸ばした。


危機感は変わらず


コロナ禍でも好調に推移した決算だが、課題はある。一つは市場運用。三菱UFJFGを除く4社は保有債券の含み損を抱える。米国のテーパリング(量的緩和縮小)開始などを受け「慎重な運営が求められる。含み損の処理と収益のバランスを見ながら機動的に対応する」(りそなHDの南社長)。


みずほFGと三井住友THDは株価ヘッジ目的で保有するベア投信の処理も課題。みずほFGは前倒し解約を決めており、三井住友THDの高倉社長も「コントロールの難易度は上がっている」と前倒し処理へ含みを持たせる。


三菱UFJFGは、固定資産の減損判定をする際のグルーピングの見直しを検討中。「特にリテールの分野は資産負荷が重たく、ある程度の減損が出てしまうだろう」(亀澤社長)。


企業業況も不確定要素は多い。みずほFGの坂井社長は「サプライサイドの制約や新興国、サービス産業の回復がこのまま一本調子で進むのか見極め難い」と、大企業部門に対して追加の貸倒引当金を計上した。


デジタル化やサステナビリティなどの大きな潮流で存在感を発揮するには、絶えざるビジネス転換が必要。三井住友FGの太田社長は「長期的に我々が苦しい立場であることは変わらず、危機感は変わっていない」と変革の重要性を強調した。

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