【デジタルバンキング2024】(下)小規模銀行こそ挑戦を コスト減と効率化が利点
2024.07.28 04:35
モネスティー(Monesty)は、ジョージア州のアメリカン・コマース銀行(資産約4億9000万ドル)が設立したデジタルバンクだ。2022年11月にサービスを開始、1年半で預金残高は2000万ドルを超えた。従業員はわずか2人。「小規模銀行がデジタルバンクを設立するメリットはコスト削減と効率化」と言い切るモネスティーのリチャード・プレトゥンダ バイス・プレジデント(VP)の話に、多くのコミュニティー・バンカーが聞き入った。(中編はこちら)
開設コスト3分の1
モネスティーの設立コストは、店舗を構える従来の銀行と比較すると3分の1で済んだ。プレトゥンダVPは「デジタルバンク立ち上げの初期投資は正しい方法で取り組めば高くならない」と言う。逆に店舗を持たないことで顧客や預金の獲得コストを抑えられ、そちらの方がメリットになるという。同行は国法銀行免許を取得しているので、全米にサービスを展開できる。
高い安全性を前面に
同行は他のデジタルバンクとの差別化のために、セキュリティーを前面に打ち出した。例えばドメインは、「.com」ではなく、「.bank」を取得した。「.bank」はドメイン名、IPアドレスなどを管理するインターネット コーポレーション フォー アサインド ネームズ アンド ナンバーズ(ICANN)によって14年に承認されたもの。銀行や金融機関専用で、厳格な審査に合格する必要がある。取得には高額の費用も掛かるため、詐欺集団には使われにくいという利点がある。
また、口座開設時の承認は、即時承認ではなく審査制とした。当初は即時承認制を採用しており、口座開設プロセスは全てデジタルベースのセルフサービスだった。しかし、「顧客にとっては確かに便利だが、銀行にとっては詐欺師も招き入れてしまうことになる」(同)と判断し、審査制に変更した。スタッフの仕事は増えたが、口座開設希望者全員の本人確認と情報検証を行っている。
提携商品は絞り込む
提供商品のラインアップも工夫した。開設当初はなるべく多くの商品を提供しようとしたが、売れ行きは伸びなかった。そこで顧客が理解しやすい商品に絞り込んだ。現在は3種類の当座預金、2種類の譲渡性預金、数種類のマネーマーケット口座、高利回り貯蓄口座、2種類の高級クレジットカードだけを扱っている。プレトゥンダVPは、「(デジタルバンクでは)『少ない方が実入りが多い』というのが鉄則だ」と語った。
【デジタルバンキング2024】
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